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【獣医師監修】ポメラニアンの性格や飼い方のコツ、寿命、なりやすい病気まで全部紹介!

【獣医師監修】ポメラニアンの性格や飼い方のコツ、寿命、なりやすい病気まで全部紹介!

ポメラニアンはドイツ原産の小型スピッツ。ジャーマン・スピッツの小型化により誕生した犬で、ジャーマン・トイ・スピッツとは同犬種扱いをされたり、別犬種扱いをされたりと少々複雑な背景をもつ犬種です。

日本では昭和時代にブレイクして以来、安定した人気を誇りますが、そんなポメラニアンと暮らす際に知っておきたいポイントをご紹介します。

1.ポメラニアンの特徴や性格は?

最近、犬の行動特性は遺伝と関連するものの、犬種との関連はわずか9%にすぎないという研究結果が発表されました(※1)。

つまり、犬種から行動特性を予測するのは難しく、個々に違いがあるということ。
それは育て方や環境が犬の行動に大きく関係するということでもあるでしょう。

そして、行動は気質・性格とも関係します。

もちろん、遺伝に基づいた犬種に傾向的な気質や行動もあり、ポメラニアンの場合は明るく活発で、警戒心も併せもった犬と言われますが、その上で、どんな性格の犬になるのか、それは飼い主さんの育て方、愛犬への接し方がとても重要になるということだと思います。

ポメラニアンの歴史

ポメラニアンの原産国はドイツ。犬種名はドイツ北東部からポーランド北西部に広がるポメラニア地方に由来しています。
中央ヨーロッパではもっとも古い犬種と言われるジャーマン・スピッツの末裔であり、1900年代に現在のように小型化されました。

意外にもドイツ以外の国々で発展し、同国がポメラニアンを認めたのは1974年のことでした。

ポメラニアンの容姿は?

ポメラニアンの体高は18~24cm、体重は1.8~2.5kg程度。
スクエアでコンパクトな体形をしており、いかにも軽やかな歩き方をする小柄な犬で、ツンとした口先、はっきりとしたストップ、小さな耳はまさにスピッツタイプの犬であることを主張しています。

ふわふわの被毛は密なダブルコートで、手触りは柔らかく、たてがみのように見える首周り、胸、背中に背負うように毛が開立した尻尾は特に被毛が豊富です。

毛色もブラックやブラック&タン、オレンジ、クリーム、ホワイト、ブルー、チョコレート、ウルフ・セーブル、パーティ・カラーなど、単色からタンマーキングや差し毛、斑模様があるものまで彩り豊かです。

2.ポメラニアンを迎える方法

ポメラニアンを迎える方法

ポメラニアンを迎えるには、主にペットショップ、ブリーダー、動物保護団体・動物愛護センターなどのルートがありますが、その前に知っておきたいこともあります。
それを理解した上で、入手先を決めましょう。

  1. 1.「動物の愛護及び管理に関する法律」により、販売者は対象となる動物を直接見せ、飼育方法などについて購入者と対面した上で文書を用いて説明しなければなりません。

  2. 2.2022年6月1日より、販売される犬猫にはマイクロチップ装着が義務化されました。犬を購入後は、飼い主さんの連絡先などの情報を変更登録する必要があります。

詳しくはこちら⇒

環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室「令和4年6月1日から開始するマイクロチップ登録制度に関する飼い主の方向けQ&A」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/pickup/chip.html

ポメラニアンの入手先

入手先1

ペットショップでポメラニアンを探す

ペットショップで販売される犬は、契約ブリーダー、自社(自家)繁殖の他、多くが生体市場経由で仕入れられた子犬です。
現在、動愛法の改正により、生後56日(8週齢)に満たない子犬子猫は販売できなくなっているので、子犬の生年月日は確認するようにしましょう。

子犬を選ぶ際には、できれば親犬を見ることができると理想的ですが、ペットショップでは稀と言わざるを得ません。

入手先2

ブリーダーからポメラニアンを購入する

ブリーダーは特定の犬種にこだわりをもって繁殖しており、その犬種についての知識も豊富です。
子犬の価格については、ブリーダー登録サイトは別として、ブリーダーのホームページ上では公開していないケースが多いため、直接問い合わせる必要があります。

予約をすれば見学も可。親犬を見られる率が高い点はプラスポイントです。
なお、場合によっては子犬が産まれるまで数ヶ月待たなければならないこともあります。

入手先3

ポメラニアンの里親になる

行き場のない犬はまだまだ多くおり、そうした犬を迎えるのも一つの選択肢です。この場合、すでに成犬であることが多く、老犬である場合も珍しくありません。

入手先としては動物保護団体や各自治体の動物愛護センターなどがありますが、里親になるには一人暮らしや65歳以上の人は不可、その自治体在住者のみなどそれぞれ条件が設けられていることがあるのでよく確認してください。

犬は子犬から飼わなければならないということはありません。成犬でもしつけ直すことは可能です。何より、辛い思いをした分、人の愛情に飢えている犬も多いもの。時間をかけて気持ちが通じ合う一瞬が訪れた時の嬉しさは代えがたい宝となることでしょう。

ポメラニアンと暮らしたいと思った時、保護犬の里親になる選択肢も考えてみてはいかがでしょうか。

ポメラニアンを迎えるときの費用相場は?

