犬の「尿石症」
尿の中のミネラル分がやがて体内で石となり、さまざまな症状を引き起こす尿石症。
愛犬の体の中に石が?と考えると、とても心配ですよね。
そもそも尿石症とはどのような病気なのか。また、その原因や予防方法をご紹介します。
尿の中のミネラル分がやがて体内で石となり、さまざまな症状を引き起こす尿石症。
愛犬の体の中に石が?と考えると、とても心配ですよね。
そもそも尿石症とはどのような病気なのか。また、その原因や予防方法をご紹介します。
目次
尿石症(尿路結石症)とは、リンやマグネシウム・カルシウムなど、尿に含まれるミネラル成分が結晶化し、腎臓・尿管・膀胱・尿道などの泌尿器で結石となることで、さまざまな症状を引き起こす病気です。
進行すると痛みを伴うほか、泌尿器に関わる重度の症状も見られます。
尿石症に見られる石にはさまざまな種類がありますが、代表的なものとしては「ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)結石」と「シュウ酸カルシウム結石」が挙げられます。
アルカリ性の尿でできやすいとされている結石です。小さいものであれば療法食による溶解も見込めますが、溶けるまでに1~4か月ほどとかなりの時間を要するため、基本的には手術による摘出が推奨されます。
アルカリ性~酸性と、どのphの尿でもできやすいとされている結石です。性質上体内で溶けることはないため、手術による摘出が必要になります。
原因①
ミネラル分の多い食べ物や水・タンパク質の多い食事は、結石の形成につながります。おやつや人間の食べ物など、ドッグフード以外のものを過度に摂取することが引き金であると言えるでしょう。
原因②
水分不足や不適切な排泄環境などによって排尿量やその頻度が少なくなると、膀胱内の尿のミネラル濃度が高くなり、結石ができやすくなります。
原因③
細菌性膀胱炎などの尿路感染症は、結石の形成要因となります。特に「ストルバイト結石」の場合は、この細菌感染が原因であることが多いです。
どの犬種でも尿石症(尿路結石症)にかかる可能性はありますが、遺伝的な要素によって、ミニチュアシュナウザーやシー・ズー、ダルメシアンなどは、結石ができやすい傾向にあると言われています。
尿石が形成される前、つまり“結晶”の状態である段階でも、さまざまな症状が出てきます。
悪化すると尿道や膀胱で結晶が結石となり、中には尿道を塞いでしまうケースも。尿道が塞がれると、このような症状が現れます。
さらに、膀胱炎や尿道炎と合併するケースもあり、その際には発熱や嘔吐・食欲不振など、深刻な症状がみられることがあります。
尿結石が疑われる場合、動物病院では次のような検査・治療が施されます。
尿検査・超音波検査・レントゲン検査によって結石や感染症の有無などを確認し、症状を引き起こしている原因を突き止めます。また、それらの検査によって、腎臓・尿管・膀胱・尿道など体内のどこで症状が出ているかを確認することができます。
尿を酸性にすることで溶解できる可能性があるため、phを調整するための食事療法やサプリメントなどで治療を進めるケースが多いです。 それでも結石が溶けない場合は、外科的な処置を取ることもあります。
食事療法では溶解することができないため、外科的な処置による治療が多いです。
おやつを与えすぎたり、欲しがるままに人間の食事を与えるようなことはせず、適切な食事内容を心がけましょう。一度尿結石症を発症した犬は再発の可能性もあるため、療法食が望ましいです。
定期的に水を飲むことを促したり、いつでも新鮮な水が飲めるようこまめに取り替えるなど、愛犬が十分な水分補給ができる環境づくりを心がけましょう。
なかなか飲水が進まない場合は、ドライフードにお湯を含ませふやかすなどの工夫もおすすめです。
トイレが不衛生だったり、家族が多く行き交うような落ち着かない環境だと、排泄を避けてしまう犬もいます。愛犬にとって快適な排泄環境を心掛け、散歩でしか排泄しない場合は、できるだけ散歩の回数を増やすなどの工夫をしましょう。
痛みのみならず、泌尿器疾患の引き金ともなり得る尿石症ですが、飼い主さんの心がけ次第で予防ができるものです。愛犬の健康を守る食事や排泄環境を意識することで、しっかりと対策を。さらに日常的な“おしっこチェック”で、万一の際の早期発見に努めましょう。
犬注目記事
いつか来るシニア期のために知っておきたい【老犬でよく見られる病気】
子犬を迎えたなら知っておきたい「子犬に多い病気、気をつけたい症状」
背骨の骨同士の間にある椎間板が変性・変形することで神経症状を引き起こす「椎間板ヘルニア」を知る
膝の骨がずれて跛行する関節疾患「膝蓋骨脱臼」を知る
猫注目記事
いつか来るシニア期のために知っておきたい【老猫でよく見られる病気】
子猫を迎えたなら知っておきたい「子猫に多い病気、気をつけたい症状」
猫の皮膚病、それ放っておいても大丈夫?
毛布をはむはむ、ちゅぱちゅぱ… 猫の“ウール・サッキング”とは?
監修いただいたのは…
2018年 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業
成城こばやし動物病院 勤務医 獣医師 高柳 かれん先生
数年前の「ペットブーム」を経て、現在ペットはブームではなく「大切な家族」として私たちに安らぎを与える存在となっています。また新型コロナウィルスにより在宅する人が増えた今、新しくペットを迎え入れている家庭も多いように思います。
その一方で臨床の場に立っていると、ペットの扱い方や育て方、病気への知識不足が目立つように思います。言葉を話せないペットたちにとって1番近くにいる「家族の問診」はとても大切で、そこから病気を防ぐことや、早期発見できることも多くあるのです。
このような動物に関する基礎知識を、できるだけ多くの方にお届けするのが私の使命だと考え、様々な活動を通じてわかりやすく実践しやすい情報をお伝えしていけたらと思っています。