【獣医師監修】パグの性格や飼い方のコツ、寿命、なりやすい病気まで全部紹介!
パグは中国語で、「八哥(バーグァ)」「哈巴狗(ハー・バー・ゴウ)」。
一説には、ラテン語で「拳」を意味する「パグナス」が犬種名の由来だといいますが、拳のような頭部といい、肉厚の体といい、どこかぎゅっと詰まったような印象を受けます。
16世紀にはオランダ王室のマスコットにもなり、愛嬌あるキャラクターの持ち主です。そんなパグを迎えるには?
パグは中国語で、「八哥(バーグァ)」「哈巴狗(ハー・バー・ゴウ)」。
一説には、ラテン語で「拳」を意味する「パグナス」が犬種名の由来だといいますが、拳のような頭部といい、肉厚の体といい、どこかぎゅっと詰まったような印象を受けます。
16世紀にはオランダ王室のマスコットにもなり、愛嬌あるキャラクターの持ち主です。そんなパグを迎えるには?
目次
パグの入手先
パグを迎えるときの費用相場は?
原産国:中国
パグの歴史は2000年以上と言われるほどたいへん古い犬種です。
それだけに起源は定かでなく、中国説、オランダ説、古代ローマ説、古代エジプト説、ロシア説などが存在しますが、古くはチベットの寺院で飼育されていたことからも中国説が有力と考えられています。
一般的には、東インド会社(17世紀~19世紀)の商人が中国からヨーロッパに持ち帰り、その後、オランダに渡ったという話が伝えられています。そして、オランダのオレンジ公ウィリアム3世が17世紀後半にイギリスの王位に就いた時、お気に入りだったパグを伴ったことからイギリスで知られるようになったと言われています。
しかし、ヨーロッパに渡ったのが16世紀とされ、東インド会社の歴史とは年代が少々ずれる部分もあり、判然としません。
犬種の成り立ちにもマスティフの小型版という説や、ペキニーズのスムースコート版というものまであり、これもベールに包まれたままです。
呼び名も「モップスホンド(オランダ)」「モプシィ(フィンランド)」「ドギージョ(スペイン)」「ダッチ・パグ(イギリス)」「カルリーノ(イタリア)」など国によっていろいろで、広く知られながら謎の多い犬種です。
パグにはこんな伝説が残されています。オレンジ公ウィリアムの野営地をスペイン軍が急襲しようとしていたまさにその時、異変にいち早く気づいたパグが吠えて知らせ、オレンジ公ウィリアムの窮地を救ったというのです。
以来、オレンジ家ではパグがマスコットになったそうですが、愛玩犬とはまた違った一面を見たような気にもなります。
むっちり体形で、いわゆる“ぶさかわ”タイプの犬。見ているだけで顔がほころびそうですが、実は犬らしいところもしっかりもっているのです。
パグの体高は25cm~33cm、体重は6.3kg~8.1kg程度。
ずっしり重みを感じる小型犬です。
なんと言っても特徴的なのは鼻ぺちゃで皺のある顔、そして小型のわりには肉厚でがっしりとした体形です。
丸みを帯びた頭部のやや高い位置につく耳は頭蓋に沿って垂れた「ボタンイヤ」、もしくは後ろに折りたたむような形の「ローズイヤ」。
首は短めで太く、丸みのある胴へとつながり、体を横から見た時には体高と体長がほぼスクエアに見えます。
カールした尻尾は、二重巻きであるものが好ましいとされます。
毛色にはフォーン、シルバー、アプリコット、ブラックなどがあり、ブラック以外ではマズルや目の周囲、額、耳などが黒くなります(ブラックマスク)。
当初の毛色はフォーンでしたが、後にシルバーとアプリコットが登場し、ブラックは1877年になって紹介されました。
パグは明朗活発で、人や犬にもおおむねフレンドリーに接することができる犬種です。何より愛嬌があり、いたずらをしたとしてもどこか憎めないと思う人が多いのではないでしょうか。
もっとも、犬種にはそれぞれ傾向的な気質や特性、行動というものはありますが、この犬種だからこういう性格をしていると断言できるものではありません。
最近、犬の行動特性は遺伝と関連するものの、犬種との関連はわずか9%にすぎないという研究結果が発表されました。
つまり、犬種を基に行動特性を予測するのは難しく、個々に違いがあるということ。
行動は気質・性格とも関係します。それを考えるならば、代々受け継がれたパグの良さをもちつつ、より望ましい性格の犬に育つかは、飼い主さんの育て方、接し方、環境、経験などが大きく関係するということでしょう。
パグを迎えるには、主にペットショップ、ブリーダー、動物保護団体・動物愛護センターなどのルートがありますが、その前に知っておきたいこともあります。
それを理解した上で、入手先を決めましょう。
1.「動物の愛護及び管理に関する法律」により、販売者は対象となる動物を直接見せ、飼育方法などについて購入者と対面した上で文書を用いて説明しなければなりません。これを怠る販売者は避けたほうがいいでしょう。
2.2022年6月1日より、販売される犬猫にはマイクロチップ装着が義務化されました。犬を購入後(マイクロチップを装着済の犬を譲り受けた場合も同じ)は、マイクロチップの情報を飼い主さん自身の情報へと変更登録する必要があります。