現在、子犬の価格は以前に比べて大幅に高騰しています。したがって、決して安い買い物ではなく、ましてや一つの命を預かるわけですから、熟考の後、犬をお迎えください。
その結果、ポメラニアンを迎えると決めた場合、おおむね以下の初期費用がかかります(商品に関しては一般的なものから少々リッチなものまで含みます)。

ポメラニアンを迎える場合の費用の目安

項目 費用の目安
ポメラニアンの子犬の価格 28万円~
狂犬病予防注射 3,000円~5,000円程度
注射済票 500円程度
犬の登録料 3,000円
混合ワクチン(5種~10種) 5,000円~1万円程度(※2)
犬用ベッド 3,000円~8,000円程度
サークル・ケージ 7,000円~3万円程度
食器・水飲み・フード(ドライフード1袋)類 4,000円~8,000円程度
トイレ・トイレシート類 3,000円~7,000円程度
ブラシ・コーム・爪切り類 3,000円~8,000円程度
首輪・リード類 4,000円~1万4,000円程度
おもちゃ類 1,000円~3,000円程度
合計 約4~10万円程度+子犬の価格

※価格はあくまでも目安であり、販売者や子犬の状況、動物病院、商品などの条件によって変動します。
※狂犬病予防法により、犬を手に入れてから、もしくは生後91日以上たってから30日以内に狂犬病予防注射を受けることが義務付けられています。ただし、病気や高齢など事情があって接種できない場合は、届け出をすることで免除が可能となります。接種場所は自治体による集合注射と動物病院とがあり、費用に若干の違いがあります。
※鑑札と注射済票は犬の身につけることが法的に義務づけられていますが、現在、注射済票に関しては各自治体でいろいろなデザインがあります。
⇒厚生労働省「犬の鑑札、注射済票について」https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/10.html

3.ポメラニアンの飼育のポイント

ポメラニアンの飼育のポイント

ポメラニアンに限らず、子犬にとって大事なことの一つが社会化です。
生後3週齢~12週齢にかけての「社会化期」にある子犬は好奇心が旺盛で、いろいろな物事を吸収しながら犬として生きていく上での基礎を築いていきます。

特にこの時期には子犬にとってトラウマにならない範囲で、人や物、音、環境などいろいろなものに慣らすようにしましょう。

その後は警戒心が勝ってきますが、同じく子犬の成長には大事な時期です。引き続き社会化に努めましょう。

4.ポメラニアンのかかりやすい病気・ケガ

ポメラニアンは健康的な犬ですが、やはり気をつけたい病気やケガもあります。
たとえば、他犬種に比べて骨がやや華奢なポメラニアンでは、骨折に注意が必要です。高いところから飛び降りた、抱っこしていて落とした、滑って壁や家具に激突したなど骨折の原因になり得るので、事故防止を心がけましょう。

また、眼疾患や皮膚疾患、内分泌疾患、歯周病などにも気をつけたいものです。
ことポメラニアンは小さな顎に歯が密集して生えている分、歯垢・歯石がつきやすく、歯周病のリスクが高いので、歯のケアは大事となります。

若齢~成犬

子犬~若い犬では、特に以下のような病気・ケガには気をつけましょう。

  • ・ 低血糖

    糖分が著しく低下することで、元気喪失や痙攣などが見られる。

  • ・ 流涙症

    鼻涙管が詰まることで涙が溢れ出てしまう病気。

  • ・ 膝蓋骨脱臼

    膝のお皿の骨(膝蓋骨)が大腿骨の溝から外れてしまう関節疾患。

  • ・ レッグペルテス病(大腿骨頭壊死症)

    大腿骨頭への血行障害により、大腿骨頭の変形や壊死が起こる。

  • ・ 水頭症

    脳の脳室内に脳脊髄液が溜まり、活動や学習能力の低下が見られる。

  • ・ 大泉門開存

    子犬が産まれてくる時に、通常は閉じている大泉門(頭蓋骨の頭頂部)が開いたままの状態。

  • ・ アロペシアX(脱毛症X/ポメラニアン脱毛症/成長ホルモン反応性皮膚症)

