「ウンチ」は“臭い”“汚い”だけじゃない、猫の健康を知るバロメーターなのだ!
「ウンチ」「便」「糞」と聞くと嫌なイメージが先行しがちですが、体の健康度合が表れるのもウンチです。愛猫が少しでも健康でいることを願うのならば、毎日のウンチの観察は欠かせません。猫の健康なウンチって? 異常のあるウンチって? そのために知っておきたい基本を学んでおきましょう。
「ウンチ」「便」「糞」と聞くと嫌なイメージが先行しがちですが、体の健康度合が表れるのもウンチです。愛猫が少しでも健康でいることを願うのならば、毎日のウンチの観察は欠かせません。猫の健康なウンチって? 異常のあるウンチって? そのために知っておきたい基本を学んでおきましょう。
目次
ウンチの硬さや形
ウンチの色
ウンチの付着物・混入物
ウンチのにおい
排便の様子
愛猫の健康管理の一環として毎日ウンチをチェックするには、まず猫の健康的なウンチの状態を知っておかなければなりません。
とは言っても個体差がある他、食べたものによっても違いはあるので、必ずしもこうなるというわけではありませんが、指標として覚えておくといいでしょう。
加えて、愛猫が毎日どんなウンチをしているのか把握しておくことが大事であるのは言うまでもありません。
回数 | 1日に1~2回程度 |
---|---|
色 | 茶色~濃い茶色(食べたフードの色に近い、もしくはやや濃い) |
硬さ | 粘土のように硬過ぎず、軟らか過ぎず、持ち上げても崩れにくい |
量 | 長さは6~8cm以上 |
形 | 粘土で練ったような丸みのある棒状、またはバナナ状 |
水分 | 排便した直後には周りに猫砂がつく程度の適度な湿り気がある |
におい | 猫は完全肉食動物であるため人間や犬と比較するとにおいはややきつい |
排便時間 | 数十秒~1分程度 |
参考までに。猫がごはんを食べてからウンチとして排出されるまでには、12~24時間程度かかるとされます。
次に、愛猫のウンチをチェックする際のポイントですが、それは前出の【猫の健康的なウンチ】の項目とほぼ同じになり、さらに1~2点加えると以下のようになります。
ポイント1
食べたものや食べた量によってもウンチの回数には違いが出てきますが、1日程度ウンチが出ないことも珍しくはありません。明らかにウンチの回数が多い、または少ない場合は何らかの異常が疑われます。
ポイント2
ウンチの色は胆汁に含まれるビリルビンという物質によって左右されます。
胆汁とは、脂肪やタンパク質の消化・吸収には欠かせない弱アルカリ性の黄色い分泌液で、肝臓から分泌され、胆嚢に貯蔵されています。
当然、食べたものによってウンチの色には違いが出てきますが、肉類が多いと腸内はアルカリ性となり、濃い茶色のウンチになるのに対し、食物繊維が多い場合は腸内が酸性となってウンチが薄い茶色~黄色っぽくなります。
ところが、ウンチが赤い、緑色、黒い、白いなど明らかに色が違う時には何らかの異常があると考えられます。
ポイント3
ウンチが緩い、ドロッとしている、水様であるといった場合は下痢と考えていいでしょう。下痢には「小腸性の下痢」と「大腸性の下痢」があるので、ウンチをする回数や量など合わせてチェックすると動物病院で診察を受ける際の判断材料にもなります。
小腸性の下痢 | 大腸性の下痢 | |
---|---|---|
ウンチの回数 | あまり変わらない | 多くなる傾向 |
1回のウンチの量 | 多くなる傾向 | 正常、または少なくなる傾向 |
しぶり | ほとんどない | 見られる |
体重の変化 | 減ることがある | あまり変化しない |
逆に、ウンチが硬過ぎる場合は便秘傾向と考えられます。
ポイント4
たとえば下痢の場合、上記の表のように小腸性の下痢は一回のウンチの量が増加傾向にありますが、一方で大腸性の下痢では何回もトイレに行くものの、ウンチの量が少量になったり、出なかったりすることがあります。
ポイント5
ウンチの水分が多いと下痢気味、逆に少ないと水分の摂取不足や便秘の可能性があります。
ポイント6
ウンチは食べたものや体調によってにおいが変わることがありますが、異様に臭い、酸っぱいにおいがするなど異常なにおいがしていないか確認を。
ポイント7
ウンチをする際にはその猫なりの姿勢やタイミング、癖などあるかと思います。そういった排便の仕方がいつもと変わりないか確認しましょう。
ポイント8
毛づくろいをした毛がウンチに交じっているのは一般的ですが、毛糸や輪ゴム、ボタン、寄生虫らしき虫など他の異物が交じっていないか確認するようにしましょう。
続いて、注意を要するウンチにはどんなものがあるのかを見ていきたいと思います。
便秘と聞くとまったくウンチが出ないイメージがありますが、ウンチの水分量が少なく表面が乾いていて硬過ぎる、ほんの少量しか出ない、小さいボール状のウンチがいくつか出るだけといった場合も便秘の傾向にあると言えます。
便秘の時に腸の動きを改善する目的で食物繊維を与える場合、特に水溶性食物繊維を過剰に与えると逆に下痢を起こすことがあるので量には注意が必要です。
また、不溶性食物繊維にしても与え過ぎは便中の水分量や栄養素の消化率の低下につながるので、同じく量には気をつけたほうがよさそうです(*1)。
軟便、粘液便、水様便などは下痢の状態ですが、食べ物が合わない、寄生虫感染、感染症、腸炎・腫瘍・肝臓病・腎臓病など何らかの病気、中毒、誤飲、ストレス…と原因は様々です。
