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私の町のペットとの暮らしをもっと豊かに!もっと楽しく!

写真:浜田一男

ボーダーライン・オレンジドット

犬がいる小学校
動物介在教育で育む、「やさしい心」

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突拍子もないアイデアに、周囲は冗談だと思っていた

教え子の一言がきっかけで、吉田先生が動物介在教育(以下AAE)を学校に取り入れようと考えたのは2001年のこと。
当時、吉田先生自身が犬を飼っていたこともあり、AAEが子どもたちにもたらす効果は先生の中で明確化されていました。しかし学校で提案しても、誰も本気で取り合ってはくれません。みな冗談だと思っていたのです。 「実は提案した僕自身も、AAEの具現化は、かなり難しいと思っていました。」
まず犬の世話を誰がして、どんな犬を選ぶのか。咬傷事故があった場合どうするのか。アレルギー児童への対策。飼育費用の負担。しつけの問題など、数え上げればきりがありません。 中でも保護者への理解をどう得るのかが最大の難関でした。それでも犬の存在は子どもたちに絶対にプラスになるはず―。 吉田先生は自分の信念を貫くため、AAEに関しての勉強を一から開始。提案から一年以上かけて、学校関係者や保護者に丁寧に説明と説得を繰り返し、ようやく小学校でのAAE活動をスタートさせることができたのです。

はじめての学校犬・バディ

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2003年5月。新緑のまぶしい季節、初めての学校犬が立教女学院小学校にやってきました。作業犬としての性質を備えたエアデールテリアのメスで、名前はバディ(仲間という意味)。 学校犬というと、学校で飼育されている犬と思われがちですが、バディはれっきとした吉田先生の家族です。学校がある日は先生と一緒に登校し、先生が受け持つ聖書の授業に同行。そして学校が終わると先生と一緒に自宅に帰ります。 学校ではバディ専用の部屋が職員室の隣に用意され、授業の合間や休み時間はそこでゆっくりと過ごせるようになっています。バディの世話をするのはバディ・ウォーカーと呼ばれる6年生の児童たち。
散歩に排泄物の後始末、給餌のすべてをバディ・ウォーカーたちが交替で行います。 やがてバディの世話を経て、子どもたちの心の中に、大きな「気づき」が生まれました。命を預かる「責任感」そして、誰かを愛しいと思える「やさしさ」です。 大人たちから「愛情を与えられる側」だった子どもたちが「愛情を与える側」に立ち、「面倒を見てもらう側」から「面倒を見る側」になったのです。 バディと触れ合うことで、子どもたちは誰に教えられるでもなく、他を思いやり、誰かを守りたい、大切にしたいと、素直に思えるようになるのでした。

バディがくれた絆

「学校が楽しい。」「バディに会えるのがうれしい。」子どもたちの笑顔と思いが保護者の中に広がるのに時間はかかりませんでした。 やがて、保護者の多くが協力を申し出てくれるようになり、バディの「健康診断」「病気予防」「診察」は獣医師の保護者が、バディの「トリミング」はトリマーの保護者が、そのほか様々な手伝いに多くの保護者が名乗りを上げ、ボランティアでAAE活動に参加してくれるようになったのです。
吉田先生の大きな覚悟と決意で始まったAAEはバディという犬を通して、子どもだけではなく、保護者や学校関係者、みんなの心をひとつにしていきました。

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次世代へと、AAEのバトンをつなぐ

バディが5歳になったころ、吉田先生はバディの後継犬のことを真剣に考えるようになりました。 こうして誕生したのが、バディが6歳の時に産んだ娘、リンク(絆)です。 吉田先生は生後一週間のリンクと兄弟犬3匹を連れて、学校に通うことになりました。 小さな、小さな子犬と一緒に登校したバディかあさんは、ここでも堂々とした母の「愛情」と「強さ」を子どもたちに示してくれました。
「6年生のあるバディ・ウォーカーの子が、子犬の世話をするバディを見て〝お母さんって大変なんだね〟と、作文に書いたことがありました。 バディのお母さんぶりを自分のお母さんの姿に重ね合わせたようです。その子は母親に対して反抗期の真っただ中だったのですが、バディのおかげで、母親との関係がぐんと良好になりました。 このことからもわかるとおり、バディが介在する教育は、児童自身が自ら気づき、考え、感じ取り、行動する〝気づき教育〟なんです。自ら気づき、行動するので、児童たちにとっても、やらされているという感覚はまったくありません。」

学校犬がいる日常をつくり、つなげていく!

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2015年1月26日。多くの子どもたちや保護者に愛されたバディは、静かに眠るように息を引き取りました。その後、娘のリンクも、バディの後を追うように天国へ―。
現在はイングリッシュセッターのウィルとジャーマンポインターミックスのブレス、そしてバディの姪っ子にあたるエアデールテリアのベローナとラブラドール・レトリーバーのクレアの4頭が学校犬として吉田先生と一緒に元気に登校しています。
「AAEは犬がただ学校にいればいいというものではありません。まず最初に実施できる環境が整っているか。その上で周囲の理解を得ることが大切です。そして何より〝子どもたちのためになる〟という確信が持てるかどうか。保護者と学校が〝子どものためにやろう〟と、一体となれる空気が必要です。」
犬の力を借りて、子どもたちが本来持っている「やさしさ」を引き出し、命を見つめることで、「愛情」「責任」「義務」「協調」そして時に「譲歩」することを学ぶ―。
学校犬のパイオニア、バディなきあとも、吉田先生の思いは後継犬と共に、未来につながっていきます。

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バディ・ウォーカーとバディの後継犬たち(左からクレア、ベローナ、ウィル、ブレス)

(PEPPY2017年秋冬号掲載)

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