
現在歯磨きを行っていない飼い主さんの85%が「成犬から歯磨きを始めるのは難しい」と回答。その中で過去に歯磨きに挑戦したけど断念した飼い主さんも78%という結果に。そこで、多くの方が悩みを抱えている成犬の歯磨きとその方法について、愛玩動物看護師の宮沢さんにお話を伺いました。
まずは知っておこう!大事な歯と病気のこと。 
愛犬の歯磨きを始める前に口腔内がどうなっているかを理解しましょう!
歯の本数について
犬の歯は乳歯が28本、
永久歯が42本あります。
一般的には生後4ヵ月半頃から生え替わり、
生後6〜7ヵ月には生え替わりが終了しま
す。(個体差があります。)


ワンちゃんの3歳以上の80%が歯周病!?
犬の歯周病は非常に多くの犬がかかる病気です。
3歳以上の80%が歯周病と言われています。歯を支えている歯茎や歯槽骨などの組織が壊れ進行すると歯が抜けたり全身の健康にも悪影響を及ぼすことがあります。
歯周病の主な原因はプラーク(歯垢)と歯石です。プラークは細菌の塊です。プラークをそのままにしておくと唾液の中のカルシウムと結びつき、やがて歯石になります。歯石が付いた歯は表面がザラザラしているのでプラークが付きやすくなってしまいます。そしてプラークが歯茎に炎症をおこし、やがて歯周病になっていきます。
歯周病には歯肉炎と歯周炎があり、歯肉炎の段階で治療を行えば多くの場合治癒しますが、 歯周炎に進行してしまうと顎の骨が溶けてしまい、完治は難しくなります。

歯周病の原因とは?
歯周病の主な原因はプラーク(歯垢)で、プラーク内のバイ菌が体に入ろうとする時に、体が防御反応を起こし、歯肉(歯茎)に炎症が起きます。このプラークは物理攻撃に弱く、ブラッシングで除去が可能です。

歯石って何?なぜできる?
プラークをそのままにしておくと唾液の中のカルシウムと結びつき、やがて歯石になり ます。犬の口腔内は弱アルカリ性のため3~5日でプラークが歯石に変わると言われており、歯石になるとブラッシングでの除去は非常に難しくなります。

また、歯石が付いた歯は表面がザラザラしているのでプラークが付きやすく、更なる口腔環境の悪化につながり歯周病のリスクが高まります。
歯周病の原因の歯垢(プラーク)は細菌の塊です。
デンタルケアを怠るとプラークが歯と歯茎のすき間に溜まり、プラークから歯石へ、歯石が着いてしまうとさらにプラークが溜まりやすくなり歯周病の原因になります。



おやつやおもちゃで歯が折れる?
右記の写真では、硬いおもちゃやおやつなどを噛んで歯が折れて神経が出てしまっています。神経の治療が必要で、悪化してしまうと抜歯をしなければなりません。
症状
痛み・頬の腫れ(細菌感染)


犬の歯磨きについて 
「歯磨きが大事なことは良くわかっています。でも・・・」こうした飼い主さんは多くいらっしゃいます。歯磨きをあきらめた理由をあげてみました。
- 嫌がってできない(逃げる・怒る・噛もうとする)
- 歯磨きのやり方がわからない
- 忙しくて時間がない・続かない
- 口元を触ることに抵抗がある
- 年齢的にもう遅いと思ってしまっている

