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動物愛護センターに行ってきました!

VOL.18 千葉市動物保護指導センター編

動物福祉と動物愛護の両立を目指す!
イオンペットとのコラボレーションで、より充実した譲渡を推進。



県道69号線「広尾十字路」交差点を1.5キロほど穴川方面に向かった場所に位置する千葉市動物保護指導センター。平成5年開所の当施設は、 敷地面積:2,283㎡、施設の延べ床面積が1,298㎡と小規模で 、建物も古く、最新の設備が整っているわけではありません。しかしここで動物たちに関わる人たちの思いは特別です。

  • ▲センター内 ドッグラン

    ▲センター内 運動広場

  • ▲センター内 猫ルーム

    ▲センター内 猫ルーム

職員さん、飼育員さん、ボランティアさんとの連携は当然のこと、令和4年12月より民間のイオンペットとの協定に基づき、センターに収容された犬猫をイオンペットの店舗内に展示するなど、犬猫のよりよい譲渡への道を展開することになったのです。
その取り組みはとてもユニークで、見ている人々の心もほっこり―。
今回は、動物福祉と動物愛護の両立を目指す、千葉市動物保護指導センターの取り組みをご紹介します。

千葉市の幹線道路沿いに位置する、千葉市動物保護指導センター。
同センターの施設内の殺処分機は平成21年から完全に停止。その後、平成27年から傷病死を除き、安楽致死処分がゼロとなっています。
ここでの課題は、他の施設でも大きな問題となっている、多数の幼齢猫の収容でしたが、譲渡事業協力者さんの努力に加え、平成27年に子猫育成ボランティアさん(ミルクボランティア)との連携ができたことを機に「殺処分ゼロ」を実現できました。

現在、当センターで大切にしていることのひとつが、犬猫に対する動物福祉の意識です。
昨今、世間は「殺さない」ことだけを動物愛護センターの評価に取り上げがちですが、考えるべきは「動物福祉」という視点。
殺処分せず、ただ「生かしておく」ことは「動物福祉」とは言えないからです。
 

千葉市動物保護指導センター

つまり、犬や猫が、幸せになれる可能性を探り、最終的にそこに導くことをゴールにすること。
当センターでは、職員さんはもとより、ドッグ・トレーナーの資格や犬や猫に対する専門知識を持った飼育員さんが、収容動物のお世話を日々行い、それぞれの犬や猫に合った馴化にも余念がありません。
中には、咬む犬など問題行動がある犬も珍しくありませんが、飼育員さんが決してあきらめることなく譲渡に向けて、愛情を持ってお世話をしながら、問題ある犬猫の馴化トレーニングに努めている姿がとても印象的です。
同時に、一般の事業協力者(ボランティア)さんの存在もセンターにはなくてはならない存在です。

 

同センターの事業協力者さんは大きく分けて3つ。
ひとつは、「1.飼い主のいない猫に関わる問題解決などに取り組んでいただく千葉県動物愛護推進員さん」、もうひとつが「2.乳のみ子猫の育成ボランティアさん」。そして、もうひとつが、収容犬の譲渡など「3.センターに収容された犬猫の譲渡に係るボランティアさん」です。

  • ▲ボランティアさんによる収容犬の散歩

    ▲ボランティアさんによる収容犬の散歩

  • ▲お散歩ボランティアの皆さん

    ▲お散歩ボランティアの皆さん

この犬猫の譲渡に係るボランティアさんは、主に4団体。
その中には、動物愛護団体のほか、イオンペット株式会社が運営するPETEMO(ペテモ)のCSR部門「LIFE HOUSE」が新たに加わりました。また、今年度から、傷病を負い、センターで対応困難な収容動物の治療を、千葉市獣医師会に委託し、最適な獣医療を提供するようにしています。
同センターは、これらの関連団体との連携をスムーズに行い、日々コミュニケーションを密にとることで譲渡を促進し、殺処分の減少に努めています。
 

千葉市動物保護指導センター 子猫の育成ボランティアを募集
https://www.city.chiba.jp/hokenfukushi/iryoeisei/seikatsueisei/dobutsuhogo/tonurseababycat.html
(外部サイトにリンクします)外部リンク

