子猫を迎えたなら知っておきたい
「子猫に多い病気、気をつけたい症状」
猫じゃらしに戯れる子猫を見ながら、今後の成長を楽しみにしている飼い主さんは多いことでしょう。元気に育ってくれるのが一番です。
しかし、猫は生き物。体調を崩す時もあれば、病気になることもあります。
そんな時、愛猫の健康を守れるのは飼い主さんしかいません。
そのためにも子猫が不調を示す時の症状や、子猫でよく見られる病気について知っておきましょう。
猫じゃらしに戯れる子猫を見ながら、今後の成長を楽しみにしている飼い主さんは多いことでしょう。元気に育ってくれるのが一番です。
しかし、猫は生き物。体調を崩す時もあれば、病気になることもあります。
そんな時、愛猫の健康を守れるのは飼い主さんしかいません。
そのためにも子猫が不調を示す時の症状や、子猫でよく見られる病気について知っておきましょう。
まずは子猫が不調を示す時、または何らかの異常が考えられる時に見られる症状について見てみましょう。
特に、新しい家庭に迎えられたばかりの子猫は環境が変わり、そのストレスからも体調を崩しやすい傾向にあります。
また、成猫とは違い、子猫は体の臓器や機能がまだ発達しきれていないのに加え、免疫力も十分ではないため細菌やウイルスによる感染症をはじめいろいろな病気に罹りやすい状況です。
不調が続くと命取りになることもあるので、子猫の体調の変動は注意深く見守る必要があります。
「このくらい大丈夫だろう」と高を括らず、少しでも気になる時には早めに動物病院へ行きましょう。
下痢の原因は細菌やウイルス、寄生虫などによる感染症、消化器疾患、ストレス、冷え、食べ物が合わない、誤飲など様々で、根本の原因を探ることが大事となります。
1回程度で治るならともかく、子猫の場合は便の色や形状にかかわらず、元気や食欲があったとしても念のために動物病院を受診したほうがいいでしょう。
一般的に「吐く」と言った時、厳密には「嘔吐」と「吐出」に分けることができます。
「嘔吐」は何らかの原因によって嘔吐中枢が刺激され、胃の内容物が吐き出されることを言いますが、猫が吐く前にはよだれを垂らす、口をクチャクチャさせる、うろうろ歩き回るなどの前兆があり、その後、お腹を凹ませて、「うぇっ…」と内容物を吐き出します。
それに対し、「吐出」は喉から食道にかけて、つまり胃に届く前のものが吐き出される状態を言い、吐いたものは未消化であり、吐く前に前兆らしき様子はあまり見られません。
猫が吐く原因は細菌やウイルス、寄生虫などによる感染症、胃腸炎、食べ物が合わない、ストレス、誤飲、中毒、食べ過ぎ、空腹、グルーミングの際に飲み込んだ毛玉などいろいろです。
この場合、お腹がすき過ぎて吐いたと考えられる
食べ方や飲み方が急ぎ過ぎるため、もう少しゆっくり飲食させるようにする
などの場合は病気や異常の可能性は低く、そのまま様子を見てもおおむね大丈夫でしょう。しかし、それ以外の場合、特に以下のような場合はすぐに動物病院に行きましょう。
猫の平熱は38~39度程度で、子猫の場合は成猫よりやや高めになります。
寝起きは体温が低めになり、活発に動いている時や夕方などは体温が若干高めになるのは人間と同じです。
通常、猫では39.5度を超えると熱があると判断され、逆に平熱より1度低い場合も不調が懸念されますが、体温は個体差もあるので、愛猫の平熱を日頃から把握しておくといいでしょう。
猫の体温の測り方は、ペット用の体温計を用いて肛門に優しく挿入し、直腸温を測る方法と、耳で測れるタイプの体温計を使用する方法がありますが、前者のほうがより正確のようです。
簡単な確認方法としては、猫の耳の内側や内股などを触り、いつもより体が熱いと感じた場合には熱が出ている可能性があるので、体温計で確認してみましょう。
発熱の原因は細菌やウイルスによる感染症、胃腸炎、呼吸器疾患、熱中症、中毒など様々ですが、子猫では急激に悪化することもあるので、早めの受診をお勧めします。
