【獣医師監修】猫の慢性腎臓病とは?なったらどうする?原因や治療法、予防はある?
猫の宿命とも言える病気のひとつ「慢性腎臓病」。多くの場合、ゆっくり進行し、食欲もあるため、初期段階では気づけないことがほとんどです。だからこそ、普段から定期検診を受け、定期的に腎臓の状態をチェックすることが大切。
この記事では「慢性腎臓病」の怖さや発症してしまった場合の対策などについて紹介します。
猫の宿命とも言える病気のひとつ「慢性腎臓病」。多くの場合、ゆっくり進行し、食欲もあるため、初期段階では気づけないことがほとんどです。だからこそ、普段から定期検診を受け、定期的に腎臓の状態をチェックすることが大切。
この記事では「慢性腎臓病」の怖さや発症してしまった場合の対策などについて紹介します。
目次
慢性腎臓病の症状
何か様子が変だと感じたら重症の可能性大
「慢性腎臓病」は、高齢の猫の死因として最も多く挙げられる病気です。
腎臓といえば、体の中で不要になった老廃物や毒素を尿として排出したり、血圧を調整したり、血液をつくったりと重要な機能を果たしている臓器。この腎臓がダメージを受けることを「腎臓病」といい、このダメージを受け続ける状態が3ヶ月以上つづいた場合に「慢性腎臓病」と診断されるのです。さらに、この「慢性腎臓病」に気づかず放置してしまうことで、腎臓が全く機能しなくなる末期の腎臓病「腎不全」へと進行していってしまいます。
一度失われた腎臓の機能は二度と回復しないため、早期発見、早期治療が重要です。
はっきりとした原因は分かっていないのが現状ですが
・細菌やウイルスの感染
・歯肉口内炎による炎症性蛋白の分泌
などが、影響していると考えられています。
歯肉口内炎があると慢性腎臓病になりやすいことはわかっています。
生まれつき腎臓が異形成だったり、遺伝性疾患をかかえていたりする場合もあり、それらが慢性腎臓病の原因になっていることも考えられます。
「慢性腎臓病」は、以下の4つのステージに分けられています。
ステージ分類は、血液検査によるクレアチニン値などを参考に行われます。
腎臓の機能が100~33%に分類される状態です。症状や血液検査での異常はほとんど見られません。尿検査で蛋白尿などの異常が見られる場合があります。
腎臓の機能が33~25%に低下している状態です。水を飲む量が増え、大量に薄い尿をする「多飲多尿」が見られるようになります。このステージに分類される猫の多くはまだ食欲も元気もあるので、異常に気づくのは難しいとされています。
腎臓の機能が25~10%程度まで低下した状態です。有毒物質や老廃物の排泄がうまくできなくなることにより、尿毒症を発症しはじめます。血液中に尿毒素が入りこむことで、胃に炎症を起こしやすくなります。
嘔吐や食欲低下、貧血などの症状が見られはじめ、この段階で、やっと異常に気づく飼い主さんが少なくありません。
血液検査でクレアチン値や尿素窒素の値にも異常がみられるようになります。
腎臓の機能が10%未満まで低下してしまった状態です。
積極的な治療なしでは生命維持が困難なステージです。
ステージ4まで進むと、重篤な臨床症状が見られ、積極的な治療なしには生命維持も難しくなるといわれる「慢性腎臓病」。
ゆっくりと進行が進む中で、どのような症状が見られるのでしょうか。
症状①
初期段階では食欲も元気もあるため、異常に気づくのが困難とされる「慢性腎臓病」。
多くの場合、はじめに見られる症状は“多飲多尿”です。その名の通り、水を飲む量が増え、大量の薄い尿を出すようになります。
衰えた腎機能を、水を余分に飲むことで補おうと起こる症状で、血液検査での数値の異常などより先だって現れることが多いです。
通常、猫の飲水量は50ml/kg以下。飲む水の量が増え、排尿の回数が増えた、尿の色が薄くなり匂いがしなくなったなどがあれば、まずは動物病院で検査を受けましょう。
「尿検査」「血液検査」「エコー検査」「レントゲン検査」などが受けられます。
症状に気づくのが早い場合、まだ血液検査での数値の異常は見られないかもしれませんが、「尿検査」「エコー検査」「レントゲン検査」などで異常を把握することができます。
