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シニア犬・シニア猫と暮らす

【連載コラム】シニア犬・シニア猫と暮らす Vol.7

  • 花梨ちゃん・プルンちゃん
  • vol07

    花梨ちゃん(ミックス犬)

    2007年1月28日生まれ 16歳(女の子)

    プルンちゃん(シャムミックス猫)

    1994年生まれ 享年21歳(女の子)

    ボーダー

    大切な家族(犬・猫)と、上手に暮らすために学んだこと―。
    それは、人間には人間のルールがあり、
    犬や猫には彼らのルールがあるということ。
    飼い主が人間のルールを犬や猫に一方的に
    押し付けるのではなく、彼らのルールも人間が学ぶこと。
    それが、ずっと長く、幸せに、楽しく暮らすためのコツ

三人の息子を持つ、河角恵子さん(54歳)が、初めて犬を飼ったのは、今から16年前。中学一年生の三男に「犬が飼いたい」とねだられたことがきっかけでした。当時、恵子さんの自宅には13歳の猫、プルンがいました。
プルンは、恵子さんの次男の友だちの家で生まれた子猫で「たくさん生まれて困っているから一匹もらってくれないか」と相談を受け、恵子さんの家族となったのです。

  • 息子たちは、もともと動物が好きで、猫のプルンに続いて「犬が飼いたい」と事あるごとに三男が恵子さんにおねだり。しかし、三人の息子の世話に加え、仕事もしていた恵子さんは「犬の面倒まで見られない」と息子をなだめすかしてきました。

    そんなある日、仕事で付き合いがあった神社の宿坊で5匹の子犬が産まれた、という情報が恵子さんの耳に入ったのです。それを知った三男は大喜び!息子に熱望され、子犬を見に行った恵子さん親子は5匹の犬の中で一番「ぼや~」っとして、ご飯をのんびり食べていた生後二か月の女の子の犬を家族として迎え入れることに。

    「犬を飼うのは初めてだったので、のんびりした性格の子の方が育てやすいのかなと思ったんです。その時、神社の宿坊でちょうど花梨酒を造っているのが目に入り、子犬に花の名前をつけたいと思っていた息子が即決!花梨と名前をつけました」

  • 河角さん(右)と花梨ちゃんそしてペットシッターの藤田さん(左)

    ▲河角さん(右)と花梨ちゃんそしてペットシッターの藤田さん(左)

そこで恵子さんの家族となった花梨を待ち受けていたのが、先住猫で13歳のプルンです。
「実は、この頃、よく遊びに来ていたプルンのボーイフレンド猫が亡くなって、その直後からプルンは急に元気が無くなったんです。ところが小さな花梨がやってきたとたん、プルンはエンジン全開!まるで昨日までの落ち込みがなかったかのように元気になっていきました」

親猫が我が子にするように、小さな花梨の首根っこを口でつかみ、持ち上げて歩いたり、花梨がテーブルに手をかけていたずらしようものならプルンが「シャー!」と威嚇して、しつけをすることも。花梨もプルンに逆らうことは全くしません。13歳も年の離れたプルンは、花梨にとって生きていく上でのお手本となりました。猫のプルンとずっと一緒にいたせいか、花梨は、段ボールの中に入ってみたり、顔を洗ったり、前足をグルーミングしたり、しぐさもまるで猫みたいです。

  • そんな微笑ましい光景の中、犬という生き物と暮らし始めた恵子さんには疑問に思うことがありました。
    「プルンは猫。猫はしつけもなく、自由、勝手気ままなのに、犬にはどうしてしつけが必要なんだろう?」

    恵子さんは本やネットで調べるまま、犬の飼育に必要なサークルやクレート、ベッド等をすべて買いそろえましたが、花梨は自分のために用意されたベッドで寝ようとはしません。なんど言い聞かせても、恵子さんの布団の中で一緒に寝たがるのです。

  • ▲花梨ちゃん

    ▲花梨ちゃん

「花梨を飼い始めて知り合ったトレーナーさん2人には、一緒に寝てはいけないと言われました。でも、花梨は我が家に来るまでは兄弟で団子になって寝てたんだし、いきなり一人はさみしいんじゃないかと・・・。

そう思えば人間やプルンのそばで寝たがっても不思議ではありません。きっと縄文時代も、犬とそんな暮らしをしていた思うんですよ・・・犬にリードを付けるようになったのは明治になってからで、それまで日本の犬は自由に闊歩してました。係留していたのは「食用犬」だったそうです。

それを知ってから、クレートで待機させるとか、そういう常識を疑うようになりました。何も人間が決めたルールを無理やり花梨におしつける必要はない。犬には犬の居心地のいい距離や居場所がある。逆に、人間に侵害されたくないこともある。お互いそれを認めて、寄り添うことが大切なんだと感じました。花梨がわたしの布団の中で安心できるのなら、そこが花梨の居場所。花梨が決めればいいことです」
飼い主のルールを押し付けず、花梨の心の声に耳を傾けることで始まった犬との暮らし。