食欲や元気がないというのはもっとも一般的な症状であり、それゆえに細菌やウイルスによる感染症を始めとした何らかの病気、ストレス、痛み、誤飲、中毒など原因はいろいろ考えられます。
便や尿の状態はどうか、どこかケガをしていないか、熱はあるかなど他に異常がないか観察し、なるべく早めに動物病院を受診しましょう。
子猫で咳やくしゃみ、鼻水が見られる場合は、ウイルスや細菌、真菌などによる感染症、アレルギー、肺炎、副鼻腔炎、鼻に入った異物などいろいろ考えられます。
単純に鼻に埃が入ってムズムズすることからくしゃみをすることもあれば、猫風邪やクリプトコッカス症など注意を要する病気が原因の場合もあります。
咳やくしゃみ、鼻水がすぐに止まるならいいですが、
などの場合は早急に動物病院へ行きましょう。
子猫に目やにや眼の充血、涙の量が増える、眼の周りが赤いなどの症状が見られる場合、結膜炎や角膜炎といった眼疾患、ウイルスや細菌などによる感染症、アレルギー、鼻炎などが考えられます。
目やにが膿のように黄色っぽい、緑色っぽい、多い、臭い、粘り気が強いなどの場合は注意を要するので、早めの動物病院受診が勧められます。
体を痒がる、赤みや湿疹がある、毛が抜けるなどの様子が見られる時には、外部寄生虫(ノミやダニ)の感染、皮膚炎、アレルギーなどが疑われます。
ノミは瓜実条虫(サナダムシ)を媒介することがあり、マダニは重症熱性血小板減少症候群(SFTS)や日本紅斑熱といった人間にも感染する病気を媒介することがあるので予防が何より大事となります。
また、皮膚病は治療が長期におよぶこともあるので、皮膚や被毛に異常が見られた時にはなるべく早めに動物病院を受診しましょう。
では、ここからは子猫で注意したい代表的な病気について簡単に見ていきたいと思います。
空腹や寒さ、感染による嘔吐や下痢、先天性肝疾患などが誘因となって血中の糖分濃度が著しく低下することによります。
元気がない、ふらつき、震え、よだれなどの他、重度になると痙攣や昏睡が見られ、最悪の場合は死に至ることもあります。
軽度であれば食事の回数を増やす、ブドウ糖のシロップを与えるなどしますが、状態によってはブドウ糖の注射や点滴を必要とします。
低血糖は子猫で多く発症しますが、低血糖が疑われる時は、砂糖水やガムシロップ、はちみつなどを飲ませる、または舐めさせる、歯茎に塗りつけるなどして動物病院へ向かってください。
子猫は血糖値を調整する機能が未熟なため、食事の間隔があき過ぎないよう、少量で、回数を多めに与えるようにするとともに、保温に気を配りましょう。
上部気道感染症は一般的に猫風邪とも言われますが、ウイルスや細菌によって引き起こされる人間の風邪に似た症状を示す感染症の総称で、それには主に以下の病気が含まれます。
猫カリシウイルスの感染(猫カリシウイルス感染症)
猫ヘルペスウイルスの感染(猫ウイルス性鼻気管炎、または猫インフルエンザ)
細菌であるクラミジアの感染(猫クラミジア感染症、またはクラミドフィラフェリス感染症)
感染猫の咳やくしゃみの飛沫、目やに、涙、便などに接触することで感染します。
共通して咳やくしゃみ、鼻水、発熱などの症状が見られますが、猫カリシウイルス感染症では関節炎や口腔内の水疱、潰瘍が、猫ウイルス性鼻気管炎と猫クラミジア症では結膜炎や角膜炎、それに伴う目やにも見られます。特に、猫クラミジア症では眼に症状が出やすいのは特徴的です。
これらの病気は単独感染の場合もあれば、混合感染の場合もあり、また、一旦治っても免疫力が低下した時に再発することがあります。
子猫がこれらの病気に感染すると、悪化して肺炎を起こし、脱水や呼吸困難を伴って命にかかわることもあるので注意が必要です。