食事を変更するだけで治る場合もありますが、原因によっては根本の治療が必要になります。
ストレスの場合は環境、騒音、来客、引っ越し、新しい同居猫などストレス要因はそれぞれなので、愛猫にとってのストレス要因を突き止めるとともに、可能な限りそのストレス要因を遠ざける、ストレスを軽減するなどの努力が必要になるでしょう。
ウンチに赤い鮮血が交じっている場合には、大腸から肛門までの下部消化管からの出血と考えられます。
大腸ポリープや細菌感染、寄生虫感染など原因はいろいろ考えられますが、ウンチの周囲に鮮血が付着している場合、肛門や肛門に近い直腸が傷ついて出血している可能性もあります。
ウンチの色が黒い時も血液であることがあり、この場合、食道から胃、十二指腸に至る上部消化管からの出血と考えられ、ウンチとして排出されるまでの間に血液が消化されるために黒い色になります。
ちなみに、黒い血液が混じったドロドロのウンチをタール便、またはメレナと言いますが、こうしたウンチが見られる場合は胃腸炎や胃潰瘍、腫瘍、異物の誤飲などいろいろな原因が考えられます。
ウンチの色が黄土色~黄色っぽい場合は、肝臓や胆嚢、膵臓などにトラブルを抱えている可能性があります。
脂肪がうまく分解できない状態の時には、ウンチが白っぽくなり、肝臓や胆嚢、胆管、膵臓などに病気がある可能性が考えられます。
その他、カルシウムの摂り過ぎでもウンチが白っぽくなります。
ウンチにゼリー状のものが付着、または混じっている場合、腸の粘膜がはがれている可能性があり、消化管にトラブルがあるのかもしれません。
ウンチに細い紐状のものや米粒状のものが混じっている時には、回虫や瓜実条虫、コクシジウムなど寄生虫に感染している可能性があります。
ウンチを動物病院に持参して、駆虫薬を処方してもらいましょう。
ウンチに毛糸やおもちゃの端切れなど異物が見られる時は誤飲の可能性が大です。吐き気や嘔吐など他に症状がないか確認するようにしましょう。
なお、肛門から糸や紐などが見えている場合は、無理に引っ張ると腸内を傷つけてしまうこともあるため、取るのが難しそうであれば無理をせず、動物病院で取ってもらいましょう。
ウンチが腐ったようなにおいがする、酸っぱいにおいがするなど異様なにおいを感じる時には、消化不良や消化器官のトラブル、糖尿病、タンパク質の過剰摂取などいろいろな原因が考えられます。
この場合、便秘が考えられます。
猫ではウンチが1~2日出ないと軽い便秘、3日出ないと便秘と言えますが、慢性的な便秘になると結腸にウンチが溜まり、場合によっては手術が必要になる巨大結腸症につながることがあるので注意が必要です。
便秘の原因には水分の摂取不足、運動不足、誤飲、消化管の閉塞、腫瘍、関節や筋肉のトラブル、神経系のトラブル、ストレスなどいろいろ考えられます。
その他、高齢の猫では関節炎や筋力の低下で思ったように踏ん張りがきかないことに加え、消化管の機能も低下することから便秘になりがちであることは覚えておくといいでしょう。
また、前出のように大腸性の下痢ではいきんでもウンチが出ないこともありますし、トイレの場所や形が気に入らずに排尿排便をしない猫もいるので、状況をよく観察した上、トイレ環境の改善が必要になるケースもあるかもしれません。
以上、愛猫のウンチや排便の仕方を観察し、以下のような様子が見られる時には、可能な限り検便のためのウンチを持参して、すぐに動物病院に行くことをお勧めします。
たとえ上記のような緊急性がなくとも、ウンチに異変があるということはどこかにトラブルがある可能性が高いわけですから、気になる時には早めに動物病院を受診しましょう。
私たちも含め、動物にとって食べたものを消化し、栄養を得た後に残りカスとなったウンチを排出することは生きていく上で自然な営みです。一生続く毎日のことですから、愛猫のウンチの観察を日課とし、どうぞ健康管理にお役立てください。
(文:犬もの文筆家&ドッグライター 大塚 良重)
【参照資料】
*1 Cornell Feline Health Center「Constipation」
https://www.vet.cornell.edu/departments-centers-and-institutes/cornell-feline-health-center/health-information/feline-health-topics/constipation
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監修いただいたのは…
2018年 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業
成城こばやし動物病院 勤務医
獣医師 高柳 かれん先生
数年前の「ペットブーム」を経て、現在ペットはブームではなく「大切な家族」として私たちに安らぎを与える存在となっています。また新型コロナウィルスにより在宅する人が増えた今、新しくペットを迎え入れている家庭も多いように思います。
その一方で臨床の場に立っていると、ペットの扱い方や育て方、病気への知識不足が目立つように思います。言葉を話せないペットたちにとって1番近くにいる「家族の問診」はとても大切で、そこから病気を防ぐことや、早期発見できることも多くあるのです。
このような動物に関する基礎知識を、できるだけ多くの方にお届けするのが私の使命だと考え、様々な活動を通じてわかりやすく実践しやすい情報をお伝えしていけたらと思っています。