環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室「令和4年6月1日から開始するマイクロチップ登録制度に関する飼い主の方向けQ&A」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/pickup/chip_qa.html
入手先1
ペットショップで販売される犬は、契約ブリーダー、自社(自家)繁殖の他、多くが生体市場経由で仕入れられた子犬です。
現在、動愛法の改正により、生後56日(8週齢)に満たない子犬子猫は販売できなくなっているので(特例として天然記念物指定を受けている日本犬の場合は生後49日)、子犬の生年月日は確認するようにしましょう。
子犬を選ぶ際には、できれば親犬を見ることができると理想的ですが、ペットショップでは稀と言わざるを得ません。
入手先2
真摯なブリーダーは特定の犬種にこだわりをもって繁殖しており、その犬種についての知識も豊富です。
子犬の価格については、ブリーダー登録サイトは別として、ブリーダーのホームページ上では公開していないケースが多いため、直接問い合わせる必要があります。
予約をすれば見学も可。親犬を見られる率が高い点はプラスポイントです。
なお、場合によっては子犬が産まれるまで数ヶ月待たなければならないこともあります。
入手先3
行き場のない犬はまだまだ多くおり、そうした犬を迎えるのも一つの選択肢です。この場合、すでに成犬であることが多く、老犬である場合も珍しくありません。
入手先としては動物保護団体や各自治体の動物愛護センターなどがありますが、里親になるには一人暮らしや65歳以上の人は不可、その自治体在住者のみなどそれぞれ条件が設けられていることがあるのでよく確認してください。
犬は子犬から飼わなければならないということはありません。成犬でもしつけ直すことは可能です。何より、辛い思いをした分、人の愛情に飢えている犬も多いもの。時間をかけて気持ちが通じ合う一瞬が訪れた時の嬉しさは代えがたい宝となることでしょう。
パグと暮らしたいと思った時、保護犬の里親になる選択肢も考えてみてはいかがでしょうか。
現在、子犬の価格は以前に比べて大幅に高騰しています。したがって、決して安い買い物ではなく、ましてや一つの命を預かるわけですから、熟考の後、犬をお迎えください。
その結果、パグを迎えると決めた場合、おおむね以下の初期費用がかかります(商品に関しては一般的なものから少々リッチなものまで含みます)。
パグを迎える場合の費用の目安
項目 | 費用の目安 |
---|---|
パグの子犬の価格 | 20万円~ |
狂犬病予防注射 | 3,000円~5,000円程度 |
注射済票 | 500円程度 |
犬の登録料 | 3,000円 |
混合ワクチン(5種~10種) | 5,000円~1万円程度 |
犬用ベッド | 3,000円~8,000円程度 |
サークル・ケージ | 7,000円~3万円程度 |
食器・水飲み・フード(ドライフード1袋)類 | 4,000円~1万円程度 |
トイレ・トイレシート類 | 6,000円~8,000円程度 |
ブラシ・コーム・爪切り類 | 3,000円~8,000円程度 |
首輪・リード類 | 2,000円~1万5,000円程度 |
おもちゃ類 | 1,000円~3,000円程度 |
合計 | およそ4万円~10万円程度+子犬の価格 |
※価格はあくまでも目安であり、販売者や子犬の状況、動物病院、商品などの条件によって変動します。
※狂犬病予防法により、犬を迎えてから、もしくは生後91日以上たってから30日以内に狂犬病予防注射を受けることが義務付けられています。ただし、病気や高齢など事情があって接種できない場合は、届け出をすることで免除が可能となります。接種場所は自治体による集合注射と動物病院とがあり、費用に若干の違いがあります。
※2022年6月より環境省管轄の下に新たに始まった「犬と猫のマイクロチップ情報登録」。
狂犬病予防法の「特例(ワンストップサービス)」に参加している市区町村の場合は、この新登録制度にマイクロチップ情報を登録すると、同時に市区町村にも情報が通知され、これをもって狂犬病予防法における登録も済み、マイクロチップが鑑札と見なされます(ただし、別途登録料は必要)。
詳しくはこちら⇒環境省「動物の愛護及び管理に関する法律に基づく 犬と猫のマイクロチップ情報登録」https://reg.mc.env.go.jp/owner/microchip_registration_system
パグに限らず、子犬にとって大事なことの一つが社会化です。
生後3週齢~12週齢にかけての「社会化期」にある子犬は好奇心が旺盛で、いろいろな物事を吸収しながら犬として生きていく上での基礎を築いていきます。