猫の状況により、抗生剤や咳止め、解熱剤、点眼薬、吸入薬などを用いて対症療法を行う他、インターフェロン(ウイルス感染による病気やガンなどに使われる薬)のような抗ウイルス作用のある薬を使用することもあります。
猫クラミジア症の場合は人間にも感染することがあるので、手洗いや消毒などを心がけましょう。
ワクチン接種で予防が可能です。子猫のワクチンプログラムについては、かかりつけの動物病院でご相談ください。
猫汎白血球減少症ウイルス(猫パルボウイルス)の感染によります。
感染猫の尿や便、唾液などに接触することで感染しますが、感染した母猫から胎盤を通して感染することもあります。
食欲低下、元気消失、発熱、激しい嘔吐、下痢、血便などが見られ、重度になると脱水を起こすこともあります。
また、胎盤感染した子猫では、脳に異常が出ることもあります。
猫の状況によってインターフェロン(ウイルス感染による病気やガンなどに使われる薬)のような抗ウイルス作用のある薬を使うこともありますが、吐き気止めや下痢止めの薬、脱水がある場合は輸液など対症療法が基本となります。
猫汎白血球減少症ウイルスは数ヶ月生存できる強いウイルスであるのに加え、感染した猫が回復した後でもウイルスが排出されていることがあるので、飼育環境の消毒や掃除は大事となります。
ワクチン接種で予防が可能です。
猫免疫不全ウイルス(FIV)の感染により引き起こされる病気で、一般的には「猫エイズ」とも言われます。
感染猫の唾液や血液と接触することで感染しますが、ケンカの傷口から感染することが多いようです。そのため、外で暮らす猫や外に出かける猫はリスクが高くなります。その他、母猫から子猫への感染も考えられています。
猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)では多くの場合、感染から1年程度の間はリンパ節の腫れ、発熱、下痢、風邪に似た症状、貧血などが見られますが、やがて治ったかのように症状が消えていきます。
その後、数ヶ月~数年にわたり、症状が出ない状態が続き、中には一生そのままである猫もいます。
しかし、無症状の時期を経てウイルスが活発化し、口内炎や口腔内の潰瘍、よだれ、口臭、鼻水、目やに、下痢、発熱、体重減少などが見られるようになり、徐々に免疫力が低下して傷が治りにくい、いろいろな病気にかかりやすくなるといった状態になります。
ウイルス自体に対する治療法はないため、猫の状況によってインターフェロンを使用することもありますが、基本的には抗生剤、抗炎症剤などを用いた対症療法となります。
エイズと呼ばれてはいますが、人間のエイズとは別物で、これが人間や犬に感染することはありません。
ワクチン接種で予防が可能です。外にいる猫とのケンカを避けるには、完全室内飼育にするのも予防の一つになるでしょう。
猫白血病ウイルスの感染によります。
感染猫の唾液や鼻水、涙、尿、便、胎盤、乳汁などに含まれたウイルスが口や鼻から入ることで感染しますが、毛づくろいをし合ったり、同じ食器を共有したりすることでも感染する可能性があります。
この感染症は白血病の名前が入っていますが、免疫力が低下することで白血病のみならず、いろいろな症状・病気を引き起こします。
感染初期にはくしゃみや発熱、食欲低下、元気消失、吐き気、下痢、貧血、リンパ節の腫れなどの症状が見られます。
この後、ウイルスが消え、回復する猫もいますが、ウイルスが消えずに潜伏し、やがて体の中で増殖し続ける猫もいます。これを「持続感染」と言います。
持続感染の状態になると数ヶ月~3、4年以内に発病し、ほとんどの場合は死に至ります。
その間には食欲低下、元気消失、嘔吐、下痢、体重減少、口内炎、歯肉炎、貧血、白血球減少などが見られ、急性白血病やリンパ腫をはじめとする腫瘍、感染症、免疫不全症など様々な病気に罹りやすくなります。
