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いつか来るシニア期のために知っておきたい
【老猫でよく見られる病気】

いつか来るシニア期のために知っておきたい【老猫でよく見られる病気】

人間でも猫でもこれといった病気にならず、“ピンピンコロリ”で一生を終えることができれば理想的ですが、なかなかそうはいきません。加齢するごとに病気のリスクは高くなり、場合によっては病気を抱えたままシニア期を過ごさねばならないことも多々です。そのため大事となるのが予防、そして早期発見・早期治療でしょう。

老猫となってもなお愛猫の健康を守れるよう、シニア期に見られがちな病気について知っておきましょう。

1.「老化サイン」と「不調・病気の兆候」とは表裏一体

老猫の病気に少しでも早く気づくためには、「いつもとは様子が違うな…」と愛猫の変化に気づける観察眼をもつことが大事であるのは言うまでもありませんが、老猫ともなるとシニア期ならではの変化も出てくるので、まずはそのお話から始めましょう。

老猫では若い頃とは違って次のような変化が見られることがあります。これらは老化による場合もあれば、体に何らかの不調や病気があり、症状の一つとして表れている場合もあることには注意が必要です。

変化の区分 老化による変化の例
体の変化
  • 白髪が出る、毛の色が薄くなる、毛の艶が悪く毛がぱさつく、毛玉が多くなる(毛づくろいをしなくなる)
  • 皮膚が薄くなり、皺やたるみが目立つ
  • 視力の低下
  • 聴力の低下
  • 爪が伸びていることが多い(爪研ぎが減る)
  • 目やにが増える
  • 体重が減る、または増える
睡眠の変化
  • 寝ていることが多い
  • 寝ていても度々起き、落ち着かない
歩行・行動の変化
  • 段差の上り下りがうまくできない、段差に引っかかる
  • ジャンプをあまりしなくなり、高い場所に上らない
  • 足先をずるように歩く
  • 動作がゆっくりで鈍くなる
排泄の変化
  • 粗相をするようになる
  • 排泄の姿勢をうまく保てない
  • 尿や便が出にくい、出ない

たとえば、寝てばかりいるのは体のどこかに痛みがあって耐えているのかもしれませんし、排泄の粗相をするようになったのは多尿を症状とする病気に罹っているのかもしれません。

シニアとなった愛猫にどこか気になる様子が見られた時には、単に「歳だから」と片付けず、このようにいろいろな可能性を探る必要があります。

2.老猫でよく見られる病気

老猫でよく見られる病気

では、ここからは老猫で見られがちな病気について見ていきましょう。次に挙げたものは代表的な病気であって、他にもいろいろ注意を要する病気はあります。

1内分泌疾患

【甲状腺機能亢進症】

原因:

甲状腺(喉の下部にある一対の腺組織)の過形成や腫瘍などが誘因となり、甲状腺からのホルモン分泌が過剰になることで発症します。

症状:

食べているのに痩せる、嘔吐、下痢、多飲多尿、活動性が増す、興奮しやすい、落ち着きがない、目のぎらつき、イラつくなどの症状が見られます。

犬では甲状腺機能低下症が多いのに対し、猫では甲状腺機能亢進症が多いとされますが、甲状腺ホルモンは新陳代謝に関わり“元気”を左右することから、低下症の場合は活動性が低下し、亢進症では活動性が増すといった特徴があります。

治療:

猫の状態により、甲状腺ホルモンの産生を抑制する薬の投与、甲状腺を摘出する手術、甲状腺ホルモンの栄養源となるヨウ素を制限した食事療法などで治療を行います。

予防:

残念ながらこれと言った予防法はありません。早期発見・早期治療のためには定期健康診断が有効となるでしょう。

【糖尿病】

原因:

体の細胞にとって大切なエネルギー源となる血中の糖(ブドウ糖)は、本来、膵臓から分泌されるインスリンの働きによってコントロールされています。

ところが、インスリンがうまく働かなくなると糖を細胞内に取り込みにくくなり、その結果、高血糖の状態となって糖尿病を発症します。

糖尿病には2つの型があり、猫ではⅡ型が多いと言われますが、原因としては以下を挙げることができます。

①Ⅰ型:インスリン欠乏性

膵臓の機能低下によるインスリン量の不足

 

②Ⅱ型:インスリン抵抗性

膵臓やインスリンには問題がないものの、インスリンに対する体の反応が鈍い

誘因には、膵炎や甲状腺機能亢進症、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などの基礎疾患、ステロイド剤の長期使用、肥満、ストレスなどが挙げられています。

