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犬の慢性腎不全の原因や早期発見のためのポイント、治療法などを紹介

犬の慢性腎不全の原因や早期発見のためのポイント、治療法などを紹介

犬の腎臓は、生命を維持するうえで非常に重要な役割を果たす臓器です。
しかし、何らかの異常が起こってもなかなか目立った症状が現れない「沈黙の臓器」ともいわれ、万一の病気の際には気が付きにくいものでもあります。
そんな腎臓の病気の中でも多く見られるのが「慢性腎不全」。

ここでは、慢性腎不全の原因や早期発見のためのポイントなどをご紹介します。

1.犬の腎不全とは?

犬の腎臓はさまざまな役割を果たす臓器で、血液中に含まれる老廃物を尿として排泄したり、血圧を調整する、血をつくるためのホルモンを分泌するなど、生命を維持するために非常に重要なものです。
その腎臓の機能が、何らかの原因で低下してしまう病気が腎不全。
犬の腎不全には「急性」と「慢性」がありますが、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。

急性腎不全

数時間から数日ほどの、とても短い期間で腎機能が低下します。急激な尿量の減少や、食欲不振、下痢、嘔吐、脱水などの症状が見られ、重症になると痙攣や体温低下などを起こし、命を落としてしまうケースも。一刻も早い救急治療が必要となります。

慢性腎不全

数ヶ月~数年ほどの長い時間をかけて、徐々に腎機能が低下していきます。初期段階ではほとんど症状が現れないため、早期発見が難しい非常に怖い病気です。

もしも慢性腎不全に罹患してしまったときは、できるだけ早く気がつき、進行を抑えていくことが大切。
そんな「慢性腎不全」について、詳しく見ていきましょう。

2.犬の慢性腎不全の原因

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犬の腎不全の原因には、次のようなものが挙げられます。

老化や脱水などによる循環不良

年齢を重ねるにつれて腎臓の機能が低下し、老廃物の排出がスムーズにできなくなることで腎不全を引き起こすことがあります。
また、この循環不良は脱水が原因となることもあります。

偏った食生活

偏った食生活によるリンやタンパク質の過剰摂取が腎組織に大きな負担をかけ、その蓄積が慢性腎不全の原因ともなります。

歯周病

犬によく見られる歯周病ですが、歯周病にかかるとその細菌が血液や臓器に入り込み、腎不全の引き金となることがあります。

先天性

生まれつき、片方もしくは両方の腎臓がないなど、先天的な疾患によって腎不全を発症することがあります。

3.犬の慢性腎不全の症状

前述にもあるように、犬の腎不全は初期にはあまり症状が見られず、発見しづらい病気でもあります。だからこそ、ほんのささいなことでも気が付いてあげたいもの。

犬の腎不全における4つのステージ分類と、ステージ別に見られる症状を確認していきましょう。

ステージ1

  • 目に見える症状はなし

飼い主さんがすぐに気が付くほどの、目立った症状はありません。

ステージ2

  • 水をたくさん飲む
  • 色の薄いおしっこをたくさんする

腎機能の低下が進行すると尿を濃縮させることができなくなるため、尿の色が薄くなります。また、尿量が増えるため水分不足にもなり、水を飲む量が増えます。
しかし、元気や食欲に変わりないケースが多いため、まだ気が付きづらい時期でもあります。

ステージ3

  • 食欲不振・体重減少
  • 嘔吐
  • 貧血
  • 口内炎や胃炎

食欲の低下や嘔吐などの症状が見られるほか、尿による老廃物の排出が十分にできなくなるため、尿毒症を引き起こします。血液中で高濃度になった有害物質によって、口内炎や胃炎を発症するケースも。
また血液検査をすると、腎機能の指標となるCRE(クレアチニン)、BUN(尿素窒素)の数値が上昇します。

