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愛猫と幸せなシニア期を過ごすために。愛猫の老化サインを知ろう!

愛猫の元気な様子をずっと見続けられることは、飼い主さんの喜びですよね。
飼い主さんにも愛猫にも、しあわせなシニアライフを目指して、シニア期・愛猫の様子をしっかり観察&チェックする方法について、東京猫医療センターの服部 幸先生にお話を伺いました。

今回お話を伺ったのは…

東京猫医療センター 服部 幸 さん

2012年東京猫医療センターを開院。
2014年ISFM(国際猫医学会)からキャットフレンドリークリニックのゴールドレベルに認定。2014年よりJSFM(ねこ医学会)理事。
20年以上、猫に特化した専門医療に携わり、猫に関する多くの著書を手掛ける。多数メディアにも出演。

服部幸

猫のシニア期って、何歳から!?

体力が衰えた老猫は、食事、グルーミング、トイレなど、さまざまなケアが必要になります。飼い主さん自身も必要な知識を身につけておきましょう。

  • 11歳〜14歳 : 高齢期

    このころから少しずつ老化の兆候が見られる子もいます。
    今まで以上に体調管理に気を配ってあげましょう。
    猫も人間も、年を取ると食欲が減少し、消化吸収能力が衰えてきます。そのため、食事はこの頃からシニア猫用を選ぶようにしましょう。

    11歳〜14歳 : 高齢期
  • 15歳〜 : 老年期

    寝る時間が増えるようになるので、快適な寝床をつくってあげましょう。また、環境の変化はストレスになるので、模様替えは控えましょう。この時期から一気に老け込む子もいれば、病気のひとつもしないまま20歳超えで大往生をする子もいます。

    15歳〜 : 老年期

老化&病気のサインをチェックしよう!

「1日中寝ているな」「反応が鈍くなったな」と感じたら、愛猫に老化が訪れています。
それが、猫のシニア期を考える上での「ターニングポイント」。加齢からくるのか、病気が原因かは症状だけでは判断できません。少しでも気になれば病院に行くことをおすすめします。

ものを言えない猫ですが、体が発する「老化のサイン」があります。体に現れる老化現象には、毛ヅヤの減少や口臭、目の虹彩(瞳孔を取り囲む部分)にしみができるなど、さまざまです。
また、行動における老化現象もあります。老いた猫は筋力が衰えるので、高いところに登れなくなったり、歩みもゆっくりになります。そして、寝てばかりいることも多くなります。もしかすると、眠いのではなく、体がだるくて動けず、寝る以外の姿勢が辛いのかもしれません。
毎日見ていると変化や異変に気づきにくいですが、「体の様子」「食事の量」、「タイミング」「行動パターン」にはとくに意識を向けて観察するようにしましょう。

「そういえば」と思い出す行動の変化が、老化のサインです。
他にも「筋力が落ちてくる」「少しずつ視力が衰える」「大きな声で鳴くようになる」などがあげられます。ただし、加齢からくるのか、病気が原因かは症状だけでは判断できません。
老化だからと安心はせずに病気の可能性があることを念頭におき
ましょう。
少しでも気になれば病院に行くことをおすすめします。

服部幸

東京猫医療センター
服部 幸 先生

老猫に多い病気

関節炎:全身
人間も年をとると膝や肘の関節が痛くなることが多いと思います。実は猫も同じ。猫は加齢にともない関節炎が増えていきます。12歳以上の猫の90%が関節炎になっているというデータもあります。
よく見られる症状
運動が嫌いになった、毛づくろいをしなくなった、爪研ぎをしなくなったという軽いものから、進行すると高い所に登れなくなったり、足をかばって歩くようになったりします。
検査
レントゲン検査が有効です。この関節炎は膝や肘、股関節に多く発生するためこの部分のレントゲン写真を撮影する必要があります。上記のような症状がでていたら単純に歳のせいと思わずに「関節炎かも?」と気にするようにしてください。
治療
関節炎を治す薬はまだ見つかっていません。痛みが弱いうちはグルコサミンなどの成分を配合したサプリメント、痛みが強くなってきたら消炎鎮痛剤の使用や疼痛を緩和する猫用の抗NGFモノクローナル抗体製剤の注射が一般的です。いずれにしても生涯この病気とはつきあっていかなければならないのです。
予防
関節炎にしないための予防策はありません。ただ、関節炎が出てしまった時に少しでも症状を重くしないためにも適正体重を心がけましょう。肥満体型では当然関節にも負担がかかってしまうのです。
 