  • 花梨との出会いがきっかけで、その後、恵子さんは、行き場のない犬や猫を一時的に預かるボランティア活動にも参加し始めました。その活動を大いに受け入れ、見守ってくれたのも花梨でした。
    「子猫を預かると、花梨は子猫から一時も離れず、散歩にもいかず子猫の面倒を見るほど。最初に預かった子は足のない猫だったのですが、とにかくよく面倒を見てくれました。犬を預かった時も、自分のごはんやおやつを譲ってあげる。猫に対して威嚇したことは一度もない。とにかく面倒見がよくて優しい子なんです」

  • 保護猫を見守る花梨ちゃん

    ▲保護猫を見守る花梨ちゃん

  • プルンの背中を追って育ち、20頭近くの保護猫たちの面倒を見て、寄り添ってきた花梨。
    そのやさしさは、やがて高齢で寝たきりになったプルンにも向けられます。

    「プルンは21歳の誕生日を迎えたころから寝たきりになったのですが、とてもプライドの高い猫。寝たきりになってもトイレは自力で行こうしていました。そのため、トイレを近くにおいておくのですが、それでもトイレまでたどり着けず、途中で倒れてしまうこが何度もあった。その時は、必ず花梨が私に知らせに来てくれた。プルンが寝たきりになってからは、私の布団の中ではなく、プルンのベッドに顎を乗せてずっと添い寝をしていました。何かあれば、自分が知らせなければならないと思っていたんでしょう」

  • 寝たきりのプルンちゃんに寄り添う花梨ちゃん

    ▲寝たきりのプルンちゃんに寄り添う花梨ちゃん

そしてそれは、恵子さんの友人たちが、自宅リビングに集まっていた夕方のこと―。
友人のひとりがピアノでショパンを演奏していた時、リビングで寝ていたプルンが少し動いて顔を上げたのです。
「プルン・・・どうしたの?」
恵子さんが慌てて、プルンに近づくと、プルンは
「ふう・・・」と小さく息を吐きだしそのまま天国へと旅立っていったのです。
それを見て驚いたのは恵子さんの友人たちです。
「死んだの・・・?」
「・・・うん、すごく穏やかに逝ったんだと思う・・・」
すると友人の一人がこんなことを言いました。

「死って、もっと、怖いものかと思ってたけど・・・、こんなきれいな亡くなり方もあるんだね・・・」
まさに21歳のプルンは、誰もがうらやむように穏やかに、老衰で眠るように天国へと旅立っていったのです。

プルンがいなくなって8年が過ぎ、やがて、愛犬・花梨にも老いの兆しが見えるように―。
「14歳になったくらいから階段を踏み外すようになったり、ドッグランでボール遊びをしていたら、急に呼吸が荒くなり失神して倒れてしまったことがありました。この頃から二階にはあまり上らなくていいよう、私も一緒に一階で寝たり、生活するようにしています。散歩でもあまり激しい運動をしないよう気を付けています」

  • 花梨はボール遊びが大好き!しかし、高齢になった自分の体が、「もっと遊びたい!」という気持ちに追いついていかないため、恵子さんが加減を見なくてはなりません。ボール遊びも距離を短くしたり短時間にしたり工夫が必要です。
    本人がやりたい放題、運動させることはもうできないと恵子さん。

    「犬は、飼い主を喜ばせようとして、無理すると思うんです。セラピー活動などをしている犬たちを見ていると時々そう感じます。本人が気が向かないときに無理してやらせるのは良くないと思います。反対に、本人がやりたいときは、飼い主が加減(遊び時間や活動距離を短くするとか)を考えながら、一緒に楽しめばいい。高齢期に入り、無理をさせると取り返しのつかないことになります」

  • ボール遊びが大好きな花梨ちゃん

    ボール遊びが大好きな花梨ちゃん

    ▲ボール遊びが大好きな花梨ちゃん

同じころ花梨とのコミュニケーションにも変化が表れます。
「この頃から耳もかなり遠くなって、以前は怖がっていた雷も怖がらなくなりました。ほとんど聞こえていないのかな?目も見えにくくなってきていると思います。残るは嗅覚ですから、花梨が14歳を過ぎてからは主に匂いでコミュニケーションをとるようにしています」

以前から、恵子さんは①ゼスチャー(見る)②声(聴く)③トリーツ(匂い)で、花梨とのコミュニケーションを繋いでいたといいます。匂いのコミュニケーションは、「散歩のときだけのおやつ」「シャンプーのときのおやつ」「動物病院のときのとっておきのおやつなど」など、決まったトリーツが出ることで、次のアクションの理解を促すコミュニケーション手段です。

この三つでコミュニケーションを取っていれば、いずれかが不自由になっても他の手段で意思疎通ができます。犬も高齢になると、目も見づらくなり、耳もほとんど聞こえなくなります。最後まで残る臭覚でコミュニケーションがとれるよう、子犬の頃から慣らしておけば、大きな安心につながるのです。

