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【獣医師監修】猫の妊娠兆候とは?出産に向けての準備とトラブル対処法をご紹介

猫の発情期の特徴や時期・期間・対策について獣医師が解説!

愛猫の様子がなんだかおかしい――。乳首がピンク色になり、乳房が膨らんできた。おなかもふくらんできて攻撃的になったり、そわそわと落ち着かない様子がつづいている。そのような状態が見られた場合、もしかすると妊娠しているかもしれません。

本記事では猫が妊娠した場合、どのような兆候が出るのか。また、その場合出産に向けてどのように準備を進めれば良いのかをご紹介します。

1.猫の繁殖を望まない場合は不妊去勢手術を

発情期に見られるメス猫の行動とその期間・対策は?

何故猫は、特に繁殖力が強い動物と言われるのか?猫の妊娠期間や一度に生む子猫の数は?まずは猫の妊娠に関する基礎知識からご紹介します。

猫の妊娠のしやすさについて

犬や人をはじめとした哺乳類の多くは、メスが排卵する前後(わずか数日)に生殖活動をした場合、運よく受精卵が着床すれば妊娠する“自然排卵動物”です。
それに対し、猫は哺乳類の中では珍しい“交尾排卵動物”です。交尾した刺激で排卵するので卵子と精子が出会いやすく、交尾すれば高確率で妊娠すると言われています。
猫は単独行動を好む動物で、普段はオスとメスも別々の場所に暮らしているため、交尾の機会が少なくても確実に繁殖していけるように、このようなしくみになっていると考えられています。
猫の発情期は日照時間が長くなる2~4月頃から夏頃までと言われていますが(※日本の場合)、人口光の明るさも猫の発情期に影響を与えます。そのため飼い猫の場合、季節問わず発情を繰り返すことも少なくなく、栄養状態が良いなどの条件が揃えば一年中いつでも妊娠することができます。

オスの性成熟サインとしては“尿スプレー”が有名。鼻の高さぐらいの対象物に向かって発射します。交尾活動に大切なテリトリーをマーキングでアピールするためです。メスの発情サインは確信できるサインが少ないものの、ロードシスと言われるオスを受け入れるための姿勢や、頭や首を執拗にこすりつけてくる“こすりつけ行動”などの特徴的な行動があります。
一点注意点としては、猫は犬のような生理出血が起こらないことがほとんどなので「おしりから出血がないので、まだ発情は来ていないはず」と判断しないようにしましょう。また、オス、メスどちらも、発情中は外に出たがるようになるので注意が必要です。脱走しないように戸締り等はいつも以上に気をつけるようにしてください。

また猫は一度に複数の卵子(5~6個)を排卵する“多排卵動物”でもあります。複数の雄猫と交尾をおこなった場合、異なる父親の子どもを同時に妊娠することがありますが、これは“多排卵動物”ではよく見られることです。

<関連記事>猫の発情期の特徴や時期・期間・対策について獣医師が解説! https://www.peppynet.com/library/archive/detail/843

猫の妊娠期間について

猫の妊娠期間は約2ヶ月、59~65日ほどです。一回の出産で3~5頭を出産します。その約2ヶ月後に子猫が離乳すると、次の妊娠が可能となります。
子猫も産まれてから6ヶ月ほど経つと妊娠が可能となるので、繁殖サイクルが非常に速く、妊娠率・出産数の高い動物ということが分かります。

猫が排卵しても着床しなかった場合、稀に“偽妊娠”することもあります。実際には妊娠していないのですが、乳腺が張って母乳が出たり、食欲がなくなったりします。
病気ではないので、様子を見つつ1ヶ月ほどすれば、再び発情期に入ることがほとんどです。食欲不振がひどい場合などは病院に連れていくことをおすすめします。

<出典>Beaver, Bonnie V. Feline Behavior-E-Book. Elsevier Health Sciences, 2003.

野良猫の場合の繁殖

野良猫の場合、通常、自分のなわばりに他の猫が入ろうとすると追い出そうとします。そのため、オスとメスは別々の場所に暮らしていて交尾の機会も多くはありません。しかし、もし人間が来て定期的に餌をあげる、ゴミ捨て場に食べ残しが多く残っているなど、餌が潤沢にある場所があれば、オスとメスが同じ場所で暮らすようになり、そこで繁殖します。猫がなわばりを守ろうとするのは自分の餌を守るためであり、餌が豊富であれば他の猫がいても気にせず共存するようになるからです。

今は猫の不妊や去勢を推進するNPOなどが増えたことで、昔に比べれば野良猫の数も減っているものの、人間が定期的に餌をやる場を設けてしまえば、そこで繁殖します。飼い主のいない猫の増加による糞尿などの被害を防ぐためにも、殺処分されてしまう不幸な命を増やさないためにも「可愛いから」という理由で、野良猫に餌をあげないようにしましょう。

2.妊娠中の猫の見分け方

では、猫が妊娠した場合、どのような兆候が見られるのでしょうか。
分かりやすいのが乳首や乳房の変化です。乳首がピンク色に変化し、乳房も膨らんできます。妊娠初期に食の好みが変化する場合もあるようですが、ひどいつわりなどは見られないことがほとんどで、むしろ食欲の大幅な増進で妊娠に気づく飼い主さんが少なくないようです。

妊娠から30日ほど経つとお腹のふくらみが目立つようになり、見た目で妊娠していることが判断できるようになります。このあたりから食欲が増す反面、活動量は減り、攻撃的になることも。妊娠から50日ほどを過ぎたあたりからは、胎児が活発的になり胎動を感じられることもあります。

3.猫が妊娠した際の対処方法

発情期に見られるメス猫の行動とその期間・対策は?

