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【獣医師監修】ミニチュア・シュナウザーの性格や飼い方のコツ、寿命、なりやすい病気まで全部紹介!

【獣医師監修】ミニチュア・シュナウザーの性格や飼い方のコツ、寿命、なりやすい病気まで全部紹介!

シュナウザーにはジャイアント、スタンダード、ミニチュアの3種がいます。基礎になっているのは中間サイズのスタンダード・シュナウザーで、ミニチュア・シュナウザーはその小型版になります。

かつてはネズミ捕りに使われた犬で、ガッツがあり、明るく、社交的。そんなミニチュア・シュナウザーを迎えるには?

1.ミニチュア・シュナウザーの歴史

原産国:ドイツ

1897年にスタンダード・シュナウザー(当時の犬種名はワイアヘアード・ピンシャー)が初めてドッグショーに出陳され、賞を獲得した折、その犬の呼び名が「シュナウザー」であったことから、以来、この犬種はシュナウザーと呼ばれるようになったと伝えられています。ちなみに、「シュナウザー(Schnauzer)」とは、「口髭」を意味します。

そのスタンダード・シュナウザーは1300年代頃から存在していたと思われ、農場でネズミ捕りや番犬、荷車の牽引犬、牧畜犬として働く犬でした。小型版であるミニチュア・シュナウザーが誕生したのは1800年代末頃で、ドイツ中西部のフランクフルト(=フランクフルト・アム・マイン)でのこと。

特に二人の熱心なブリーダーがおり、スタンダード・シュナウザーとアッフェン・ピンシャーとの交配によって作出されたと言われています。その他、ミニチュア・プードルやミニチュア・ピンシャー、フォックス・テリアなどとも交配されたという話もありますが、定かではありません。

ミニチュア・シュナウザーのドイツでの名は、ツヴェルク・シュナウツァー。現在では都会にも似合うスタイリッシュな家庭犬として世界に知られています。

2.ミニチュア・シュナウザーの特徴

ミニチュア・シュナウザーの犬種名には「テリア」という言葉は入っていませんが、かつての仕事からもテリアと同様の扱いを受けることがあります。

基礎犬となったスタンダード・シュナウザーのかつての犬種名は「ワイアヘアード・ピンシャー」であるとご紹介しましたが、ドイツ語の「ピンシャー(Pinscher)」は「テリア」と同義語だということを知ると納得もいくでしょう。

実際、アメリカン・ケネル・クラブ(AKC)ではミニチュア・シュナウザーをテリアグループに分類しています。一方、ジャパン・ケネル・クラブ(JKC)の場合は第2使役犬グループに属します。

この点、少々ややこしくはありますが、現在ではテリアとはまた違ったシュナウザーという独立したタイプを築いているとも言えるのではないでしょうか。

ミニチュア・シュナウザーの容姿

ミニチュア・シュナウザーの体高は30cm~35cm、体重は4kg~8kg程度。コンパクトで、ややがっしりした小型犬です。カットの仕方にもよりますが、長く伸ばした口髭と眉毛、クリっとした知的な瞳はどこか紳士を思わせます。

耳と尻尾はこれまで慣習的に断耳・断尾されてきましたが、断耳・断尾を禁止する国では自然のままの垂れ耳と高くセットされた長い尻尾をもちます。一方、そのような法律・条令のない国では断耳・断尾された犬もいます。

毛色はソルト&ペッパー、ブラック、ブラック&シルバー、ホワイトの4色。

被毛はワイリーなダブルコートで、基本的にはシュナウザーらしい毛質を維持するためにプラッキング(不要な毛を抜き取るトリミング技法)を必要とする犬種ですが、クリッパー(バリカン)で短くカットすることもできます。ただし、その場合は毛質が軟らかくなる傾向にあります。

ミニチュア・シュナウザーの性格・気質

ミニチュア・シュナウザーは明るく社交的で、家庭犬としての資質を十分備えています。
その一方、テリア系の犬らしくガッツがあり、我慢強く、大胆で、勇敢。ただし、個体差もあり、この犬種はこういう性格をしていると断定できるわけではありません。

最近、犬の行動特性は遺伝と関連するものの、犬種との関連はわずか9%にすぎないという研究結果が発表されました。つまりは、犬種としての特性はあるとしても、行動や性格は個々に違いがあるということ。

それを考えるならば、代々受け継がれたミニチュア・シュナウザーの良さをもちつつ、より望ましい性格の犬に育つかは、飼い主さんの育て方、接し方や、環境、経験などが大きく関係するということでしょう。