ステージ4

  • けいれん発作などの全身症状

尿毒症が進行し、命にもかかわる非常に重篤な状態になります。

4.犬の慢性腎不全の治療方法

犬の慢性腎不全の治療方法

残念ながら、一度壊れてしまった腎臓の組織を元に戻すことはできません。
そのうえで慢性腎不全の治療としては、いかにして腎臓への負担を減らすことができるかがキーポイント。食事内容を見直したり、血液中の老廃物や毒素を排出することで腎臓への負担を減らし、進行をゆるやかにすることができます。

腎臓への負担軽減方法

方法1

点滴や積極的な水分補給

尿量を増やし、老廃物の排出を促します。

方法2

食事内容の見直し

生きていくうえで必要な栄養素でも、過剰な摂取によって腎臓に負担がかかってしまうことがあるため、以下のものはその量を調整する必要があります。
また、病院で扱っている腎臓病用の特別なフードもあるので、どのような食事で治療を進めるかは、獣医師と相談するのが良いでしょう。

摂取量の調整が必要な栄養素
タンパク質

タンパク質に含まれる窒素は腎臓でろ過されることによって血液中から取り除かれるため、タンパク質を摂取し過ぎると腎臓に大きな負担をかけることになります。そのため、タンパク質の摂取量は調整する必要があります。

リン

腎機能が低下している犬は余分なリンを排出することができなくなり、どんどんと体内に蓄積されてしまいます。その蓄積によって腎不全を悪化させてしまうことがあるため、リンの摂取量も調整が必要となります。

ナトリウム

腎機能が低下している犬や心臓に疾患を抱えている犬にとって、ナトリウムの過剰な摂取は血圧を上げる要因となります。血圧が上がることで腎臓にも大きな負担をかけるため、ナトリウムの摂取量にも十分な注意が必要です。

方法3

サプリメントの投与

摂取量の調整が必要となるタンパク質やリンを吸着させるサプリメントによって、腎臓への負担を軽減させることもあります。

方法4

その他

透析によって老廃物の排出を促す治療もありますが、設備のある、ごく限られた動物病院での治療となります。

5.犬の慢性腎不全の予防法

犬の慢性腎不全の治療方法

慢性腎不全は脱水によって悪化するケースが多いため、水分をしっかりと摂取することが予防につながります。日頃からこまめに水を飲ませる、ウエットタイプのフードを取り入れるなど、十分な水分補給を心がけましょう。

また、腎臓に負担をかけないためには、毎日の食事内容も重要です。
犬のおやつや人間の食事などには塩分やタンパク質が多く含まれているため、腎臓に大きな負担がかかります。飼い主さんの食事を与えてしまったり、おやつを頻繁に与えるようなことは控えましょう。

もちろん、タンパク質などは健康維持には欠かせない栄養素なので、摂取量が少なすぎてもいけません。バランスの良い食生活が一番の予防法となります。

6.まとめ

犬の慢性腎不全は、目立った初期症状が見られないため早期発見が難しい病気。
だからこそ、飼い主さんの日常的な心掛けが非常に大切になります。
おしっこの色や量を日頃から気にかけることや、バランスの取れた食生活を習慣にしましょう。

また、少しでもいつもと違う様子があったら、早めに動物病院へ。
できる限りの早期発見・早期治療を目指しましょう。

監修いただいたのは…

2018年 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業
成城こばやし動物病院 勤務医
獣医師 高柳 かれん先生

数年前の「ペットブーム」を経て、現在ペットはブームではなく「大切な家族」として私たちに安らぎを与える存在となっています。 また新型コロナウィルスにより在宅する人が増えた今、新しくペットを迎え入れている家庭も多いように思います。 その一方で臨床の場に立っていると、ペットの扱い方や育て方、病気への知識不足が目立つように思います。言葉を話せないペットたちにとって1番近くにいる「家族の問診」はとても大切で、そこから病気を防ぐことや、早期発見できることも多くあるのです。
このような動物に関する基礎知識を、できるだけ多くの方にお届けするのが私の使命だと考え、様々な活動を通じてわかりやすく実践しやすい情報をお伝えしていけたらと思っています。

2018年 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業<br>成城こばやし動物病院 勤務医 獣医師 高柳 かれん先生

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