  • 花梨の老化への備えはそれだけではありません。
    高齢になっても最後まで残る嗅覚を使った「ノーズワーク」の継続で、認知機能の低下を防ぎます。ノーズワークとは犬が嗅覚をつかって、「匂いを探す→見つける→食べる」というゲーム。

    多くは嗜好性の高いトリーツをタオルやノーズワーク用のパズルを用いて隠し、それを愛犬が嗅覚を使って、トリーツを探し出す遊びです。アジリティーなどと違い、身体能力が落ちても嗅覚さえあれば遊ぶことができるので高齢犬には最適です。

    花梨は若い頃からノーズワーク用のスライドパズルを使ったゲームをしていたので、16歳を過ぎた今でも「ノーズワーク」はお手の物。鼻や前脚をつかって器用にパズルをスライドさせ、大好きなトリーツをゲットします。

  • 紙コップを使ったノーズワークを楽しむ花梨ちゃんとペットシッターの藤田さん

    ▲紙コップを使ったノーズワークを楽しむ花梨ちゃんとペットシッターの藤田さん

  • 認知機能の低下防止と共に、花梨の身体機能の低下防止も恵子さんにとって重要課題です。

    猫のプルンと育った花梨は、段ボールやかごに入るのが大好き。今でも、スーパーの買い物かごのエコバスケットにジャンプして、入ったり出たりを繰り返して遊びます。

  • ノーズワークを楽しむ花梨ちゃん

    ▲ノーズワークを楽しむ花梨ちゃん

  • 「もう高齢なので、体の関節を傷めないよう、花梨の様子を見ながら遊んでいますが、楽しみながら足腰を鍛える適度な運動になっていると思います。年齢を重ねるだけのご長寿を祝うんじゃなく、花梨には心身ともに元気で長生きしてほしい・・・」

    エコバスケットで喜々として遊ぶ花梨は、16歳とは思えないほど元気いっぱい!花梨の食事も完全手作りと、恵子さんは、高齢になった花梨の健康管理にも徹底的に気を使っています。花梨が小さいころにアトピーがひどかったので手作りにせざるをえなかったというのも理由のひとつです。

  • エコ・バスケットに入る花梨ちゃん

    ▲エコ・バスケットに入る花梨ちゃん

花梨の食事例:黒米・黒ゴマ・クコの実・菊の花・オメガ3・魚などを混ぜた手作り食。
3日に一度つくり、小分けして、冷凍しておくと便利!

  • それでも、年齢的にはもうおばあちゃん。1日に7時間以上留守にする時には、ひとりでの留守番が不安なため、ペットシッターさんに頼んで、軽いお散歩をお願いしたり、遊び相手になってもらうと恵子さん。
    「気がおけないシッターさんじゃないと、花梨は絶対に歩かない。どんなシッターさんでもいいわけではありません。今、お願いしているシッターさんは、以前からずっとお世話になっていて、花梨もすごく懐いています。彼女は、花梨の性格も、癖もすべてわかっているので、安心して任せることができるんです」

    高齢期に差し掛かってから慌ててペットシッターさんや、デイサービスを探すのでは愛犬(特に高齢犬)にとって、慣れるまでに時間がかかり、ストレスも大きくなります。愛犬が高齢になってから慌てるのではなく、日ごろからプロのシッターさんや動物病院との信頼関係を築いておくのも高齢犬・猫が幸せに長生きできるコツと言えるでしょう。

    ペットを飼い主のルールに当てはめるのではなく、「機嫌がいい・悪い」や「あまり触られたくない」「そっとしておいてほしい」など、日常のペットの気持ちにも理解を示し、飼い主がそれを受け入れる生活ができると、犬や猫との暮らしはもっと、もっと楽しくなります。

  • 河角さんと花梨ちゃん

    ▲河角さんと花梨ちゃん

プルンが21歳まで生き、花梨が16歳という高齢になってもとても元気でいられるのは、偶然ではありません。
恵子さんの相手を思うそんな気持ちが、プルンや花梨をストレス・フリーにし、健康を維持できるのです。

ただ長生きを目指すだけではなく、幸せなご長寿犬・猫を目指す―。
犬や猫がストレス・フリーの日常は、飼い主さんにとっても、ストレス・フリー!
ご長寿犬・猫と暮らしてきた飼い主としての恵子さんの「気づき」です。
(取材:2023年3月)

取材・記事:今西 乃子(いまにし のりこ)

児童文学作家/特定非営利活動法人 動物愛護社会化推進協会理事/公益財団法人 日本動物愛護協会常任理事

主に児童書のノンフィクションを手掛ける傍ら、小・中学校で保護犬を題材とした「命の授業」を展開。
その数230カ所を超える。
主な著書に子どもたちに人気の「捨て犬・未来シリーズ」(岩崎書店)「犬たちをおくる日」(金の星社)など他多数。

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