より良い「譲渡への道」と、一歩進んだ「啓発活動の拠点」として、千葉市とイオンペット株式会社が「千葉市動物保護指導センターの収容犬猫の譲渡協力等に関する協定」を締結したのは、令和4年11月25日。
イオンのペット専門店「PETEMO(ペテモ)」の店舗内に、同センターで収容された保護犬猫を展示し、譲渡へと導く「ペテモ ライフハウス ピアシティ 稲毛海岸」外部リンクがオープンしました。

「ペテモ ライフハウス ピアシティ 稲毛海岸」の営業時間は10時―18時で、現在全国に10店舗あるライフハウスの中で、ここが一番大きな施設です。(※営業時間は店舗により異なります)

▲ペテモ ライフハウス ピアシティ稲毛海岸店

▲ペテモ ライフハウス ピアシティ稲毛海岸店

当施設では、社員スタッフ4名とアルバイト3名のうち、常時2名~3名が滞在し、千葉市動物保護指導センターから預かっている犬猫はじめ、他の行政施設から譲渡を受けた犬猫を施設内で展示し、一般家庭への譲渡に向けて、お世話や、馴化トレーニングに取り組んでいます。

 

「ペテモ ライフハウス ビアシティ 稲毛海岸」で働くスタッフさんの一日

「ここでは、預かっている動物を紹介するだけではなく、社会化が進むよう、犬猫の馴化やトレーニングも行っていきます。グルーマーや猫のスペシャリストの講師によりスタッフも日々勉強していますし、社内にいるドッグ・トレーナーや動物行動専門医とも協力して、譲渡への道しるべを築いていきます。また、治療が必要な犬猫には、社内の獣医師がその都度必要に応じて対応しています」
こう語ってくれたのは、「ペテモ ライフハウス ピアシティ稲毛海岸」で働く責任者、イオンペット経営戦略部CSR部門の柘植由梨子さん。

保護犬・猫が人と楽しく、快適に生活ができるよう、人馴れやしつけ等のサポートを行い、人も動物も幸せになれる譲渡活動を推進しています。
保護動物を受け入れられる収容スペースはとてもゆったり!
 

▲イオンペット経営戦略部CSR部門 柘植由梨子さん

▲イオンペット経営戦略部CSR部門 柘植由梨子さん

  • ▲店内の猫展示室

    ▲店内の猫展示室

  • ▲ドッグルーム内で遊ぶ、あおちゃんとスタッフ

    ▲ドッグルーム内で遊ぶ、あおちゃんとスタッフ

そのため、常時展示できる数は、犬2頭、猫8頭ですが、オープンからわずか7か月で犬8頭、猫36頭が譲渡できたと言いますからその効果は絶大です。また、「ペテモ ライフハウス ピアシティ稲毛海岸」では、譲渡活動だけでなく啓発活動にも熱心に取り組んでいます。ここでは飼い方教室や、猫の「ふれあい教室」を開催。

「ふれあい教室」は、毎日10時から12時まで「ふれあいルーム」で保護猫たちと触れ合うことができて、オープン以来2000人以上の家族が訪れ、リピーターも続出。
「ふれあい教室」がきっかけでここの保護猫を迎えた家族も少なくないと言います。

「保護犬猫がテレビなど、マスコミで取り上げられるようになって、多くの方が興味を持ってきてくださるようになりました。最近のお子さまは犬や猫に触った事すらない子が多い。そういったお子さまがここで、“犬や猫ってかわいいんだね”と思ってくれることで、未来の飼い主が、育ってくれるといいなと思っています。
同時に、多くの人との触れ合いは、犬や猫たちにとっても社会化につながり、ふれあいの様子を観察していく中で、犬や猫の苦手なことや得意なこともわかるので、譲渡時のマッチングの目安にもなる。
大切なのは、譲渡される犬猫も譲り受ける家族も、みな幸せに楽しく、ペットとの生活ができるようお手伝いすることだと思っています」

