ペットフード安全法
家庭動物に関係する法律の知識
法律の沿革
『愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律』(ペットフード安全法)は、2008年(平成20年)3月4日に閣議決定し、環境省・農 林水産省の共管により同年6月18日に公布され、本年2009年(平成21年)6月1日より施行されました。
この法律が施行された背景には、現在の日本社会において、犬と猫に代表される家庭動物の飼育頭数が年々増加し、暮らしを共にするパートナー・大切な家族の一員へと関係が変化してきたことがあげられます。飼い主の愛犬・愛猫に対する健康 管理の意識も高まり、どんなフードを与えれば良いか、どんな原材料が使われているかといった「食べ物」への関心を寄せる飼い主も増えています。
そのような飼い主の意識の変化に対応して犬猫を対象にしたペットフード市場も拡大傾向にありますが、2007年(平成19年)3月、アメリカにおいて有害物質(メラミン)が混入したペットフードが原因で、多数の犬や猫が死亡する事故が発生しました。同年6月には日本国内でもメラミンが混入したペットフードが輸入販売されていたことが判明し、ペットフードが原因となる事故の発生が懸念されました。
これが契機となり、動物用の飼料を所掌する農林水産省と動物の愛護を所掌する環境省が協力し、同年8月に 獣医師、弁護士、消費者団体、ペット専門家、行政担当者等のメンバーで構成する「ペットフードの安全確保に関する研究会」を設置、この研究会での検討・協議を経て、ペットフードの安全性の確保を図り、犬猫の健康を守り、動物愛護を推進するために、法律制定等の措置 がとられることとなりました。
法律の目的
この法律は、犬や猫用のペットフード(愛がん動物用飼料)の製造等に関し規制を行うことで、ペットフードの安全性を確保し、犬や猫の健康を守り、動物愛護に寄与することを目的としています。
法律の対象となるのは現在のところ犬及び猫用のペットフードに限られていますが、ペットの健康に悪影響を及ぼすペットフードの製造、輸入又は販売を禁止し、消費者に対して適切かつ十分な情報を提供するために製造業者名や賞味期限などの表示が義務付けられています。また、国は国内に流通するペットフードを監視し、問題が起きた時はその廃棄、回収を事業者に対して命令す ることができることを定めています。
尚、「愛がん動物用飼料」とは、「愛がん動物の栄養に供することを目的として使用される物をいう」(法第2条第2項)とされていますので、このような目的として使用されるミネラルウォーター、生肉、スナック、ガムなどのおやつ類、サプリメント等も、この法律の対象となる愛がん用動物飼料に含まれています。
法律の概要
この法律の主たる概要として以下のものがあり、違反した場合、最高1億円の罰金や、懲役刑が科されるなど厳しい罰則が盛り込まれています。
《1》2009年(平成21年)12月より、農林水産大臣及び環境大臣が定めた成分規格及び製造方法に合わない犬及び猫用ペットフードの製造、輸入又は販売は禁止されます。
※ただし2009年(平成21年)12月1日以前に製造、輸入又は販売したものは除かれます。
《2》2010年(平成22年)12月より、販売される犬及び猫用ペットフードには『名称』『原材料名』『賞味期限』『製造業者等の名称又は住所』『原産国名』の表示が義務付けられます。
※ただし2010年(平成22年)12月1日以前に製造、輸入又は販売したものは除かれます。
原材料名の記載については、公正取引委員会の認定を受けた「ペットフードの表示に関する公正競争規約・施行規則」では、原材料名 の表示は、使用量の多い順に記載すると定められています。ペットフード安全法では、原材料名の記載順序は特に規定していませんが、原則、多い順に記載することが望ましいとされています。また、この「ペットフードの表示に関する公正競争規約」により、ペットフード安全法で義務付けられている5項目以外に、『目的』『内容量』『給与方法』『成分』についても表示することとなっており、飼い主への正確で適切な 情報提供が図られています。
《3》2009年(平成21年)6月からペットフードの輸入業者又は製造業者は、届出が義務付けられました。
《4》2009年(平成21年)6月からペットフードの輸入業者、製造業者又は販売業者(小売は除く)は、輸入・製造・販売の記録を残すために、帳簿の備えつけが義務付けられました。
《5》有害な物質などが混入したペットフードが流通するなどした場合には、農林水産大臣及び環境大臣は、製造業者、輸入業者又は販売業者に対し、廃棄、回収などの必要な措置をとるよう命ずることができます。
《6》農林水産大臣又は環境大臣は、問題が起きた場合などにペットフードの製造業者等から必要な報告の徴収又は立入検査等を行うことができます。また、(独)農林水産消費安全技術センター(FAMIC)に立入検査等を行わせることができます。
このペットフード安全法は、「愛がん動物の健康を保護し、動物の愛護に寄与すること」を目的に制定された法律です。近年、私たち人間の「食の安全・安心」への関心や注意も高まりましたが、同様に飼い主として愛犬・愛猫に対する健康を気遣い、ペットフードの選び方、与え方についてもより意識を高めることが大切です。そして愛犬、愛猫の年齢や状態を把握し、適切な食べ物を与えて健康を守ってあげてください。
「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」の施行にあわせて、シンポジウムなども開かれました。
上の写真は特定非営利活動法人動物愛護社会化推進協会主催『ペットの食の安全を考えるシンポジウム』
(2009年5月17日 東大弥生講堂)
環境省では「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」をホームページで公開しています。どうぞご覧ください。
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/petfood_guide.html