    ポメラニアンによく見られる原因不明の脱毛症。

  • ・ 骨折

    骨折は極力早いうちに治療するのが大事。

  • ・ 熱中症

    小型犬は地面からの反射熱を受けやすい上、子犬は熱中症になりやすい。

成犬〜高齢犬

そして、成犬~高齢犬では、以下のような病気に注意が必要です。

  • ・ 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

    副腎皮質ホルモンの一つであるコルチゾールが過剰に分泌される内分泌疾患。

  • ・ 気管虚脱

    気管が何らかの原因により、潰れてしまう病気。

  • ・ 歯周病

    歯周病菌の毒素が血流に乗り、他の病気に悪影響を与えてしまうことがある。

  • ・ 僧帽弁閉鎖不全症

    心臓の左心房と左心室の間にある僧帽弁の変性により、血液が逆流する心臓疾患。

  • ・ 腫瘍・癌

    高齢になるほど腫瘍・癌のリスクが高まる。

  • ・ 認知症

    認知症に関連する行動が12歳の犬で53%、13歳で70%、15歳では86%に一つ以上見られたという調査報告もある(※3)。

  • ・ 熱中症

    小型犬は地面からの反射熱を受けやすい上、高齢犬は熱中症になりやすい。

⇒【獣医師監修】犬の熱中症は危険!応急処置と危険な状況別の対処法

https://www.peppynet.com/library/archive/detail/645

⇒【獣医師監修】犬の外耳炎の症状とは?原因や治療方法を解説

https://www.peppynet.com/library/archive/detail/879

5.ポメラニアンの平均的な寿命は?

ポメラニアンの平均的な寿命は?

ポメラニアンの平均寿命は12歳~16歳程度と言われます。

参考までに、東京大学の研究チームがペット霊園のデータを使用して行った日本の犬の平均寿命に関する調査(2018年発表)では、ポメラニアンでの平均寿命は14.0歳、死亡時の最高齢は20.7歳でした(※4)。

6.まとめ

ポメラニアンは小型で愛らしく、家庭犬向きの犬種です。しかし一方で、遠い祖先はポメラニア地方で牧畜犬や警備犬として働いていた歴史をもっているだけに、きびきびとした動きや凛とした側面ももちあわせています。

膝蓋骨脱臼や心臓疾患など気をつけたい病気もありますが、近年、犬でも注目されているのが健康寿命、未病対策。長寿傾向にあるポメラニアンのこと、食事や運動、ストレス回避を心がけるとともに、定期的に健康診断を受けることで、少しでも健やかな生活を心がけたいものですね。

(文:犬もの文筆家&ドッグライター 大塚 良重)

※犬は生き物であるため、寿命や性格・気質、行動、健康度など個体差があります。

【参照元】
(※1) ELINOR K. KARLSSON et al. Ancestry-inclusive dog genomics challenges popular breed stereotypes. SCIENCE•29 Apr 2022•Vol 376, Issuehttps://www.science.org/doi/10.1126/science.abk0639#tab-citations
(※2) 公益社団法人 日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査及び飼育者意識調査調査結果(平成27年)」http://nichiju.lin.gr.jp/small/ryokin_pdf/h27.pdf
(※3) 水越美奈、松本千穂、脇坂真美「高齢犬の行動の変化に対するアンケート調査」(動物臨床医学26[3] 119-125, 2017)https://www.jstage.jst.go.jp/article/dobutsurinshoigaku/26/3/26_119/_pdf/-char/ja
(※4) Inoue M, Kwan NCL, Sugiura K. Estimating the life expectancy of companion dogs in Japan using pet cemetery data. J Vet Med Sci. 2018 Jul 18;80(7):1153-1158. doi: 10.1292/jvms.17-0384. Epub 2018 May 24. PMID: 29798968; PMCID: PMC6068313. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29798968/

監修いただいたのは…

2018年 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業
成城こばやし動物病院 勤務医
獣医師 高柳 かれん先生

数年前の「ペットブーム」を経て、現在ペットはブームではなく「大切な家族」として私たちに安らぎを与える存在となっています。また新型コロナウィルスにより在宅する人が増えた今、新しくペットを迎え入れている家庭も多いように思います。
その一方で臨床の場に立っていると、ペットの扱い方や育て方、病気への知識不足が目立つように思います。言葉を話せないペットたちにとって1番近くにいる「家族の問診」はとても大切で、そこから病気を防ぐことや、早期発見できることも多くあるのです。
このような動物に関する基礎知識を、できるだけ多くの方にお届けするのが私の使命だと考え、様々な活動を通じてわかりやすく実践しやすい情報をお伝えしていけたらと思っています。

成城こばやし動物病院 獣医師 高柳 かれん先生

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