3.ミニチュア・シュナウザーを迎える方法

ミニチュア・シュナウザーを迎える方法

ミニチュア・シュナウザーを迎えるには、主にペットショップ、ブリーダー、動物保護団体・動物愛護センターなどのルートがありますが、その前に知っておきたいこともあります。それを理解した上で、入手先を決めましょう。

  1. 1.「動物の愛護及び管理に関する法律」により、販売者は対象となる動物を直接見せ、飼育方法などについて購入者と対面した上で文書を用いて説明しなければなりません。これを怠る販売者は避けたほうがいいでしょう。

  2. 2.2022年6月1日より、販売される犬猫にはマイクロチップ装着が義務化されました。犬を購入後(マイクロチップを装着済の犬を譲り受けた場合も同じ)は、飼い主さん自身の情報へと変更登録する必要があります。

詳しくはこちら⇒

環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室「犬と猫のマイクロチップ情報登録について」 https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/pickup/chip.html

ミニチュア・シュナウザーの入手先

入手先1

ペットショップで探す

ペットショップで販売される犬は、契約ブリーダー、自社(自家)繁殖の他、多くが生体市場経由で仕入れられた子犬です。現在、動愛法の改正により、生後56日(8週齢)に満たない子犬子猫は販売できなくなっているので(特例として天然記念物指定を受けている日本犬の場合は生後49日)、子犬の生年月日は確認するようにしましょう。

子犬を選ぶ際には、できれば親犬を見ることができると理想的ですが、ペットショップでは稀と言わざるを得ません。

入手先2

ブリーダーから購入する

真摯なブリーダーは特定の犬種にこだわりをもって繁殖しており、その犬種についての知識も豊富です。子犬の価格については、ブリーダー登録サイトは別として、ブリーダーのホームページ上では公開していないケースが多いため、直接問い合わせる必要があります。

予約をすれば見学も可。親犬を見られる率が高い点はプラスポイントです。なお、場合によっては子犬が産まれるまで数ヶ月待たなければならないこともあります。

入手先3

里親になる

行き場のない犬はまだまだ多くおり、そうした犬を迎えるのも一つの選択肢です。この場合、すでに成犬であることが多く、老犬である場合も珍しくありません。

入手先としては動物保護団体や各自治体の動物愛護センターなどがありますが、里親になるには一人暮らしや65歳以上の人は不可、その自治体在住者のみなどそれぞれ条件が設けられていることがあるのでよく確認してください。

犬は子犬から飼わなければならないということはありません。成犬でもしつけ直すことは可能です。何より、辛い思いをした分、人の愛情に飢えている犬も多いもの。時間をかけて気持ちが通じ合う一瞬が訪れた時の嬉しさは代えがたい宝となることでしょう。

ミニチュア・シュナウザーと暮らしたいと思った時、保護犬を迎えるという選択肢も考えてみてはいかがでしょうか。

ミニチュア・シュナウザーを迎えるときの費用相場は?

現在、子犬の価格は以前に比べて大幅に高騰しています。したがって、決して安い買い物ではなく、ましてや一つの命を預かるわけですから、熟考の後、犬をお迎えください。

その結果、ミニチュア・シュナウザーを迎えると決めた場合、おおむね以下の初期費用がかかります(商品に関しては一般的なものから少々リッチなものまで含みます)。

ミニチュア・シュナウザーを迎える場合の費用の目安

項目 費用の目安
ミニチュア・シュナウザーの子犬の価格 23万円~
狂犬病予防注射 3,000円~5,000円程度
注射済票 500円程度
犬の登録料 3,000円
混合ワクチン(5種~10種) 5,000円~1万円程度
犬用ベッド 3,000円~8,000円程度
サークル・ケージ 7,000円~3万円程度
食器・水飲み・フード(ドライフード1袋)類 4,000円~1万円程度
トイレ・トイレシート類 3,000円~8,000円程度
ブラシ・コーム・爪切り類 3,000円~8,000円程度
首輪・リード類 4,000円~1万5,000円程度
おもちゃ類 1,000円~3,000円程度
合計 およそ4万円~10万円程度+子犬の価格

※価格はあくまでも目安であり、販売者や子犬の状況、動物病院、商品などの条件によって変動します。
※狂犬病予防法により、犬を迎えてから、もしくは生後91日以上たってから30日以内に狂犬病予防注射を受けることが義務付けられています。ただし、病気や高齢など事情があって接種できない場合は、届け出をすることで免除が可能となります。接種場所は自治体による集合注射と動物病院とがあり、費用に若干の違いがあります。
※2022年6月より環境省管轄の下に新たに始まった「犬と猫のマイクロチップ情報登録」。狂犬病予防法の「特例(ワンストップサービス)」に参加している市区町村の場合は、この新登録制度にマイクロチップ情報を登録すると、同時に市区町村にも情報が通知され、これをもって狂犬病予防法における登録も済み、マイクロチップが鑑札と見なされます(ただし、別途登録料は必要)。
詳しくはこちら⇒環境省「動物の愛護及び管理に関する法律に基づく 犬と猫のマイクロチップ情報登録」https://reg.mc.env.go.jp/owner/microchip_registration_system