▲ふれあい教室 案内

▲ふれあい教室 案内

ふれあいルームで走り回る「だん吉」は、生後二か月で千葉市動物保護指導センターからやってきた子猫。左半身に多少、障がいがあり、ここに来た頃には臆病でシャーシャー言っていましたが、今ではすっかり他の猫とも仲良くなり、社会化もばっちり。新しい家族も無事決定して、まもなく卒業を迎えます。
 

現在(取材当時)千葉市動物保護指導センターからペット専門店の保護犬猫施設「ペテモ ライフハウス ピアシティ稲毛海岸」で展示されている猫は7頭。
同センターがこの「ライフハウス」に預けている猫の「マルコム」や「だん吉」を微笑ましく見ながら、センター所長の川西康隆さんは、こう語ります。

「センターではスペースの問題もあり、ここまでの環境を猫たちに提供することができません。また場所柄もありセンターに直接足を運こんでいただく機会も限られている。こういった形で、犬や猫を譲渡できるのはまさに理想。犬猫にとって、一番良いのは人にもらわれること。
そのためには、人間にもらわれやすい子になること。そういった意味で、ここでの環境は馴化にも適しているし、何より多くの人が足を運んでくれる。一頭でも多くの子たちが、幸せになれるよう願っています」

  • ▲キャットルーム(ふれあい室)で遊ぶマルコムくん

    ▲キャットルーム(ふれあい室)で遊ぶマルコムくん

  • ▲令和4年11月から同センターとペテモ ピアシティ稲毛海岸店と連携

    ▲令和4年11月から同センターとペテモ ピアシティ稲毛海岸店と連携

「ライフハウス」の柘植さんの思いも同じです。
「私が長くこの社会貢献活動に携らせていただく中で、時代はどんどん変わっているのに、保護犬猫の譲渡の形はまったく変わっていないと感じていました。絶対に次の未来につながる譲渡施設が必要だと思っていました。
弊社のペット用品部門での勤務を経て、2008年にライフハウス1号店が埼玉県越谷市でオープンした時から、この活動に携ることになりましたので、約14年が経ちましたが、これからも、行政との連携を密に取って、犬や猫、そして、ペットと関わる人たちの幸せのために仕事がしたいと心底思っています」

ライフハウス ピアシティ 稲毛海岸
https://www.aeonpet.com/lifehouse/piacity_inagekaigan/(外部サイトにリンクします)外部リンク ※だん吉くんとマルコムくんは無事卒業しました。2023年11月現在

他の多くの動物愛護センターでも必ず課題に上る「飼い主のいない猫」問題-。
千葉市動物保護指導センターも例外ではなく、収容される猫の多くが飼い主のいない猫が生んだ幼齢猫です。
平成27年に、ミルクボランティアさんとの連携が開始されたおかげで、同センターでは、母猫とはぐれてしまうなどして収容に至った幼齢猫の多くを譲渡できるようになりましたが、救える命には限界があり、収容される幼齢猫の数をどう減らすのかも大きな課題です。

そこで、同センターではミルクボランティアさんとの連携開始に先立って、市民の方のTNR(保護して、不妊手術をして、また元の場所に戻す)を推進するため、平成23年より千葉市獣医師会と連携し、定期的に市内の獣医師の先生が、当センターに来て市民が管理する飼い主のいない猫(年間360頭)の不妊去勢手術を実施しています。

地域猫活動ってなに?

飼い主のいない猫をお世話しながら地域で管理する方々、TNR活動や保護活動をしている方々、猫に係る地域猫問題解決に取り組んでいただいている動物愛護推進員の皆様など、様々な方の取り組みにより、センターへの収容依頼は減少傾向にありますが、母猫とはぐれ衰弱して収容される子猫は依然として多く、時間と経験も必要なミルクボランティアに託してみるものの、これは誰にでもできることではありません。
幼齢猫の育成は難しく、救えない命があることもしばしば。
非常にセンシティブな活動だけに、他の多くの自治体ではボランティアを途中でやめてしまう人も少なくないと言います。

▲猫の避妊去勢時の様子 (川西所長撮影)

▲猫の避妊去勢時の様子 (川西所長撮影)

