猫の発情期の特徴や時期・期間・対策について獣医師が解説!
突然甘い声で鳴き出したり、トイレ以外でおしっこをしたり。いつもとは違う愛猫の行動に「どうすればいいの?」ととまどってしまう飼い主さんは少なくないでしょう。
猫の発情期は年1回だけではなく、その期間も7日から10日と続きます。発情期は自然な行動ですが、近隣トラブルに発展する可能性も少なくありません。
発情期が飼い主さんのストレスにならないよう、どんな対処が必要なのかチェックしていきましょう。
突然甘い声で鳴き出したり、トイレ以外でおしっこをしたり。いつもとは違う愛猫の行動に「どうすればいいの?」ととまどってしまう飼い主さんは少なくないでしょう。
猫の発情期は年1回だけではなく、その期間も7日から10日と続きます。発情期は自然な行動ですが、近隣トラブルに発展する可能性も少なくありません。
発情期が飼い主さんのストレスにならないよう、どんな対処が必要なのかチェックしていきましょう。
目次
発情前期
発情期
発情後期
発情休止期
大声で鳴く
スプレーする
外に出たがる
攻撃的になる
不妊手術のメリット
猫は、子育てのしやすい「春」と「晩夏から初秋にかけての時期」に発情期を迎えます。
季節性多発情繁殖動物と呼ばれ、発情期が訪れるのは年2、3回。メス猫は1回の繁殖期間中に何度か発情し、呼応するようにオス猫が発情します。その期間は、短くて4日、長くて20日、平均7日から10日程を想定しておくと良いでしょう。
期間中、メス猫は「発情前期」「発情期」「発情後期」「発情休止期」の周期で発情を繰り返しますが、オス猫に周期はありません。発情したメス猫の声やフェロモンに触発されて発情し、「大きな声で鳴く」「トイレ以外の場所でおしっこをする」「脱走しようとする」などの行動が見られるようになります。
メス猫の発情は栄養状態や健康状態といった体調に左右されます。
また、日照時間が1日12時間、13時間を越えると発情しやすくなるという説も。
室内飼育の場合は室内照明によって延長してしまい、冬に発情した事例も報告されています。
メス猫は一般的に、生後6か月齢から12か月齢で性的に成熟し、1回目の発情期(初回発情)を迎えます。
現在の猫は発育状態が良いため、生後4か月齢で発情期がくる場合も。さらに、短毛種は早い傾向、長毛種は遅い傾向があり、特にペルシャ猫は1.5歳以上で初めての発情が来ることもあります。初回発情を迎える猫の平均体重は2.3~3.2kg。成猫の8割程にあたります。体が完全に成長していなくても発情は訪れますが、初回は体が未熟なので交配は避けた方が良いでしょう。
一方、オス猫の性成熟はメス猫に比較して遅く、生後7か月齢~9か月齢頃、精巣内に精子が作られます。
オス猫は単独で発情することはありません。メス猫の声や匂いに反応して発情すると、大声で鳴いたり、外に出たがったりするようになるでしょう。
外出させるとメス猫をめぐって他のオス猫とけんかを繰り広げることもあるので、注意が必要です。
メス猫の発情周期は「繁殖季節」と「非繁殖季節」にわかれ、繁殖季節中に妊娠や偽妊娠を起こさなければ「発情前期」「発情期」「発情後期」のサイクルを繰り返します。
発情中の姿が愛らしいと避妊を選択されない方もいらっしゃいますが、近隣への配慮や愛猫のストレスを考えて、避妊を希望される飼い主さんの方が少なくありません。
発情期の行動と対策を知り、じっくりと検討しましょう。
発情前期
活動的になり、「飼い主さんに甘えてすり寄ってくる」「首や頭をこすり付ける」という行動が多くなるでしょう。
この時点で、オスを許容することはありません。排尿回数が増え、トイレのしつけが済んでいてもトイレ以外で排尿するケースがあります。
犬と異なり、陰部の腫大や乳腺のふくらみなど外部から見た肉体的な徴候はほとんどありません。
期間は通常1日程ですが、もう少し続くことを想定しておきましょう。
食欲が落ちてしまう子や粗相をしてしまう子もいますが、発情に伴う症状ですので避妊によって治まります。
発情前
発情前期の動作が活発になり、ワォワォと吠えたり、巻き舌でグルゥゥゥンと鳴いたり、特徴的な声で鳴くようになります。「飼い主さんの足に体を巻きつけて甘える」「色っぽく腰をくねらせる」「床に転がってもだえるようなしぐさをする」という子もいるでしょう。
尾の付け根あたりを優しく触ると、伏せた状態で腰を少し高くし、尾を外巻きにして、足踏みするといったディスプレイ(ロードーシス)が見られるようになります。
この頃にはオスのマウンティングを許すようになります。7日から10日程続きますが、短くて4日、長くて20日程度。期間中、メス猫は外に出たがるので室内猫は脱走に注意してください。
犬と違い、猫の発情は出血がまったく見られません。陰部から出血している場合は膣や子宮、膀胱といった泌尿生殖器の病気の可能性が高いので、すぐに動物病院で診察を受けましょう。
発情後期
発情期に続いて発情後期がやってきます。この期間中、猫はまったく発情行動を示しません。発情期に交尾しなかった場合、交尾しても排卵が起こらなかった場合には約7日間、この時期が続きます。