4.ミニチュア・シュナウザーの飼育のポイント

ミニチュア・シュナウザーの飼育のポイント

ミニチュア・シュナウザーに限らず、子犬にとって大事なことの一つが社会化です。
生後3週齢~12週齢にかけての「社会化期」にある子犬は好奇心が旺盛で、いろいろな物事を吸収しながら犬として生きていく上での基礎を築いていきます。

ミニチュア・シュナウザーらしい明るさを伸ばすためにも、特にこの時期には子犬にとってトラウマにならない範囲で、人や物、音、環境などいろいろなものに慣らすようにしましょう。なお、被毛のお手入れにプラッキングを希望する場合は、子犬のうちから慣れさせる必要があります。バリカンで刈る場合でもトリミングは5~8週に1回程度が目安となります。

もちろん耳や歯、爪、普段のブラッシングなど一般的なグルーミングは必要になるので、体のどこを触っても大丈夫なように、子犬の頃から少しずつ慣らすようにしましょう。

5.ミニチュア・シュナウザーのかかりやすい病気・ケガ

ミニチュア・シュナウザーは活発で健康的な犬ですが、やはり気をつけたい病気があります。たとえば、心臓疾患や消化器疾患、歯のトラブルなど。

歯の問題は軽く見られがちですが、歯周病は他の病気にも悪影響を与えてしまうことがあります。ミニチュア・シュナウザーのような小型犬は口が小さい分、歯が密集して生えており、歯垢・歯垢がつきやすく、歯周病のリスクが高くなるので、日々の健康管理の一環として歯や口の中もチェックするようにしましょう。

若齢~成犬

子犬~若い犬では、特に以下のような病気・ケガには気をつけましょう。

  • ・ 低血糖

    糖分が著しく低下することで、元気喪失や痙攣などが見られる。

  • ・ 外耳炎

    外耳炎では痒みや痛み、赤み、腫れ、耳だれなどが見られ、慢性化すると耳介が肥厚したり、外耳道が狭くなったりすることがある。耳が垂れた犬種は外耳炎になりやすい。

  • ・ 熱中症

    子犬はまだ体温調節も十分にはできないので、熱中症になりやすい。

成犬〜高齢犬

そして、成犬~高齢犬では、以下のような病気に注意が必要です。

  • ・ 尿石症(尿路結石症)

    尿中のミネラル成分が結晶化して腎臓、膀胱、尿道などの泌尿器に結石をつくってしまう病気。結石の成分にはいくつかあるが、ミニチュア・シュナウザーではシュウ酸カルシウムや尿酸塩が多いと言われる。

  • ・ 胆石症

    脂肪を分解する胆汁は肝臓で作られ、胆嚢に溜められる。その胆汁が結晶化して石のようになってしまった状態を胆石症と言う。状態により、食欲低下や嘔吐、下痢、腹痛、発熱、黄疸、脂肪便などの症状が見られる。ミニチュア・シュナウザーはリスクのある犬種とされ、特にオス犬での発症が多い。

  • ・ 急性膵炎

    膵臓で産生される消化酵素の分泌異常により、膵臓そのものを消化するという誤作動が起こる病気。重度の場合は黄疸や尿毒症、呼吸困難などに陥ることも。ミニチュア・シュナウザーはリスクの高い犬種とされる。

  • ・ 洞不全症候群(Sick Sinus Syndrome/SSS)

    心臓は洞結節の働きによってリズム正しく動いている。ところが、加齢や他の心臓病などの影響で洞結節の働きに障害が生じ、心臓が正常に動かなくなってしまう状態を洞不全症候群と言う。状態によっては心臓にペースメーカーを埋め込む手術が必要になることもある。

  • ・ 腫瘍・癌

    高齢になるほど腫瘍・癌のリスクが高まる。

  • ・ 認知症

    12歳の犬の53%、13歳で70%、15歳では86%の犬に、認知症に関連する行動が一つ以上見られたという調査報告もある。食事やサプリメントで認知症予防を心がけるとともに、シニア期に入ったなら愛犬の行動にも注意を。

  • ・ 熱中症

    小型犬は体高が低い分、地面からの反射熱を受けやすいのに加え、高齢犬は体温調整がしづらくなるので、より熱中症になりやすい。

⇒【獣医師監修】犬の熱中症は危険!応急処置と危険な状況別の対処法

https://www.peppynet.com/library/archive/detail/645

⇒【獣医師監修】犬の認知症の症状とは?予防のコツや介護方法も解説

https://www.peppynet.com/library/archive/detail/891

6.ミニチュア・シュナウザーの平均的な寿命は?