症状:

初期には主に多飲多尿、食べるにもかかわらず体重が減少するといった症状が見られますが、進行して重度になると糖尿病性ケトアシドーシスと呼ばれる状態になり、嘔吐や下痢、食欲低下、元気消失、衰弱、脱水などの症状が見られるようになります。この状況は命にかかわるため、速やかな治療が必要です。

その他、糖尿病は進行すると白内障をはじめ、肝臓疾患や腎臓疾患など合併症を起こすこともあります。

治療:

インスリン製剤の注射、および食事療法が基本となり、定期的に血糖値を確認します。
基礎疾患がある場合は、その治療も同時に行います。

予防:

糖尿病を併発しやすい基礎疾患がある場合は、その治療を行うことが大事となります。また、適度な運動と体重管理、そしてストレス回避を心がけることは予防につながるかもしれません。

2泌尿器疾患

【慢性腎臓病(慢性腎不全)】

原因:

慢性腎臓病は細菌やウイルスの感染、炎症性疾患、中毒、外傷などに起因し、腎臓が加齢に伴って持続的にダメージを受け、腎機能がゆっくりと低下する病気です。
腎臓病には急性のものもありますが、慢性腎臓病は3ヶ月以上にわたって腎機能が低下した状態を言います。

症状:

初期には症状らしいものが見られませんが、進行するにつれて多飲多尿、食欲不振、嘔吐、脱水、便秘、貧血、体重減少などの症状が見られるようになります。
重度になると尿毒症を起こし、痙攣や意識混濁などの神経症状が出ることがあり、最悪の場合は死に至ることがあります。

治療:

長期にわたってダメージを受けた腎臓の再生は難しいため、腎臓への負担を軽減するとともに病気の進行を遅らせることに重点を置いた治療となります。
そのためにタンパク質とリンを抑えた食事、脱水を緩和するための点滴、毒素を排出するための薬や貧血に対処する薬の投薬など猫の状態に合わせた治療が行われます。

その他、幹細胞療法を行う動物病院もあります。
幹細胞療法とは、健康な犬猫、または患者となる犬猫の体から組織を採取して細胞を培養し、それを患者である犬猫に投与する細胞移植のことを言います(*1)

目下、国内では臨床研究がされており、研究対象疾患の中には慢性腎臓病が含まれています。

予防:

水を十分に飲ませる、塩分の高いおやつは避ける、肥満は腎臓病のリスクとされるため肥満予防を心がける、定期健康診断を受けるなどは予防につながるでしょう。

3腫瘍・がん

【乳腺腫瘍(乳がん)】

原因:

猫では左右に4つずつの乳腺がありますが、その乳腺に発生する腫瘍が乳腺腫瘍です。
原因について詳しくは解明されておらず、早期に避妊手術を受けたメス猫では乳腺腫瘍の発生率が低いことからも卵巣ホルモンの関与が考えられています。

猫の乳腺腫瘍の場合、悪性度が高く、およそ8割が悪性腫瘍、つまり乳がんであると言われています。

症状:

脇の下から内股にかけての乳腺に沿って1つ~複数の硬いしこりがあり、大きくなるとしこり部分の皮膚が破け、出血したり、ジュクジュクしたりすることがあります。
特に肺に転移した場合は、咳や呼吸困難の症状が見られることがあります。

治療:

治療には腫瘍の摘出手術、抗がん剤を用いた化学療法、免疫細胞を活性化してがんの縮小を狙う免疫療法などがあります。
乳腺腫瘍は肺やリンパ節などに転移しやすいため、摘出手術が基本となりますが、猫の状態に合わせて他の療法と組み合わせて治療が行われることもあります。

予防:

少なくとも生後12ヶ月までの間に避妊手術を受けると乳腺腫瘍の発生リスクを低く抑えることができると言われていますが、100%予防できるというわけではありません。

【リンパ腫】

原因:

リンパ腫とは、いわゆる血液のがんで、血中のリンパ球(白血球の一種で免疫に関与する血液細胞)ががん化した状態を言います。

原因ははっきりとは解明されていませんが、誘因としては遺伝、猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスなどのウイルス感染、ストレス、汚染物質(例:タバコ)への暴露、免疫力の低下などが考えられています。