なお、持続感染の状態になる割合は感染時の年齢によって違いが見られ、生まれたてでの感染は100%、離乳期以降の感染は50%、1歳以上の感染では10%程度と言われています(*1)。
様々な症状および病気が見られるため、抗炎症剤や鎮痛剤、抗生剤、インターフェロン、点滴、輸血など猫の状態に合わせた治療が行われます。
猫白血病ウイルスは人間や犬などには感染しないと考えられています。
ワクチン接種で予防が可能です。
もともとの原因となるのは猫腸コロナウイルスですが、このウイルス自体は病原性が弱く、多くの猫が感染したことがあり、抗体をもっています。 9割以上の猫は自然と治ってしまうようです(*2)。
しかし、猫コロナウイルスが猫の体内で突然変異を起こし、猫伝染性腹膜炎ウイルスへと変身すると、強い病原性を示すようになり、重篤な症状を引き起こすようになります。
感染経路は経口感染で、感染猫の唾液や尿、便などにウイルスが排出されます。
主に食欲低下、元気消失、発熱、嘔吐、下痢、体重減少、黄疸などの症状が見られますが、猫伝染性腹膜炎(FIP)の症状は大きく「ドライタイプ」と「ウェットタイプ」に分けられます。
ドライタイプは腎臓や肝臓など様々な臓器に肉芽腫のような硬いしこりができるのが特徴的で、病気が眼に及んだ場合は眼球の白濁や緑内障、ブドウ膜炎などが、脳に及んだ場合には眼振や旋回運動、発作、麻痺などの症状が見られることがあります。
一方、ウェットタイプでは腹部に水が溜まってお腹が膨れる(腹膜炎)、胸に水が溜まることで呼吸障害が出る(胸膜炎)、心臓の膜に水が溜まるなどの症状が見られるのが特徴的です。このウェットタイプは特に子猫に多いと言われます。
残念ながら発病後は徐々に進行し、死に至ることが多い病気です。
現在のところ有効な治療法はなく、病状に合わせた対症療法が基本となります。
コロナという言葉が入っていますが、世界中が混乱に陥った新型コロナウイルスとは違います。猫腸コロナウイルスが人間に感染することはありません。
猫伝染性腹膜炎(FIP)を予防できるワクチンはありません。ウイルスが突然変異を起こす原因の一つとしてストレスが考えられているので、なるべく負のストレスがかからないよう配慮することは予防につながるかもしれません。
猫回虫が小腸に寄生することで発症します。猫回虫は成長すると2~14cmくらいになる白くて細い紐のような寄生虫です。
感染猫の便に交じって出た猫回虫の卵は、その場で成熟して感染力をもちます。その卵を猫が口に入れてしまったり、感染しているネズミや鳥、ミミズなどを食べてしまったりして感染します(経口感染)。
その他、感染した母猫の胎盤や乳汁を通して感染することもあります(胎盤感染、経乳感染)。
症状らしいものが見られないこともありますが、主に嘔吐や下痢が見られ、場合によっては食欲低下、元気消失、発熱などが見られることもあります。特に子猫ではお腹が膨れる、栄養不良、体重減少、脱水などの症状が出ることもあります。
駆虫薬を投与します。
猫回虫は人間にも感染するため、注意が必要です。
これと言った予防法はありませんが、猫の便はすぐに片付けるようにし、室内飼育を徹底することは予防につながるでしょう。
条虫が小腸に寄生することによります。
条虫は別名サナダムシとも言い、小さな片節がいくつも連なって一つの生命体を作り上げている平たい紐状の寄生虫です。
この寄生虫にはいくつか種類がありますが、猫に寄生する条虫で代表的なものには瓜実条虫、マンソン裂頭条虫、猫条虫があります。
瓜実条虫の場合は、その卵を食べたノミの体の中で孵化し、感染力をもつようになるため、猫がそのようなノミを誤食することで感染が成立します。
マンソン裂頭条虫ではヘビやカエル、トカゲなどが中間宿主となり、猫がそれらを食べることで感染し、猫条虫ではネズミが中間宿主となります。
症状らしいものが見られないことは珍しくありませんが、主に嘔吐や下痢が見られます。