この段階でも腎臓はダメージを受けている可能性はおおいにあるため、少しでも異変を感じたら獣医師に相談してください。適切な対応ができるかどうかで、愛猫の寿命に大きく影響を与える大切な時期です。
症状②
一見健康に、元気に見える愛猫も、「慢性腎臓病」を発症している場合、実は数週間~数か月単位で体重が減少していることがあります。体重減少が現れたということは、充分なエネルギーを食事から摂取できなくなっている可能性があります。見た目や体を触るだけでは気づけないこともあるので、定期的に体重測定や、動物病院での検診を受けることをおすすめします。
症状③
胃炎による食欲不振や嘔吐などの症状が見られることもあります。
「慢性腎臓病」が進行し尿毒症になると、定期的に嘔吐したり、体温が低下したりもします。腎機能がまったく機能しなくなると死に至るので、早急に動物病院を受診する必要があります。
初期だとほとんど症状が見られない「慢性腎臓病」。多飲多尿の他、食欲の低下や体重減少、嘔吐などが見られたら、病気が進行している可能性が高いといえます。
体調に異常が特に見られない時も定期的に健康診断を受けるなどし、腎臓の状態をチェックすることが一番の対策となります。
「慢性腎臓病」だと診断を受けたら、食事をタンパク質がコントロールされた腎臓病療法食に切り替えましょう。食事療法は、脱水症状に対するケア、薬物療法などと比べても、もっとも効果がある治療だと言われています。動物病院で購入できる特別療法食やサプリメントなどを利用するのがおすすめです。
このように腎臓に配慮された食事を与えることで、慢性腎臓病の進行がゆるやかになる効果が期待できます。
あげ方や与える量などについては、獣医師に相談して進めるようにしましょう。
腎臓の機能を維持、改善するために、重要なのが定期的な腎臓のチェックです。
症状が進行しても、食欲は落ちず一見元気に見えることが少なくないため、動物病院で定期的なチェックをする以外に腎臓の状態を把握することは困難といえます。
「慢性腎臓病」には明確な予防法がないからこそ、普段から定期的な健康診断を心がけ、少しでも異常を感じたらすぐに受診を。そしてもし「慢性腎臓病」だと診断されたら、一生その治療を継続する必要があります。
主治医の先生と相談の上、永く継続できる治療法を選択しましょう。
腎臓の組織は一度壊れると、元に戻すことができません。つまり「慢性腎臓病」を完治させる治療はないのです。しかし、残っている腎機能になるべく負担をかけないようにすることで、完治はしなくても、生活の質を維持、改善させながら長生きさせることは可能です。少しでも早く動物病院を受診し、食事療法などの治療を開始することが愛猫の長生きへとつながります。
予防法や完治させる治療法がない猫の病気「慢性腎臓病」。
普段から定期検診を受けるのはもちろんのこと、若いころから腎臓に負担を与えないように心がけるのが大切です。人間の食事を与えるのは避けてキャットフードを与え、歯肉口内炎などができないようにデンタルケアにも気を配りましょう。
その上で、ニオイがしない、薄い大量のおしっこをしているなどの疑わしい症状が見られたら迷わず病院へ!
少しでも早く気づけるように、飼い主さんは愛猫が水を飲む量、尿の状態、量は普段からチェックするようにしてあげてくださいね。
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監修いただいたのは…
猫専門病院 Tokyo Cat Specialists 院長
獣医師 山本 宗伸先生
猫専門病院 Tokyo Cat Specialists
(https://tokyocatspecialists.jp/clinic/) 院長。
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫に魅了され、獣医学の道へ。
都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat
Specialistsで研修を積む。国際猫医学会ISFM、日本猫医学会JSFM所属。