愛猫が妊娠したかも?と思ったら、まずは動物病院で診察を受けることをおすすめします。

猫は安産と言われ、命にかかわるような難産になるケースは稀だとされていますが、妊娠中の注意点などきちんとアドバイスを受けるためにも、一度早い段階で動物病院に足を運ぶのが良いでしょう。

病院では、まずは妊娠しているかどうかを調べるためにエコー検査を行います。交配から25日以上経った頃だと確認ができ、35~40日以降だとレントゲン検査で胎児の数を正確に把握することが可能です。胎内で元気に心臓が動いているかどうかなどを確認することもできます。

事前に胎児の数を把握しておくことで、お腹の中に実はもう一匹残っていたのに放置してしまったなどのトラブルを未然に防ぐことができます。

4.猫の出産に向けて準備するもの

出産が近づいたら、ダンボールにタオルやペットシーツ、毛布を敷いた“産箱”を用意します。出産時の出血などの汚れに対応するだけでなく、安心して産める環境を整えるため です。

また妊娠中は、お腹の子どもを育てるために栄養が必要です。与えすぎて太りすぎると難産の原因になるので量には注意ください。かかりつけの動物病院に栄養がしっかりととれるキャットフードをおすすめいただくのも良いでしょう。

出産当日の照明は暗めの方が安心するようです。また、出産中の母猫は人間への警戒心が高まっているため、目線を遮るパーテーションなどもあればより良いでしょう。 あとは、清潔なタオルとハサミ、木綿糸、お湯などを用意して陣痛を待ちます。事前にかかりつけの病院に連絡を入れ、万が一のときに受診できる夜間病院が家の近くにあるかどうか把握しておくと安心です。

また出産前から子猫を飼う環境を整え、家で飼えない場合には、事前に里親を探しておく必要があります。

5.猫の出産時によくあるトラブルと対処方法

発情期に見られるメス猫の行動とその期間・対策は?

安産といわれる猫ですが、出産時にトラブルが起きることもあります。
たとえば強い陣痛がはじまってから20~30分以上経っても子猫が出てこない場合は、産道の途中で引っかかってしまっているケースも考えられます。そのような場合には、事前に連絡しておいた獣医師に電話をして指示を仰ぎましょう。
その他、一度体温が下がったあと、平熱に戻ったのにもかかわらず分娩兆候が見られなかったり、陰門から茶色の排出液が出たのに分娩がなかったり、2~3時間以上微弱な陣痛が続いたりした場合にも同様の対応を。早めの受診をおすすめします。

また無事出産を終えたあとにも注意が必要です。通常出産後は、母猫が子猫を包んでいる羊膜を破り、顔や体を舐めるなどのお世話をしますが、お世話をしない母猫もいます。その場合はすぐに動物病院に電話をして指示を仰ぐようにしてください。飼い主が子猫にかかわりすぎると、母猫が子猫に気概を加える、完全に育児をしなくなるといった二次トラブルが発生するので対応に注意が必要です。

母猫がお世話をしても、子猫が全く動かなかったり、鳴き声をあげなかったりした場合のみ、母親から子猫を預かりましょう。その場合には子猫をやさしく両手で持ち、子猫の鼻や口から羊水が出るように軽く振ってください。そのあとタオルなどを用いて身体をこすり、動いたり、鳴き声をあげたりしたら母猫のところに戻して大丈夫です。

6.猫の繁殖を望まない場合は不妊去勢手術を

発情期に見られるメス猫の行動とその期間・対策は?

繁殖を望まない場合には、不妊手術を行うことをおすすめします。
望まない妊娠を防ぐことは、不幸な命を産まないことにつながります。
また、不妊手術を受けることで、猫の乳腺にできる悪性のガンを予防することができます。乳腺ガンは高確率で肺にも転移する、猫の天敵。不妊手術を6ヶ月齢前に受けることで91%、7~12ヶ月齢で86%、13~24ヶ月齢で11%も乳がんの発生率が低下することが報告されています。なるべく早期に避妊手術を受けることが、効果的な予防につながります。

7.まとめ

以上、本記事では愛猫の様子がいつもと違ったらチェックしたい猫の妊娠兆候、出産に向けての準備とトラブル対処法について紹介しました。
愛猫の様子に少しでも異変を感じたなら、迷わず獣医師の指示を仰ぐことが、飼い猫の幸せにつながります。

もし繁殖を計画している場合は、まず繁殖経験のあるブリーダーや獣医師に相談し、出産のリスクや出産後の注意点を理解し、生まれてくる子猫を責任持って飼育できるかを十分に検討した上で判断しましょう。

監修いただいたのは…

猫専門病院 Tokyo Cat Specialists 院長
獣医師 山本 宗伸先生

猫専門病院 Tokyo Cat Specialists
(https://tokyocatspecialists.jp/clinic/) 院長。
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫に魅了され、獣医学の道へ。
都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat
Specialistsで研修を積む。国際猫医学会ISFM、日本猫医学会JSFM所属。

ごんた動物病院 獣医師 新山 則子先生

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