成犬から歯磨きを始める事について

歯磨きはいつやる?
歯磨きは1日2回(食事と同じ回数)するのが理想です。1回だけの歯磨きではどうしても磨き残しが出てしまうため、歯垢除去率を上げるためには、朝晩の2回が理想的です。
とはいえ、朝はお忙しい方も多いと思います。
そんな時は最低でもデンタルジェルを塗るだけでもお口の中を守る助けになります。時間がない中で無理に歯磨きをしようとすると、飼い主さんに焦りが出てしまい、それがワンちゃんにも伝わってしまいます。できれば夜のリラックスした時間にワンちゃんのペースに合わせて無理のないケアをしてあげてください。
無理をすると、どうしても続きません。ホームケアはワンちゃんの一生にわたって必要なケアです。毎日少しずつ、続けることが何より大切になります。
歯磨きの後、ご褒美におやつをあげてもいい?
歯磨きの後におやつをあげて大丈夫?とよく質問いただきますが大丈夫です!
人は食後に歯磨きをするので、歯磨きのあとにおやつをあげたたらいけないと思うかもしれません。ワンちゃんは口の中の環境が人と違うために虫歯にはなりにくいですが、プラークから歯石に変わるスピードは早いため、プラークの段階で歯磨きをすることが重要になります。歯磨き=たのしい時間、うれしい時間になるように、歯磨きのあとにご褒美をあげるのは、とても良い習慣化の方法です。
気を付けてほしいのは、できるだけ歯につきにくいおやつを選ぶことです。クッキー
やビスケットは歯につきやすいので避けたほうが良いです。細かく刻んであるささみのふりかけやデンタルガムを小さくカットしたものなどは食べカスが残りにくいのでおすすめです。院内ではデンタルジェルを使うことが多いです。いろんなデンタルジェルが出ているので好きなフレーバーを見つけてあげてください。
ぜひ歯磨きが楽しい時間になるように習慣化していきましょう!
嫌がってしまったら…
嫌がってしまったら、無理せずやめましょう。
あせらずに出来ることを習慣化していきワンちゃんの様子を見ながら徐々にステップアップしていきましょう。 慣れてきたら再チャレンジしてみてください。

歯磨きを嫌がる原因はもしかしたら痛いからかもしれません。
当てはまる症状がありましたら口腔ケアをする前に獣医師に相談しましょう。
- 歯肉の赤み・歯肉の腫れ・歯石の付着・口臭・よだれがでる
- 口の周りの汚れ・食べるときに口をカクカクする・噛み方の偏り
- 出血・歯磨きを嫌がる場所がある

歯磨きの体勢に決まりはありません。まずはワンちゃんの嫌がらない体勢を探してみてください。
高さのある台やソファーの上で行う時は落下に注意し、仰向けで行う場合は誤飲に注意してください。
後ろから支える
台やソファーの上に乗せる
膝の上に乗せる
仰向けに寝かせる
膝の間に挟んで
歯磨きの練習方法 

口周りを唇の上から触ってみましょう。
触れたらご褒美をあげて褒めてあげてください。「お口に 触ることは怖くないよ。」「できたらご褒美がもらえる!」 とワンちゃんに覚えさせましょう。




デンタルジェルを1センチほど取り唇をめくって、犬歯や歯肉につけてみてください。デンタルジェルを塗ったら口元をマッサージしてみましょう。反対側も同じようにおこないます。





シートはその子の口の大きさに応じて切って使います。シートを指に巻き付けて犬歯付近の歯を持ち上げ、犬歯に沿わせて指を後臼歯まで入れてみましょう。嫌がらなければ前後に指を動かします。





まずは歯ブラシを犬歯に当て、嫌がらなければ
ちょっと動かし、出来たらご褒美をあげて褒め
る。大丈夫なようでしたら犬歯から前臼歯、後
臼歯、切歯と進めていきましょう。
歯磨きの回数
理想は1日2回(食事の回数と同じ)
歯ブラシの動かし方
1か所につき5〜10回往復。
横に動かすだけでなく縦にも歯ブラシを動かす。
歯ブラシの使用方法
歯ブラシを濡らし、鉛筆をもつようにします。
歯に当てる強さは毛先が少ししなるくらい。




できる範囲の口腔ケアをワンちゃんのペースで無理せず に、習慣化し継続することが大切です。慣れてきたら 徐々にステップアップしていきましょう。
最初の歯磨きは5秒でもOK。嫌がる前に終わることで次もやらせてくれるようになります。習慣化には毎日少しずつが大切です。

最後に 
できる範囲の口腔ケアを、ワンちゃんのペースで無理せず毎日継続することが重要です。
ワンちゃんが落ち着いている時間や場所でスキンシップの時間として歯磨きをしましょう。また、ご飯の後や就寝前など口腔ケアの時間を決めたり、歯ブラシはすぐに手に取れるところに置いたり、カレンダーにチェックをしてできた日を見える化するなど、飼い主さんも続けやすい工夫をしましょう。 ワンちゃんとのスキンシップの時間として楽しいイベントになると継続しやすいと思います!
困ったことがあればいつでも動物病院にご相談下さいね!


