「幼齢猫の難しさは、私も職員たちもみなわかっています。ですから、万が一救えない命があっても、絶対に自分を責めないでほしい、と事前にボランティアさんにはお伝えしています。猫のことはもちろんですが、ボランティアさんの協力なしでは、譲渡に繋げることはできません。幸い、当センターでは途中でやめる人は少なく、多くの方が継続してくれています。
中には69グラムという極小の子も預かっていただいていますが、小さくて難しい子は超ベテランボランティアさんに託すなど、ありがたいことに、臨機応変にお願いできる体制が整っています」

他のセンターでは、子猫の離乳期が終わると、センターに戻し、センターで譲渡活動をするケースもありますが、同センターでは、ミルクボランティアさんがそのまま育譲渡日まで育てあげます。

子猫の譲渡についても一工夫

同センターでは、子猫の譲渡についても一工夫!
譲渡会ではなく「子猫お見合い会」(※1)を開催しているのです。これは同センターのホームページに掲載される「育成中の子猫」の中から、お見合いしたい子を選び、希望している子猫一匹のみと、実際にお見合いしてもらう、という取り組み。
譲渡会では多くの子猫がひとつの会場に集められるため、目移りしてしまう希望者が続出して、決まるまでに時間を要します。
ところがお見合い会は、事前に家族で話し合い、「この子」と決めたお目当ての子のみと対面するため、スムーズに決定するケースが多いのです。

「コロナ渦で、人が集まるイベントがNGとなったことがきっかけで、この方法を始めたのですが、結果的に、お見合いの方が猫にもストレスがかからず、希望者も“この子”と決めてから来てくれるので、譲渡が非常にスムーズにいきました。この経験からそれ以降も、お見合い会を継続しています」と、所長の川西さん。

同時に長期にわたって収容中の成猫たちの譲渡も大きな課題です。
譲渡で最も大切なのは「もらわれやすい猫」つまり「人懐こい猫」です。そこで、同センターでは令和5年9月より、新しいカテゴリーのボランティアさんの募集を開始しました。
なづけて「猫の馴化ボランティア」(※2)!

新しく整えた「にゃん化部屋(馴化部屋)」で、猫のお世話やお掃除をしながら猫と同じ部屋で過ごしてもらうというボランティアです。
馴化が進めば、譲渡もしやすくなります。イオンペットの取り組みを少しでもセンター内で活かして、猫たちの福祉を最優先した譲渡に向けて様々な取り組みに挑戦しています。

※1 千葉市動物保護指導センター 子猫お見合い会 日程および申し込み方法
https://www.city.chiba.jp/hokenfukushi/iryoeisei/seikatsueisei/dobutsuhogo/koneko-jyouto.html(外部サイトにリンクします)外部リンク

※2 千葉市動物保護指導センター 猫の馴化(じゅんか)ボランティアを募集
https://www.city.chiba.jp/hokenfukushi/iryoeisei/seikatsueisei/dobutsuhogo/nekojunkaborantexia.html(外部サイトにリンクします)外部リンク

獣医師で令和4年から同センターの所長を務める川西康隆さん。
川西さんは、所長就任時からある問題に頭を悩ませていました。

「現在、ここでの課題の大半は猫で、犬の問題は一部です。収容されている犬も平均して常時数頭ですし、飼育員さんによる毎日の運動に加え、お散歩ボランティアさんが週に2回来てくださり、いつもより長く運動していただけます。ボランティアさんのおかげで譲渡も比較的うまく回っていますが、実は、4年間にもわたって収容されていた、犬がいたんです」

その犬はオスの柴犬で名前は笑紅(エク)。

▲センター所長 川西康隆さん

▲センター所長 川西康隆さん

放浪していたところを通行人に保護されましたが、その人を咬んだため、引き取りを依頼され、4年前にセンターに収容された犬でした。
突然人を咬むため、譲渡対象にはできず、そのままセンターで収容管理していたエクですが、所長の川西さんは、このエクをどうするのか、そろそろ決断をしなければならないと考えていたのです。

