【専門家監修】ロシアン・ブルーの性格や飼い方のコツ、寿命、なりやすい病気まで全部紹介!
宝石のように光り輝くシルバーブルーの被毛をもつロシアン・ブルー。エメラルドグリーンの瞳、しなやかな体つきと相まって、どこか優雅さを感じさせます。出身はロシア北西部に位置するアルハンゲリスク一帯で、もともとは自然繁殖種と考えられています。
家族には愛情深く、遊び好きで、用心深くもある。そんなロシアン・ブルーをご紹介します。
1.ロシアン・ブルーの歴史
原産国:ロシア
ロシアン・ブルーの故郷は、ロシア北西部の北欧寄りに位置するアルハンゲリスク州であり、この厳寒の地で自然繁殖によって誕生した猫種であると信じられています。
アルハンゲリスクとは、「大天使の町」を意味することから、ロシアン・ブルーは「大天使猫(Archangel cat)」と呼ばれることもあります。
一方、ロシア皇帝が飼っていた猫の末裔であるとの説もありますが、定かではありません。1860年代頃、船乗りによってロシアン・ブルーがヨーロッパに持ち込まれたと考えられていますが、以降、海外でも知られるようになったものの、第二次世界大戦後にはその数が激減。
それを憂えたイギリスやスカンジナビアのブリーダーらがブルーのブリティッシュ・ショートヘアやシャムなどと交配を重ね、今日のロシアン・ブルーの姿となりました。
2.ロシアン・ブルーの特徴
なんと言ってもロシアン・ブルーの最大の特徴は、光り輝く銀色がかったブルーの毛色でしょう。猫種としての毛色は、このブルー一色のみです。厳密に言えば、明るめのブルーの毛色が基本で、毛の先端がシルバーになり、光の加減によっては風合いが違って見えることがあります。
そして、大きくて丸いエメラルドグリーンの眼。見ていると吸い込まれそうな輝きを放ち、毛色と相まって優雅さを感じさせる猫種です。
ロシアン・ブルーの容姿
ロシアン・ブルーは成猫時の体重が3kg~7kg程度の中型の猫です。猫の体形は6種に分類される中で、ロシアン・ブルーはフォーリンタイプに入り、全体的にスマートで、四肢と胴はやや長く、V字型の頭部に大きめの耳といった特徴をもっています。
当初はもっとがっしりした猫だったのが、大戦後に復興されてからは現在のスマートな体形に落ち着いたようです。北方の猫らしく被毛は短毛ながらとても密で、柔らかく、ベルベットのようなふかふかの手触りがあります。
ロシアン・ブルーの性格・気質
ロシアン・ブルーはやや人見知りなところもありますが、飼い主と一緒にいることを好み、愛情深く、物静かで賢い猫です。子どもや他のペットとも協調しやすいと言われる一方で、一人でいたがる時もあり、その辺は付かず離れず、バランスがとれているといったところでしょうか。
注意深く、慎重でもあり、それが時にそっけない、怖がりなどと見られることもあるかもしれません。また、変化を好まない傾向にあり、食事や遊びの時間など規則正しい生活を心がけたほうがよさそうです。
3.ロシアン・ブルーを迎える方法
ロシアン・ブルーを迎えるには、主にペットショップ、ブリーダー、動物保護団体・動物愛護センターなどのルートがありますが、その前に知っておきたいこともあります。
それを理解した上で、入手先を決めましょう。
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1.「動物の愛護及び管理に関する法律」により、販売者は対象となる動物を直接見せ、飼育方法などについて購入者と対面した上で文書を用いて説明しなければなりません。これを怠る販売者はNGと言わざるを得ません。
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2.2022年6月1日より、販売される犬猫にはマイクロチップ装着が義務化されました。猫を購入後(マイクロチップ装着済の猫を譲り受けた場合も同じ)は、飼い主さん自身の情報へと変更登録する必要があります。
ロシアン・ブルーの入手先
ペットショップで販売される猫は、契約ブリーダー、自社(自家)繁殖の他、多くが生体市場経由で仕入れられた子猫です。
現在、動愛法の改正により、生後56日(8週齢)に満たない子犬子猫は販売できなくなっているので(特例として天然記念物指定を受けている日本犬の場合は生後49日)、子猫の生年月日は確認するようにしましょう。
子猫を選ぶ際には、できれば親猫を見ることができると理想的ですが、ペットショップでは稀です。
真摯なブリーダーは特定の猫種にこだわりをもって繁殖しており、その猫種についての知識も豊富です。
子猫の価格については、ブリーダー登録サイトは別として、ブリーダーのホームページ上では公開していないことがあるので、直接問い合わせる必要があります。
予約をすれば見学も可。親猫や、子猫が育った環境を見られる点はプラスポイントです。
行き場のない猫はまだまだ多くおり、そうした猫を迎えるのも一つの選択肢です。この場合、子猫とは限らず、成猫や老猫もいます。
入手先としては動物保護団体や各自治体の動物愛護センターなどがありますが、里親になるには一人暮らしや65歳以上の人は不可、その自治体在住者のみなどそれぞれ条件が設けられていることがあるのでよく確認してください。
ロシアン・ブルーを迎えるときの費用相場は?