この間に、卵巣で新たな卵胞が発育して、再び発情前期に移行していきます。
発情休止期
オスと複数回交尾すると排卵が起こり、黄体が形成されます。
排卵しても受精が行われなかった場合、黄体は40日から50日で萎縮・退行していきます。この状態を偽妊娠といいます。
時には交尾しなくても排卵し、偽妊娠の状態になることも。犬と異なり、お腹がふくらむ、乳腺が発達するという徴候はありません。
無事に妊娠すれば、黄体は赤ちゃんを育てるために長く存続し、約2か月後にかわいい子猫が生まれます。
オス猫には、メス猫のような準備期間がありません。
体が成熟していればいつでも交尾が可能。発情したメス猫の声や匂いに誘発されると、大声で鳴き出したり、外に出たがったりという行動が見られるようになります。
大声で鳴く
恐らく1度は、赤ちゃんのような猫の鳴き声を聞いたことがあるでしょう。
発情期の猫は、大きな声で昼夜問わずに自分の存在をアピールします。近隣トラブルを防ぐため、事前に防音対策をしておきましょう。
スプレーする
スプレーとは、やや腰を高くし、尾をピンと垂直にして立ち、軽く身震いしながら1~2mlほどの尿を壁などに向けて発射する行動です。
存在とテリトリーを誇示し、メス猫を招き寄せるための行動だといわれており、尿マーキングとも呼ばれています。
縄張りの通り道、別の猫による縄張りの境界部分、扉の周囲、玄関先、新しい家具は要注意。スプレーのニオイはなかなか取れません。少しでもこのニオイが残っていると、何度もするようになるでしょう。
しっかりとお湯で洗ったり、酵素系の漂白剤で洗浄したりして、消臭する必要があります。
スプレー行動は去勢によって約90%がなくなりますが、残り10%は環境の見直しやストレスの確認が必要です。多頭飼育で個々の縄張りが少ない場合、引っ越しでストレスがかかった場合は要注意。なかには治療が必要な場合もありますので、環境改善で治らない場合は獣医師にご相談ください。
外に出たがる
発情するとオス猫はそわそわと落ち着がなくなり、外に出たがるようになります。
しかし、発情期のオスを外に出してしまうとご近所に排泄したり、メス猫を妊娠させたりと近隣トラブルに発展しやすく、オス猫とのけんかで治療法のない感染症を受けてくる可能性も少なくありません。
窓や玄関には脱走防止柵を付けて、脱走を防ぎましょう。
攻撃的になる
繁殖期を迎えると、オス猫は攻撃的になる傾向があります。猫同士でけんかした傷は化膿しやすく、再発しやすいので、抗生剤の投与だけでなく傷口の洗浄が必要です。傷だけなら治りますが、治療法のない感染症にかかると手の打ちようがありません。
けんかを防ぐためにも、発情期の猫は外に出さないようにしましょう。
発情期に起こるさまざまな問題をなくすには避妊・去勢手術という方法が有効です。
しかし、手術をするかどうかで悩まない飼い主さんはいないでしょう。ここでは不妊手術のメリットについてご紹介します。
1つ目は、発情時のストレスによる不調がなくなること。
人の生理と同様、猫も発情によって体調や食欲が不安定になります。しかし、不妊手術によって一定の元気を保てるようになるでしょう。
2つ目は、発情時の大きな声や生殖器の病気がなくなること。
乳腺腫瘍の発生率も減少します。
3つ目は、スプレー行動がなくなる可能性が高いこと。
メス猫を取り合う必要がないので、オス猫同士のけんかも減少するでしょう。交尾がなくなり、けんかも減少すれば、治療法がない感染症から愛猫を守ることができます。
そして、何よりも望まない妊娠を避けることができます。
猫は交尾の刺激によって排卵するため、交尾をするとほぼ100%妊娠するといわれています。猫1匹から最大8匹の子猫が生まれるので、避妊をせずに繁殖し続けてしまうとあっという間に増加。里親を見つけられなければ、殺処分になりかねません。
望まない妊娠を防ぐことは不幸な命を救うことでもあります。
大声で鳴いたり、スプレーしたり。どんなにおとなしい猫でも発情期は変わります。
こうした行動を抑えるうえで、不妊手術はとても効果的です。
しかし、麻酔のリスクや体への負担などデメリットもゼロではありません。愛猫と飼い主さんにとってどのような方法が最善なのか、かかりつけの獣医師に相談してみましょう。
不安な場合は、セカンドオピニオンを求めても良いと思います。不妊手術のメリットとデメリットを理解したうえで、発情期に備えてください。
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監修いただいたのは…
ごんた動物病院
獣医師 新山 則子先生
ペットと飼い主様が幸せに暮らしていくために、病気の予防や治療だけでなく、ペットにとってストレスのない快適な環境やお手入れについても情報提供する新山先生。
おうちでは犬2頭、猫1頭と暮らすことから、獣医師としてだけでなく、ペットと暮らす家族としても、ペットとそのご家族の気持ちに寄り添った診察を心がけている。