なお、猫のリンパ腫には発生部位によって、以下のようなタイプがあります。

1.多中心型:全身のリンパ節に腫瘍が発生するタイプ
2.縦隔型:胸のリンパ節に腫瘍が発生するタイプ
3.消化器型:消化器系に腫瘍が発生するタイプで、猫ではもっとも多く見られる
4.皮膚型:体表の皮膚に腫瘍が発生するタイプ
5.節外型:上記以外の部位に腫瘍が発生するタイプ

症状:

リンパ腫は発生部位によって症状にも違いがありますが、主にリンパ節の腫れ、食欲不振、元気消失、嘔吐、下痢、体重減少などが見られます。

その他、縦隔型では咳や呼吸障害、嚥下困難が見られたり、消化器型では腸閉塞が起きたりすることもある他、鼻の中にリンパ腫ができた場合にはくしゃみや鼻血が見られることもあります。

治療:

治療には抗がん剤を用いた化学療法、放射線療法、手術があり、猫の状態に合わせてこれらを組み合わせて治療が行われることもあります。
手術が行われるのは主に皮膚型の場合、または腫瘍の切除が可能で必要と思われる場合となります。

予防:

前述したようにウイルス感染が誘因の一つとされているので、予防できる感染症はワクチン接種をすることでリンパ腫のリスクを下げることは可能でしょう。
また、強いストレスをかけないよう配慮する、なるべく汚染物質にはさらさないなども予防策にはなると思います。

4脳疾患

【認知症(認知機能不全症候群)】

原因:

猫の認知症についてはまだ研究が浅く、詳しいことはわかっていませんが、人間の認知症と似たような兆候を示すことが知られています。
原因としては脳の萎縮や脳の神経変性などが考えられています。

症状:

専門的には症状を次の6つに分けることができます。

1.見当識障害
  • 部屋の角で行き詰まって動けない
  • 家の中であっても行き方がわからない  など
2.社会的交流の変化
  • 名前を呼んでも反応しない
  • 飼い主さんや同居ペットへの興味が薄くなる
  • 遊びに興味を示さない  など
3.睡眠・覚醒サイクルの変化
  • これまでとは違う時間に寝たり起きたりする
  • 昼夜逆転
  • 夜鳴き  など
4.学習・記憶の変化
  • トイレの粗相をするようになったなど、覚えていたしつけや行動を忘れる
5.活動性の変化
  • 目的もなくうろうろ歩き回る
  • あまり動かない
  • 毛づくろいをしなくなる  など
    (活動性が増す場合と減る場合がある)
6.不安の増大
  • これまでは平気だった音や物、環境などを怖がるなど、不安傾向になる
    (これに関連して、怒りっぽくなる、攻撃的になるといった性格の変化が見られることもある)

ただし、老猫はストレスに弱く、不安になりがちであり、こうした様子が見られたからといって必ずしも認知症であるとは限りません。

治療:

猫の認知症は完治を望めるものではなく、いかに進行を遅らせ、少しでも改善をしつつつきあっていくかに重点が置かれます。

猫の状況によって鎮静剤や抗不安薬、催眠効果のある薬、漢方薬、サプリメント、食事療法などで対処することになります。その他、心身に刺激を与えられるよう積極的に軽い運動をさせたり、コミュニケーションを図ったりするのも大事です。

予防:

以下のようなことは認知症の予防につながるでしょう。

①食事

認知症リスクを軽減させる効果が期待されているDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサぺンタエン酸) などのオメガ3脂肪酸を含む食事やサプリメントなどを与えるといいでしょう。

 

②運動

軽い運動は筋肉の維持やストレス発散などの他、心身に刺激を与えて脳の活性化が期待できます。猫用の知育玩具を取り入れるのもお勧めです。

 

③コミュニケーション

飼い主さんとのコミュニケーションは心身に刺激を与えます。その一つとして、お手入れのついでにマッサージを取り入れるのもいいでしょう。

 

④日光浴

特に朝の太陽を浴びることは体内時計をリセットし、睡眠の改善にも良いとされています。

5関節疾患

【変形性関節症】

原因:

変形性関節症とは、関節軟骨の摩耗や関節への過度の負担、関節自体の構造異常などが原因となり、徐々に関節が変形してしまう病気です。
誘因としては加齢、骨軟骨異形成症や膝蓋骨脱臼などの病気、遺伝的素因などが考えられています。

症状:

起き上がる時に動作がゆっくりで時間がかかる、段差や階段の上り下りを嫌がる、ジャンプをしなくなる、高い場所に上らなくなる、排泄の姿勢をとることが困難になる、動きたがらず寝ていることが多い、関節を舐めたりして気にしている、毛づくろいをしなくなる、関節に熱や腫れがある、触ろうとすると嫌がるなどの様子が見られるようになります。

治療:

鎮痛剤や抗炎症剤などの投与と併せ、体重管理、関節を支える筋肉をつくるための適度な運動が大切となります。
その他、理学療法や湿布、鍼灸、マッサージなどを併用する場合もあります。

予防:

肥満や滑りやすい床は関節疾患にとってリスクとなるため、日頃より体重管理を行い、愛猫の行動範囲には滑り止めマットを敷くなど生活環境を整えることは予防につながります。

また、筋肉を維持するための適度な運動を心がけることも大事です。ただし、過度な運動は逆に関節を傷めてしまうことがあるのでご注意ください。
その他、シニア期になったならば、関節に良いとされるコンドロイチンやグルコサミン、コラーゲンなどのサプリメントを与えるのもいいでしょう。

6口腔疾患

【歯周病】

原因:

歯周病は歯垢の中にいる細菌が歯周組織に入り込むことで発症します。

症状:

軽度では歯垢の付着や歯肉の赤みなどが見られますが、進行するにつれて歯石や口臭、歯周ポケットの形成、出血、痛み、歯のぬめり(細菌が作り上げるバイオフィルム)などが見られるようになります。

重度になると歯周ポケットから膿が漏れ出る歯槽膿漏の状態となり、さらに進行すると細菌が骨や皮膚まで溶かしてしまうことから外歯瘻(がいしろう:目の下や頬などの皮膚に穴が開いてしまった状態)、内歯瘻(ないしろう:口腔内に穴が開いてしまった状態)、口腔鼻腔瘻(こうくうびくうろう:口腔と鼻腔とを隔てる骨や組織に穴が開いて貫通してしまった状態)などにつながることがあります。

また、歯周病の細菌が血流に乗って全身に回ると心臓疾患や肝臓疾患、腎臓疾患などいろいろな病気に悪影響を与えてしまうことがあるため、特に持病を抱えることが多い老猫ではたかが歯の問題と軽く見過ごすことはできません。

治療:

歯周病の治療には歯垢・歯石の除去と、外科的治療(炎症によってダメージを受けた歯周組織を再生する歯周外科治療、および抜歯)があります。
重度の歯周病では無理に歯を残すよりも、猫のその後の生活を考えれば、歯周組織を少しでも良い状態で保つほうが良いと判断され、抜歯が行われることがあります。

予防:

歯周病では子猫の頃から歯のケアをすることが何よりの予防となるでしょう。

3.定期健康診断で予防と早期発見を

定期健康診断で予防と早期発見を

以上、老猫で見られがちな病気について見てきましたが、老猫は体力、筋力、免疫力、消化能力、認知能力など体のいろいろな機能が低下するため病気のリスクが高くなります。

病気は予防と早期発見早期治療が一番。そのためには、半年に1回程度の健康診断が推奨されます。病気が見つかったとしても老猫ではどこまで治療をするか悩むこともあるでしょうが、愛猫にとってのQOLを考え、少しでも穏やかな日々を過ごせますようにと願います。

(文:犬もの文筆家&ドッグライター 大塚 良重)

【参照資料】
*1 動物再生医療技術研究組合「飼い主様向け:再生医療(幹細胞療法)とは」
https://parmcip.jp/owner/

監修いただいたのは…

2018年 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業
成城こばやし動物病院 勤務医
獣医師 高柳 かれん先生

数年前の「ペットブーム」を経て、現在ペットはブームではなく「大切な家族」として私たちに安らぎを与える存在となっています。また新型コロナウィルスにより在宅する人が増えた今、新しくペットを迎え入れている家庭も多いように思います。
その一方で臨床の場に立っていると、ペットの扱い方や育て方、病気への知識不足が目立つように思います。言葉を話せないペットたちにとって1番近くにいる「家族の問診」はとても大切で、そこから病気を防ぐことや、早期発見できることも多くあるのです。
このような動物に関する基礎知識を、できるだけ多くの方にお届けするのが私の使命だと考え、様々な活動を通じてわかりやすく実践しやすい情報をお伝えしていけたらと思っています。

成城こばやし動物病院 獣医師 高柳 かれん先生

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