現在、子犬子猫の価格は以前に比べて大幅に高騰しています。したがって、決して安い買い物ではなく、ましてや一つの命を預かるわけですから、熟考の後、猫をお迎えください。
その結果、ロシアン・ブルーを迎えると決めた場合、おおむね以下の初期費用がかかります(商品に関しては一般的なものから少々リッチなものものまで含みます)。
ロシアン・ブルーを迎える場合の費用の目安
項目 |
費用の目安 |
ロシアン・ブルーの子猫の価格 |
16万円~ |
混合ワクチン(Felv含む) |
3,000円~1万円程度 |
猫用ベッド |
1,000円~5,000円程度 |
サークル・ケージ |
5,000円~1万5,000円程度 |
食器・水飲み・フード(ドライフード1袋)類 |
3,000円~8,000円程度 |
トイレ・トイレシート類 |
3,000円~7,000円程度 |
ブラシ・コーム・爪切り類 |
3,000円~6,000円程度 |
おもちゃ類 |
1,000円~2,000円程度 |
キャットタワー |
5,000円~2万円程度 |
合計 |
約2万5,000円~7万円程度+子猫の価格 |
※価格はあくまでも目安であり、販売者や子猫の状況、動物病院、商品などの条件によって変動します。
4.ロシアン・ブルーの飼育のポイント
ロシアン・ブルーはダブルコートの被毛をもっており、換毛期には抜け毛が多くなりますが、その時期に限らず、皮膚や被毛の健康を保つためにも週1~2回程度はブラッシングをしたいものです。
もちろん、耳や歯、爪などのグルーミングは必要になるので、子猫のうちから少しずつ慣らしておきましょう。また、ロシアン・ブルーは賢く、刺激を必要とするタイプなので、ゲーム性のある遊びなど取り入れてあげるとストレス発散にもなります。
加えて、身体能力も高く、ジャンプも得意です。ちょっとした隙間から脱走したりしないよう、脱走防止対策も忘れませんように。
5.ロシアン・ブルーのかかりやすい病気・ケガ
ロシアン・ブルーは健康的な猫種ですが、やはり気をつけたい病気やケガもあります。たとえば、糖尿病や腎臓疾患、尿石症、歯のトラブル、毛球症、脱走による事故など。
歯周病は歯だけの問題ではなく、進行すると歯周病菌の毒素が血流に乗って全身に回り、心臓疾患や腎臓疾患など他の病気に悪影響を与えてしまうことがあるので軽く考えることはできません。可能な限り歯磨きをするとともに、日々のお手入れのついでに歯や口の中のチェックもするようにしましょう。
若齢~成猫
子猫~若い猫では、以下のような病気・ケガには気をつけましょう。
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・ 事故・ケガ
特に若い猫では好奇心からちょっとした隙間から外に出てしまうこともある。また、誤飲にも注意を。
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・ 毛球症
毛づくろいの際に飲み込んでしまった毛が吐き出しも排泄もできない場合、最悪、腸閉塞を起こし、手術が必要になることがある。
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・ 熱中症
北方出身のロシアン・ブルーは暑さに弱いと言われる。特に子猫はまだ体温調節が十分にはできないため、暑い時期の熱中症には注意を。
成猫〜高齢猫
そして、成猫~高齢猫では、以下のような病気に注意が必要です。
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・ 尿石症
成分により、いくつか種類がある結石の中で、猫ではシュウ酸カルシウム結晶とストルバイト結晶が多いと言われる。
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・ 慢性腎臓病(慢性腎不全)
ウイルス感染や免疫疾患による腎炎、尿路閉塞、外傷、中毒などによって腎臓の機能が低下する腎臓疾患。老齢の猫での発症が多く、死亡率が高い。
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・ 糖尿病
通常、体には血糖値を一定に保つ機能があるが、遺伝や感染症、他の病気などに起因して慢性的に高血糖となってしまう病気。重度になると合併症や失明などのリスクがある。
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・ 関節トラブル
コーネル大学の猫保健センターによると、中年期~10歳以上の猫のほとんどが関節炎をもっているという研究結果もあるそう。
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・ 腫瘍・癌
高齢になるほど腫瘍・癌のリスクが高まる。皮膚腫瘍の場合、猫では半数以上が悪性と言われる。
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・ 認知症
食事やサプリメントで認知症予防を心がけるとともに、シニア期に入ったなら愛猫の行動にも注意を。
6.ロシアン・ブルーの平均的な寿命は?
ロシアン・ブルーの平均的な寿命は、国際猫協会(TICA)によると10歳~20歳程度。一方、一般社団法人ペットフード協会の「令和3年全国犬猫飼育実態調査」では、日本の猫の平均寿命は15.66歳となっています。
中には25歳まで生きる猫もいるようですが、ロシアン・ブルーの寿命には大きく幅があると言っていいでしょう。
7.まとめ
ロシアにおいて、ロシアン・ブルーは幸運の象徴であったといいます。ロシア皇帝は病気の我が子のために、悪霊を払うと信じてロシアン・ブルーを身近に置いたという話が残されており、神秘的な風貌が人々をそう信じさせたのかもしれません。
そう聞くと、すぐにでもロシアン・ブルーが欲しくなるかもしれませんが、猫は生き物。食事や健康管理など必須です。自分に十分飼育が可能かを考えて、猫をお迎えください。
愛情を注いだ分、きっと彼らはみなさんにとっての“幸運の象徴”になってくれることでしょう。
(文:犬もの文筆家&ドッグライター 大塚 良重)
※猫は生き物であるため、寿命や性格・気質、行動、健康度などには個体差があります。
監修いただいたのは…
東京農業大学 農学部動物科学科 動物行動学研究室 教授
内山 秀彦先生
麻布大学 動物応用科学専攻修了(博士)
ヒトと動物の関係学会 常任理事
主な専門は「ヒトと動物の関係学」。 特にアニマルセラピーによる癒やしのメカニズムや猫と人との関係について研究している。