甲状腺機能亢進症:飲食
体重減少、多食、嘔吐、下痢、多飲多尿、夜泣きなどの症状が見られます。
人間の「バセドウ病」とよく似た病気です。甲状腺ホルモンが過剰に出て、各組織の代謝を亢進させます。7歳以上の猫はこの病気にかかるリスクが増えます。多くは、甲状腺の過形成か良性の腺腫よるものですが、まれに悪性腫瘍であることもあります。
よく見られる症状
性格が変わったようにみえることがあり、攻撃的になったり、活発になることもあれば、その逆に無気力になることもあります。また、二次的に、心筋障害、腎機能低下、高血圧などを引き起こすこともあるため注意が必要です。
検査
甲状腺ホルモンの測定(血液検査)により診断が可能です。また、併発疾患の確認のために、一般血液検査やレントゲン、血圧測定、超音波検査などを実施することもあります。
治療
投薬や食事療法があります。その他に、外科的に腫大した甲状腺を摘出することもあり、猫の状態に合わせて治療計画を立てましょう。
予防
7歳を過ぎたら、主治医と相談して定期健康診断を受けましょう。体重減少や食べ方の変化に気づいたら病院へ行きましょう。
 
慢性腎臓病(慢性腎不全):排泄
以前は慢性腎不全と呼ばれていましたが、医学用語をわかりやすくしようという動きのなかで現在では慢性腎臓病と呼ばれることが多くなってきています。
慢性腎臓病は高齢期の猫に多く見られる病気です。腎臓が壊れて働きが悪くなり、尿として排泄されるはずの老廃物がろ過されず、体内に残ることからさまざまな症状が起こります。
よく見られる症状
たくさん水を飲み、たくさんおしっこをする。進行すると元気がない、食欲が低下した、吐くことが増える、体重減少などの症状が見られます。
そしてさらに進行すると脱水や貧血が見られ、最終的には尿がまったく出なくなったり、痙攣(けいれん)や昏睡(こんすい)などの神経症状が出たりすることがあります。この病気は早期発見・早期治療により、余命を伸ばすことやQOLを改善できることが明らかになっています。
検査
一般身体検査や血液検査、尿検査、血圧測定、超音波検査やレントゲン検査などの組み合わせで判断し、その猫に合った治療計画を立てていきます。
予防
脱水を起こさせないように日頃から水分補給を心がけましょう。おしっこの量と飲水量が増えるので、日常的にチェックする習慣をかさないこと。そして、シニアになったらシニア向けのフードに切り替えましょう。
 
歯肉炎・歯周病:口
きれい好きな動物である猫。体をきれいにするためにグルーミングを熱心にする姿はよく見かけます。とはいえ、歯を自分で磨くことはできません。
猫も人と同じように歯を磨かなければ歯石がたまり、そして歯肉炎・歯周病になってしまいます。
よく見られる症状
進行すると歯が抜けてしまいます。また、あごの骨の中まで膿がたまってしまうことも。上あごと鼻は非常に近い場所にあります。上あごの歯周病が悪化して、骨まで膿が侵入し鼻に到達すると慢性的に鼻水やくしゃみが出てしまうことがあります。
また、ある日、頬が膨らんで中から膿が出てくるなんてこともあります。そうなってしまうと投薬治療だけで治すことは難しく、抜歯が必要になります。
予防
歯肉炎・歯周病の原因として一番多いのはやはり歯の汚れ。それを防ぐためにもできれば、ハミガキの習慣をつけましょう。理想的には毎日ですが、難しいようであれば3日に1回でも効果的です。
 

自宅で行うカンタン! 健康診断

猫と一緒に時間を過ごす暮らしのなかで、簡単に健康チェックする方法をご紹介いたします。そんなに難しいことはないので、毎日の習慣にしましょう。

  • 行動の変化

    普段の歩行の様子や行動、顔周りの変化(鼻水や目やになど)を観察してください。
    耳の中が汚れていたり、痛がるのもなにか病気が隠れているからかもしれません。

    「いつもと様子が違う」と敏感に気づくことが大切です。

    行動の変化
  • 食欲と飲水量のチェック

    毎日のことながらとても重要なのが、「食欲」と「飲水量」のチェック。
    食事と水の摂取量を毎日把握できるようにしておきましょう。

    水を飲む量が増えていないか?
    また、食欲があり過ぎないか?なさ過ぎないかを
    チェック!