「どのような策を講じても、譲渡できる状態にならないのであれば、これ以上先延ばしせず、自分がいるうちに安楽致死処分も視野に入れなくてはならないのかな・・・と真剣に悩んでいました。そうなると当センターでは平成27度以降経験がない安楽致死を行うことになります。当然、多くの批判も浴びるでしょう。
しかし、ストレスの多いセンターの中で永久に生活することがエクにとっていいことなのか・・・。問題を後送りして、動物福祉という視点を見落としていないか、所長として自分が責任を背負って、考えなくてはならないと思ったのです」

その思いの中には、川西さん自身、同センターに収容された咬傷犬、チワックス(チワワとミニチュアダックスフントのミックス)のハッピーを、家族に迎え入れた経験がありました。

  • ▲エクちゃん

    ▲エクちゃん

  • 「収容当時ハッピーは1歳。咬むという問題行動があったので、所有権放棄の引き取り犬としてここに収容されました。引き取りの電話相談を自分が受けた、という縁もあって、ハッピーを我が家の家族にしたんです。12歳になった今でも気に入らないと咬む癖は治っていませんが、小型犬だし、私が獣医師ということもあって、そのあたりは上手に対処できています。それに普段は甘えん坊でかわいい。でもエクの場合は全く違う。
    オスの柴犬で、これまでに、わかっているだけで3人の人を咬んでいます。本気で咬まれたら血が出ただけでは済まなくなる。そんな危険な犬を市民の方に、“はい どうぞ!”と渡すことは、我々としては絶対にできないのです。
    だからといって何かとストレスの多いセンターで飼い続けることが、エクにとって幸せなことなのでしょうか?
    仮に、譲渡するにしても、犬の行動学を理解している方でないと無理です。真剣に考えなくては・・・と思っていました」

そのような中、動物愛護推進員さんから犬の問題行動に長けた訓練士のカウンセリングを受けてはどうか、との提案を受け、川西さんは「ドッグビヘイビアリスト」による継続的な訓練により、エクの問題行動を改善できるか、トライすることにしたと言います。
みなエクの前途に光を見出したいと必死だったのです。
その願いが届いたのでしょう―。
5か月間のトレーニングにより、エクは犬の問題行動の知識を持った方への譲渡が可能な状態に改善し、ドッグ・トレーナーさんに引き取られることになり、4年間の収容生活を経て無事卒業-。川西さんは、エクの卒業に心底ほっとしたと言います。

エクが無事、卒業できたのも動物愛護推進員さんの熱意と、ご協力いただいたトレーナーさんの技術、日々、エクのトレーニングに関わってきた飼育員さんの愛情、お散歩ボランティアさんの協力、職員さんらのエクに対する思いが功を奏した結果です。

「イオンペットさんもそうですが、時代は、動物愛護から動物福祉の時代へ変わってきています。私たち人間が一方的に“殺すな”“かわいがろう”ではなく、犬や猫にとって最善とは何か、を考えなければならない時代になったと思います。命って、息をしていればいいってもんじゃないでしょう。そこに幸せや希望がないとね。
動物愛護センターと呼ばれるところもかつての殺処分施設から、犬猫の幸せを考える、その名の通り“動物愛護”そして、“動物福祉”の施設へと生まれ変わろうとしています。ここまで来るには、ボランティアさんはじめ、事業協力者さんの多くの力がなければ成しえなかったことだと思います。エクが卒業できたのも、その力が集結できたからでしょう」

▲エクちゃん

▲エクちゃん

川西さんは安堵したように言いますが、課題は次から次へと山積みです。
「今は、長期収容になりがちな成猫の譲渡をどうするか模索中です。千葉市のホームページのトップページに“飼い主さん募集!”なんて、センターの猫の写真を掲載できないか―、とか。すごく目立っていいでしょう!でも、市のホームぺージにいきなり猫の写真なんて、みんなびっくりしますかね?(笑)」

目指すゼロは、「殺処分ゼロ」より「捨てられる命ゼロ」を、そして何より「不幸な命ゼロ」を―。
命とは、幸せになること―。そして幸せになれるという希望があること―。
そのことを誰よりも日々、感じているのは、日々、命と向き合っているセンター職員さん、飼育員さん、動物愛護推進員さん、事業協力者やボランティアさんなのです。
(取材:2023年10月)