ミニチュア・シュナウザーの平均的な寿命は?

ミニチュア・シュナウザーの平均寿命は12歳~15歳程度と言われます。

参考までに、ペット霊園のデータを用いた犬の寿命調査によると、東京大学の研究チームが行ったものでは13.4歳、最高齢は18.3歳で(2018年発表)、一般社団法人 東京都獣医師会霊園協会が行った調査では12.8歳でした(2012年~2015年、1万3,516頭)。

7.まとめ

ミニチュア・シュナウザーは時とともに農場の犬から都会的でスタイリッシュな犬へと変化しました。しかし、根底にある活気に満ち、大胆で勇敢なテリア気質は変わることはありません。単に可愛いだけではないのがミニチュア・シュナウザーなのです。

しつけの反応度も高く、トリックを教えて楽しむ飼い主さんもいます。
紳士のような風貌とは裏腹に、お茶目なところもまたキュート。
そんな彼らは愛情を注ぐ限り、一生忘れ得ぬ相棒・家族として応えてくれることでしょう。どうぞ良い出会いがありますように。

(文:犬もの文筆家&ドッグライター 大塚 良重)

※犬は生き物であるため、寿命や性格・気質、行動、健康度などには個体差があります。

【参照元】
デズモンド・モリス「デズモンド・モリスの犬種事典」(株式会社 誠文堂新光社、2007) FEDERATION CYNOLOGIQUE INTERNATIONALE (AISBL)「ZWERGSCHNAUZER (Miniature Schnauzer)」https://www.fci.be/Nomenclature/Standards/183g02-en.pdf
VDH(German Kennel Club)「Zwergschnauzer」https://www.vdh.de/welpen/mein-welpe/zwergschnauzer
一般社団法人 ジャパン ケネル クラブ「ミニチュア・シュナウザー」https://www.jkc.or.jp/archives/world_dogs/2699
AMERICAN KENNEL CLUB「Miniature Schnauzer」https://www.akc.org/dog-breeds/miniature-schnauzer/
ELINOR K. KARLSSON et al. Ancestry-inclusive dog genomics challenges popular breed stereotypes. SCIENCE•29 Apr 2022•Vol 376, Issue https://www.science.org/doi/10.1126/science.abk0639#tab-citations
E-GOV法令検索「昭和四十八年法律第百五号 動物の愛護及び管理に関する法律」https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=348AC1000000105
公益社団法人 日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査及び飼育者意識調査調査結果(平成27年)」http://nichiju.lin.gr.jp/small/ryokin_pdf/h27.pdf
水越美奈、松本千穂、脇坂真美「高齢犬の行動の変化に対するアンケート調査」(動物臨床医学26[3] 119-125, 2017)https://www.jstage.jst.go.jp/article/dobutsurinshoigaku/26/3/26_119/_pdf/-char/ja
Inoue M, Kwan NCL, Sugiura K. Estimating the life expectancy of companion dogs in Japan using pet cemetery data. J Vet Med Sci. 2018 Jul 18;80(7):1153-1158. doi: 10.1292/jvms.17-0384. Epub 2018 May 24. PMID: 29798968; PMCID: PMC6068313. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29798968/
一般社団法人 東京都獣医師会霊園協会「犬の寿命調査/家のワンちゃんどのくらい長生きするの? どのワンちゃんが長生きなの?」https://petreien-a.tokyo/dog/

監修いただいたのは…

2018年 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業
成城こばやし動物病院 勤務医
獣医師 高柳 かれん先生

数年前の「ペットブーム」を経て、現在ペットはブームではなく「大切な家族」として私たちに安らぎを与える存在となっています。また新型コロナウィルスにより在宅する人が増えた今、新しくペットを迎え入れている家庭も多いように思います。
その一方で臨床の場に立っていると、ペットの扱い方や育て方、病気への知識不足が目立つように思います。言葉を話せないペットたちにとって1番近くにいる「家族の問診」はとても大切で、そこから病気を防ぐことや、早期発見できることも多くあるのです。
このような動物に関する基礎知識を、できるだけ多くの方にお届けするのが私の使命だと考え、様々な活動を通じてわかりやすく実践しやすい情報をお伝えしていけたらと思っています。

成城こばやし動物病院 獣医師 高柳 かれん先生

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