特にこの時期には子犬にとってトラウマにならない範囲で、人や物、音、環境などいろいろなものに慣らすようにしましょう。
健康面では肥満に注意が必要です。ただし、パグは太りやすいとは言われますが、むっちりとしたパグらしい体形と肥満とは区別する必要があります。
あまりに気にして痩せ過ぎのパグにしませんように。
パグは短頭種という特質もあり、やはり気をつけたい病気があります。
たとえば、脳の病気や気管系疾患、眼疾患、皮膚疾患、歯のトラブルなど。
歯の問題は軽く見られがちですが、歯周病は他の病気にも悪影響を与えてしまうことがあります。パグのような短頭種は顎が短い分、歯が密集して生えており、歯垢がつきやすく、歯周病のリスクが高くなるので、日々の健康管理の一環として歯や口の中もチェックするようにしましょう。
子犬~若い犬では、特に以下のような病気・ケガには気をつけましょう。
この症候群には気管虚脱や軟口蓋過長症などが含まれ、気道の構造異常によって呼吸障害が起こる。症状としてはいびき、パンティング、喘鳴音など。
パグでは脂漏性皮膚炎や膿皮症、マラセチア皮膚炎、アレルギー性皮膚炎など皮膚トラブルが起こりやすい傾向にある。
大脳や髄膜に原因不明の異常が生じ、視力障害や運動失調、痙攣、斜頸、旋回運動などの症状が見られる。進行すると死に至ることも。パグ以外にパピヨンやシー・ズーなどでも発症することがある 。
パグのような短頭種は呼吸器系が弱いのに加え、子犬はまだ体温調節も十分にはできないので、熱中症になりやすい。
過剰歯とは通常より歯の数が多いこと。埋伏歯は生えてくるはずの歯が埋もれたまま出てこないものを言う。短頭種ではこれらが起こりやすい。
そして、成犬~高齢犬では、以下のような病気に注意が必要です。
眼をぶつける、異物、事故、細菌やウイルスの感染、アレルギー、他の眼の病気などが原因となって角膜が傷つくことから目やにや痛み、角膜の白濁などが見られる。眼の大きいパグは注意が必要。
高齢になるほど腫瘍・癌のリスクが高まる。
12歳の犬の53%、13歳で70%、15歳では86%の犬に、認知症に関連する行動が一つ以上見られたという調査報告もある。食事やサプリメントで認知症予防を心がけるとともに、シニア期に入ったなら愛犬の行動にも注意を。
高齢犬は体温調整がしづらくなるので、より熱中症になりやすい。
⇒【獣医師監修】犬の熱中症は危険!応急処置と危険な状況別の対処法
https://www.peppynet.com/library/archive/detail/645⇒【獣医師監修】犬の認知症の症状とは?予防のコツや介護方法も解説
https://www.peppynet.com/library/archive/detail/891パグの平均寿命は13歳~15歳程度と言われます。
参考までに、ペット霊園のデータを用いた日本の犬の平均寿命に関する調査報告がありますが、東京大学の研究チームが行った調査(2018年発表)では、パグでの平均寿命は12.8歳、死亡時の最高齢は19.0歳でした。
一方、一般社団法人 東京都獣医師会霊園協会による調査(2012年~2015年、1万3,516頭)では12.0歳。東京大学の結果より若干短くなっています。
パグは1000年単位という長きにわたり、人々に愛され続けてきました。彼らを見ていると、「君は君のままでいいんだよ」とでも言ってくれていそうな気にさえなってきます。そのキャラクターと風貌がそう思わせるのでしょう。
老若男女問わず向く犬種と言われますが、決して楽に飼えるという意味ではありません。一つの命を預かる以上、社会化や健康、食事、しつけなどに配慮するのはもちろんのこと。そうすればきっと生涯のよきパートナーとなることでしょう。
(文:犬もの文筆家&ドッグライター 大塚 良重)
※犬は生き物であるため、寿命や性格・気質、行動、健康度などには個体差があります。
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監修いただいたのは…
2018年 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業
成城こばやし動物病院 勤務医
獣医師 高柳 かれん先生
数年前の「ペットブーム」を経て、現在ペットはブームではなく「大切な家族」として私たちに安らぎを与える存在となっています。また新型コロナウィルスにより在宅する人が増えた今、新しくペットを迎え入れている家庭も多いように思います。
その一方で臨床の場に立っていると、ペットの扱い方や育て方、病気への知識不足が目立つように思います。言葉を話せないペットたちにとって1番近くにいる「家族の問診」はとても大切で、そこから病気を防ぐことや、早期発見できることも多くあるのです。
このような動物に関する基礎知識を、できるだけ多くの方にお届けするのが私の使命だと考え、様々な活動を通じてわかりやすく実践しやすい情報をお伝えしていけたらと思っています。