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【獣医師監修】猫が毛づくろい(グルーミング)する理由は?
なぜ食後が多い?…

『猫が顔を洗うと……』ということわざはご存じでしょうか。この後には雨が降る、晴れになる、客が来る、といった言葉が続きます。猫と暮らしていると、猫が顔を洗う姿をよく見かけるのではないでしょうか。
単なる習慣に見えますが、毛づくろいにはとても重要な目的があるのです。毛づくろいをする理由やタイミングを知って、愛猫とのコミュニケーションに生かしましょう。

目次

  1. 猫は1日のどれくらい毛づくろい(グルーミング)をするのか

  2. なぜ猫は毛づくろい(グルーミング)をするのか

  3. 猫が毛づくろい(グルーミング)をするタイミング

    • タイミング1.食後

    • タイミング2.くつろいでいる時・くつろごうとする時

    • タイミング3.社会的絆としての毛づくろい

お話を伺ったのは…

くわはら動物病院
獣医師 桑原 岳先生

「No!ストレス」を目指した診断と治療、適切な予防プログラムによる動物たちの健康増進、体全体を見通す『総合診療』、国際水準の『ねこ診療』を基本理念とするくわはら動物病院。平野区で開業して71年。歴史あるホーム動物ドクターとして獣医療活動を続けながら、地域に貢献している。

くわはら動物病院 獣医師 桑原 岳先生

1.猫は1日のどれくらい毛づくろい(グルーミング)をするのか

猫はとてもきれい好きで、どんな猫も1日に何度もペロペロと毛づくろいしています。実際どのくらいの時間、猫は毛づくろいをしているのでしょう。

猫は起きている時間の約24%を毛づくろいに費やしているといわれています。起きている時間は1日10時間程度ですから、1日に2.4時間以上も顔を洗ったり、体をなめたり、爪先を整えたりしていることになります。食事以上に時間を費やす毛づくろいは、猫にとってはライフワークといえるのかもしれません。

しかし、なぜこんなにも時間をかけて猫は毛づくろいをするのでしょう。

2.なぜ猫は毛づくろい(グルーミング)をするのか

猫が毛づくろいをする理由は、大きく分けて次の3つです。

1つ目は身だしなみと健康維持。毛についたニオイや汚れを取り除くことで皮膚病や毛玉から身を守っているほか、毛のもつれを整えることでノミ対策をしています。唾液の蒸発で最大16℃の冷却効果がありますので、夏場は体温降下の目的もあるでしょう。なお、短頭種は毛づくろいが苦手。体温調節しにくいため熱中症には注意してください。

2つ目の目的はリラックス効果。母猫から毛づくろいしてもらった時の安心感を覚えていて、緊張や不安を感じた時に気持ちを落ち着かせようと毛づくろいをしています。

3つ目は愛情表現。頭や首の後ろをなめあって信頼関係を築いています。

3.猫が毛づくろい(グルーミング)をするタイミング

猫の毛づくろいは、健康維持やコミュニケーションに欠かせない行動です。具体的なシチュエーションから猫の気持ちをひも解いていきましょう。

  • タイミング1.食後
  • タイミング2.くつろいでいる時・くつろごうとする時
  • タイミング3.社会的絆としての毛づくろい

タイミング1.食後

もともと捕食動物である猫は、自分で獲物を捕らえて食べていました。その時、一番汚れるのは顔や前肢です。天敵や獲物に匂いを気づかれないよう、食後には必ず毛づくろいを行います。

今では、ほとんどの猫が自力で獲物を捕らえず飼い主さんからご飯をもらっていますが、よく見ているとお皿からご飯をすくって食べたり、転がっていったドライフードを前肢でちょいちょいっと引き寄せたり、好きではないご飯に(架空の)砂をかけようとしたりしています。このように、飼い猫でも食事をすると口周りや前肢が汚れてしまうかもしれません。

猫はご飯を食べ終わると口周りをなめて「おいしかった」と伝えているようですが、実はこれも毛づくろい行動の一環。最初に口周りを軽くなめ、次第にその口を大きく開けながら口周りをきれいにしていきます。その後、前肢を使って口周りをぬぐい、それから前肢を丹念になめきれいにします。その後、きれいになった前肢で口の上、目の上、そして首をかしげながら頭、耳をぬぐっていきます。顔の毛づくろいを行う場合、顔の左側は左前肢で、右側は右前肢できれいにします。

食後の毛づくろいは個体差があります。猫によっては1~2分で済ませる場合や、10分以上かけて行う場合も。お姉さんやお母さんの代わりとなる年長猫がいる家庭で育った甘えん坊猫は、毛づくろいにかける時間が短めかもしれません。
あなたの愛猫は、食後の毛づくろいに何分かけていますか?

タイミング2.くつろいでいる時・くつろごうとする時

くつろいでいる時のグルーミングと、くつろぐ時のグルーミングは異なります。それぞれ違いを見ていきましょう。

◆ くつろいでいる時のグルーミング

食後だけでなく遊び終わった後やトイレの後など、ほっと一息ついた時に体の汚れやニオイを落とし、自分のニオイを自身につけるために毛づくろいを行います。この時の毛づくろいには順番があるようです。

最初に顔を洗い、次いで体を器用にくねらせながら背中からお腹、最後に後肢をピンとバレリーナのように伸ばして肛門や生殖器周囲、後ろ足へと進んでいきます。眠い時には前肢や背中だけをひとなめして、一気に後ろ足にいくことも。

また、飼い主さんになでてもらった後、その部分をこれ見よがしに(?)毛づくろいし始めることがあります。飼い主さんにとってはとても哀しくなる行動ですが、決して飼い主さんを嫌っているわけではありません。
毛の乱れを直し、人間の手のニオイや皮脂を自分のニオイに置き換えるためにしている本能的な行動なのです。

◆ くつろぐためのグルーミング

緊張や不安、葛藤といった心的ストレスを感じた時に、自分自身を落ち着かせるため、くつろがせるために毛づくろいを行います。
じっと猫と視線を合わせると、ふと猫は視線をそらして脇腹などを毛づくろいし始めます。これは緊張をほぐすため、あるいは、不安を軽減させるための本能的行動です。この場合、毛づくろいには一定の順番がなく、ある特定の場所を熱心に執拗になめることが多いようです。

過度の不安や緊張、葛藤を感じてしまった場合は、執拗な毛づくろいが始終行われ、その部分の被毛が短くなったり禿げてしまったりすることがあります。
逆に体調が悪い時には、毛づくろいの回数が減ったり、まったくしなくなったりすることがあります。
このため、毛づくろいし過ぎている場合や反対にその回数が減ってしまったような場合には、どこかに不調を感じている可能性があります。かかりつけの動物病院にご相談ください。

タイミング3.社会的絆としての毛づくろい

親兄弟姉妹といった関係でなくとも、同じ家庭内で育てられた猫たちの間では、互いに相手の毛づくろいをする姿がみられることがあります。この際、自分では直接なめることができない鼻梁から頭部、首の部分にかけてグルーミングしあい、時には耳の中まで行います。

これは猫同士の間で社会的な絆ができている場合に見られるもの。お互いになじんでない場合には認められません。言い換えれば、新参猫が古参猫たちと仲良くなってきたかどうかは、お互いに毛づくろいしているかどうかで確認することができます。手で体を優しくなでてあげていた後や、飼い主さんの就寝時などに体をすりつけながら、人の手を一生懸命なめる行動がしばしば見られます。
どういう気持ちなのかは、これでわかりますよね?

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