子猫の場合や多数寄生された場合は、体重減少や貧血の症状が出ることもあります。
その他、違和感からお尻を気にしたり、床にこすりつけたりする様子が見られることもあれば、便の中に片節が交じっている、肛門から紐のような条虫がぶら下がっているといったこともあるので、猫の便やお尻の周りはよく観察してみてください。
駆虫薬を投与します。
条虫は人間にも感染することがあるので、注意が必要です。ノミや汚染された水を間違って口に入れてしまうなどありませんように。
ノミの予防・駆除と飼育環境の掃除をこまめに行うことが条虫感染の予防になるでしょう。猫の場合、室内飼育を徹底し、外に出さないことも予防にはなります。
ジアルジア原虫が小腸に寄生することで発症します。
感染動物の便にはシスト(嚢子:のうし)と呼ばれるジアルジアの卵のようなものが排出されますが、その便から直接的に、またはそのような便で汚染された水を摂取するなどして経口的に感染します。
成猫では症状らしいものを示すことは少ないものの、子猫では下痢や粘液便、血便などが見られ、重症化しやすく、発育に影響する、命にかかわるといった場合もあるので注意が必要です。
下痢は油が腐ったような悪臭を放ち、一旦治ったように見えて再発することもあれば、長期にわたることもあります。
駆虫薬を投与する他、猫の状況によって抗生剤や下痢止め、点滴、輸液などが必要になることがあります。
ジアルジア症は人間にも感染し、日本では5類感染症に分類されており、感染があった場合、医師は保健所に届出を提出しなければならないと定められています(*3)。
ジアルジアのシストは長期間生存が可能なものの、乾燥と熱に弱いので、愛猫が感染した場合は再発予防のためにも消毒や飼育環境のこまめな掃除を心がけましょう。
コクシジウムと呼ばれる原虫が小腸に寄生することによります。
感染猫の便にはオーシストと呼ばれるコクシジウムの卵のようなものが排出され、それが口や鼻から入ることで感染します。オーシストに汚染された食器やトイレを使ったり、小動物を食べたりすることでも感染する可能性はあります。
成猫では症状らしいものが見られないか、軽い症状であることもありますが、子猫では下痢、血便、粘液便、嘔吐、体重減少、脱水などが見られます。
駆虫薬を投与する他、猫の状況によって抗生剤や下痢止め、輸液などが必要になることがあります。
猫のコクシジウム症は人間や犬に感染することはありません。
コクシジウムは肉眼で視認することはできず、顕微鏡でなければ見えないため、定期的な検便は予防につながるでしょう。
猫鉤虫が小腸に寄生することによります。猫鉤虫の虫卵は犬鉤虫とよく似ていますが、区別するのが難しいほどよく似ています。
この鉤虫の口は先が曲がったフック状になっており、それを腸壁に引っ掛けるようにして寄生し、吸血します。
感染猫の便には猫鉤虫の卵が排出され、それが口や鼻から入ってしまうことで感染する他、母猫の乳汁からの感染、皮膚からの感染も考えられています。
成猫では症状らしいものが見られないこともありますが、子猫では食欲低下、体重減少、元気消失、発育不良、貧血、血便(黒っぽいタール状の便)などが見られます。
血便は寄生された腸の場所によって色や状態が違い、小腸の寄生では黒っぽいタール便となるのに対し、大腸や結腸の寄生では赤い血便となります。
これは腸の上部での出血は、排出されるまでの間に酸化して色が黒っぽく変化するためです。
重度の場合は貧血によって危険な状態になることもあり、早めの対処が望まれます。
駆虫薬の投与の他、猫の状況によって抗生剤や輸液などで治療を行い、重度の貧血では輸血が必要になることがあります。
鉤虫は経皮感染も考えられており、人間に感染する可能性はあり得るので、注意が必要です。
猫鉤虫は肉眼で視認することはできず、顕微鏡でなければ見えないため、定期的な検便は予防につながるでしょう。