    食欲と飲水量のチェック
  • スキンシップ

    愛猫とのスキンシップの習慣を、猫が年を取ってからも、猫の負担にならない程度に続けましょう。

    スキンシップを兼ねてブラッシングやマッサージを習慣に。
    痛そうなところ、シコリや脱毛していないかチェック!

    スキンシップ

いつもと違うことがあれば病院へ。
定期的に健康診断を受けましょう。

日常生活の中で不調を見つけるのは、飼い主さんのお役目。症状が出てからでは遅いので、
若いうちは1年に1回、12歳を超えてシニア期になったら半年に1回は
健康診断を受ける習慣をつけましょう。さらに自宅で飼い主さんが
健康チェックを行うことで、病気の早期発見に繋がります。

服部幸

東京猫医療センター
服部 幸 先生

Q.動物愛護センターって、どんなところ?

A.動物愛護センターは全国の各都道府県ににある行政施設で、動物に関する以下のお仕事をしています。

●動物保護や捕獲のお仕事

様々な事情で家庭で飼えなくなった犬や猫の引き取りや、迷子犬を保護して収容します。また狂犬病予防法に基づき野犬の捕獲収容などをしています。

●動物愛護のお仕事

人と動物が仲良く暮らすための情報提供やアドバイス、イベント、啓発などを行っています。
その他、引き取った犬や猫に新しい飼い主さんを探す譲渡活動を行っています。

●動物管理のお仕事

引き取った犬・猫や捕獲した野犬等の中で譲渡できない犬・猫の殺処分を行っているところもあります。

 
●動物取扱対策のお仕事

動物が適正飼養・飼育されているか(虐待などがないか、給餌は適正にされているか、飼育環境に問題はないか、など)を確認し、問題があれば指導を行います。
また動物を飼養・飼育している施設の管理状況の指導も行います。

●その他

各都道府県の動物愛護センターは災害時には動物救援本部として被災したペットの保護等、救援センターの役割も果たします。

Q.地域猫活動ってなに?

A.地域猫とは、住まいの地域にいる「飼い主のいない猫」を地域で面倒をみる取り組みのことをいいます。

給餌やトイレの世話だけではなく、これ以上繁殖をしないようTNR(保護して、不妊手術をして、また元の場所に戻す)を行います。
猫の保護や手術のための動物病院までの運搬は、主に地域のボランティアさんが行います。手術をした猫はその印として耳の先をカット。(オスは右耳、メスは左耳)

手術のあとはボランティアさんが猫を病院から運搬して元いた場所に戻します。その後は、給餌やトイレの掃除などを行い、地域の猫として一代限りの命を見守る取り組みです。

Q.ミルクボランティアってなに?

A.生まれたばかりの赤ちゃん猫を離乳まで預かってお世話をする授乳専門のボランティアさんのことです。

生まれたばかりの赤ちゃんねこは、一日数回にわけてミルクを与えなくてはならず、知識も必要で、日中家にいることや、留守がないことなどの条件があるため、やりたいと思っても誰もができるボランティアさんではありません。

子ねこは、授乳期が終われば、次の預かりボランティアさんにバトンタッチしたり、保護された動物愛護センターに戻して、譲渡先を見つけます。
現在、全国の動物愛護センターで殺処分される猫の多くが子ねこであるため、子ねこが救われれば、殺処分数も激減することになります。

Q.多頭飼育崩壊とは?

A.多頭飼育崩壊(たとうしいくほうかい)とは、ペットの動物を多数飼育した飼い主が、無秩序な飼い方で、不妊去勢をせず、異常繁殖の末、飼育不可能となる現象 。

英語ではアニマルホーディング(Animal Hoarding)といい、過剰多頭飼育者のことをアニマルホーダー(Animal Hoarder)という 。

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