  • センター職員さん、飼育員さん、動物愛護推進員さん、事業協力者やボランティアさん
  • センター職員さん、飼育員さん、動物愛護推進員さん、事業協力者やボランティアさん

千葉市動物保護指導センター

住所:〒263-0054 千葉市稲毛区宮野木町445番地1

電話:043-258-7817

URL :https://www.city.chiba.jp/hokenfukushi/iryoeisei/seikatsueisei/dobutsuhogo/

人と動物の未来センター・アミティエ

取材・記事:今西 乃子(いまにし のりこ)

児童文学作家/特定非営利活動法人 動物愛護社会化推進協会理事/公益財団法人 日本動物愛護協会常任理事

主に児童書のノンフィクションを手掛ける傍ら、小・中学校で保護犬を題材とした「命の授業」を展開。
その数230カ所を超える。
主な著書に子どもたちに人気の「捨て犬・未来シリーズ」(岩崎書店)「犬たちをおくる日」(金の星社)など他多数。

Q.動物愛護センターって、どんなところ?

A.動物愛護センターは全国の各都道府県ににある行政施設で、動物に関する以下のお仕事をしています。

●動物保護や捕獲のお仕事

様々な事情で家庭で飼えなくなった犬や猫の引き取りや、迷子犬を保護して収容します。また狂犬病予防法に基づき野犬の捕獲収容などをしています。

●動物愛護のお仕事

人と動物が仲良く暮らすための情報提供やアドバイス、イベント、啓発などを行っています。
その他、引き取った犬や猫に新しい飼い主さんを探す譲渡活動を行っています。

●動物管理のお仕事

引き取った犬・猫や捕獲した野犬等の中で譲渡できない犬・猫の殺処分を行っているところもあります。

 
●動物取扱対策のお仕事

動物が適正飼養・飼育されているか(虐待などがないか、給餌は適正にされているか、飼育環境に問題はないか、など)を確認し、問題があれば指導を行います。
また動物を飼養・飼育している施設の管理状況の指導も行います。

●その他

各都道府県の動物愛護センターは災害時には動物救援本部として被災したペットの保護等、救援センターの役割も果たします。

Q.ミルクボランティアってなに?

A.生まれたばかりの赤ちゃん猫を離乳まで預かってお世話をする授乳専門のボランティアさんのことです。

生まれたばかりの赤ちゃんねこは、一日数回にわけてミルクを与えなくてはならず、知識も必要で、日中家にいることや、留守がないことなどの条件があるため、やりたいと思っても誰もができるボランティアさんではありません。

子ねこは、授乳期が終われば、次の預かりボランティアさんにバトンタッチしたり、保護された動物愛護センターに戻して、譲渡先を見つけます。
現在、全国の動物愛護センターで殺処分される猫の多くが子ねこであるため、子ねこが救われれば、殺処分数も激減することになります。

Q.地域猫活動ってなに?

A.地域猫とは、住まいの地域にいる「飼い主のいない猫」を地域で面倒をみる取り組みのことをいいます。

給餌やトイレの世話だけではなく、これ以上繁殖をしないようTNR(保護して、不妊手術をして、また元の場所に戻す)を行います。
猫の保護や手術のための動物病院までの運搬は、主に地域のボランティアさんが行います。手術をした猫はその印として耳の先をカット。(オスは右耳、メスは左耳)

手術のあとはボランティアさんが猫を病院から運搬して元いた場所に戻します。その後は、給餌やトイレの掃除などを行い、地域の猫として一代限りの命を見守る取り組みです。

Q.多頭飼育崩壊とは?

A.多頭飼育崩壊(たとうしいくほうかい)とは、ペットの動物を多数飼育した飼い主が、無秩序な飼い方で、不妊去勢をせず、異常繁殖の末、飼育不可能となる現象 。

英語ではアニマルホーディング(Animal Hoarding)といい、過剰多頭飼育者のことをアニマルホーダー(Animal Hoarder)という 。

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