猫は好奇心旺盛な生き物であり、また、子猫はいたずら盛りです。「これは何だろう?」と何かを口にすることもあるでしょう。そうした時に誤って異物を飲み込んでしまうことがあります。
加えて、猫の舌はざらざらしており、誤飲しやすいつくりにもなっています。
飲み込むものはおもちゃのかけらから紐、布、毛糸、ボタン、針、植物、人間の薬…など様々です。
便と一緒に異物が全部出てくればいいのですが、食道、胃、腸のいずれかに詰まってしまった場合、落ち着かない、よだれ、吐き気、吐こうとするが何も出ない、食欲低下、お腹が膨れる、元気消失などの症状が見られます。
何を飲み込んだのか、詰まっている場所はどこかによって処置は違ってきますが、主に吐き出させる、内視鏡で取り出す、手術をして取り出す、便に出るまで待つなどの選択肢があります。
誤飲したものが尖ったものや紐状のもの、中毒性のあるものなど、内臓を傷つける恐れのある場合や閉塞を起こしている場合は手術が必要となります。
飲み込んだものを吐き出させようと食塩や牛乳を飲ませることを考えるかもしれませんが、かえって危険な状態になる場合があるので、動物病院に連絡をして指示を仰ぎ、速やかに病院へ向かったほうがいいでしょう。
口にすると危険なものは子猫の周りに置かないようにし、何かを齧っている時には観察するようにしましょう。
子猫で気をつけたい病気はこの他にもいろいろあります。冒頭でも述べたように、子猫は各臓器や体の機能が未発達なため、成猫ではやり過ごせそうな症状や病気であっても子猫の場合は急激に悪化することがあるので注意が必要です。
神経質になり過ぎるのはこれまた問題ですが、子猫の場合は少しでも気になる様子が見られる時には早めに動物病院で相談する、または受診することをお勧めします。
どうぞ皆さんが迎えた子猫がすくすくと元気に育ちますように。
(文:犬もの文筆家&ドッグライター 大塚 良重)
【参照資料】
*1 一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラム「猫白血病ウイルス感染症(FeLV)」
https://www.jbvp.org/family/cat/infection/04.html
*2 一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラム「猫伝染性腹膜炎(FIP)」
https://www.jbvp.org/family/cat/infection/05.html
*3 NIID国立感染症研究所「ジアルジア症とは」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/410-giardia.html
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監修いただいたのは…
2018年 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業
成城こばやし動物病院 勤務医
獣医師 高柳 かれん先生
数年前の「ペットブーム」を経て、現在ペットはブームではなく「大切な家族」として私たちに安らぎを与える存在となっています。また新型コロナウィルスにより在宅する人が増えた今、新しくペットを迎え入れている家庭も多いように思います。
その一方で臨床の場に立っていると、ペットの扱い方や育て方、病気への知識不足が目立つように思います。言葉を話せないペットたちにとって1番近くにいる「家族の問診」はとても大切で、そこから病気を防ぐことや、早期発見できることも多くあるのです。
このような動物に関する基礎知識を、できるだけ多くの方にお届けするのが私の使命だと考え、様々な活動を通じてわかりやすく実践しやすい情報をお伝えしていけたらと思っています。