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フレンチ・ブルドッグの性格や飼い方のコツ、寿命、なりやすい病気まで全部紹介!

【獣医師監修】フレンチ・ブルドッグの性格や飼い方のコツ、寿命、なりやすい病気まで全部紹介!

日本でも海外でもファンの多いフレンチ・ブルドッグ。
ブルドッグ系らしく小柄でもタフでパワフルなフレンチ・ブルドッグはお洒落な街パリで発展し、庶民の犬として可愛がられてきました。

他犬種に比べてやや病気が懸念されますが、それも持ち前の愛嬌でカバー。キャラクターとしても人気のあるフレンチ・ブルドッグをご紹介します。

1.フレンチ・ブルドッグの歴史

原産国:フランス

イギリスで始まった産業革命の時代(1700年代中頃~1800年代)、機械に仕事を奪われた職人の中には他国へ仕事を求めて移住した人たちもいました。

そうした中で、イギリスのノッティンガムからフランス北部へ渡ったレース職人たちは好んでトイ・ブルドッグを飼っていたことから、移住先にもこの犬を持ち込み、やがてテリアをはじめ、いろいろな犬と掛け合わされてフレンチ・ブルドッグが誕生したと言われています。

かつての仕事は番犬や厩舎のガード、ネズミ捕りなど。

フランスでの呼び名は「ブルドッグ・フランセ」で、「フレンチ・トイ・ブルドッグ」「フレンチ」「フレンチー」「バット・イア」「フロッグ・ドッグ」などと呼ばれたこともありました。

2.フレンチ・ブルドッグの特徴

フレンチ・ブルドッグはブルドッグの系統であることから、小柄でもパワーがあり、飼育するには飼い主さんにもそれなりに体力が求められます。

その一方で、短吻種であるため呼吸器系が弱く、本場フランスの犬種団体「CENTRALE CANINE」では、フレンチ・ブルドッグとのジョギングは向かないと言っているほどです(※1)。

しかし、フレンドリーで愛嬌があり、まるで“おやじ”のような“ぶさかわさ”は愛好家にはたまらない魅力。特に芸術家やクリエイター系の人は触手が動く犬種のようです。

フレンチ・ブルドッグの容姿

フレンチ・ブルドッグの体高は24cm~35cm、体重は8kg~14kg程度。

筋肉質でがっしりした体形をしており、頭部は側望するとこぶしのようで、口吻が極端に短く、鼻はやや上を向いてして、“獅子鼻”と表現されます。

耳はブルドッグ系の中でも特徴的で、コウモリの耳に似ていることから、“バット・イヤ”呼ばれる大きくて丸みのある立ち耳です。

尻尾はやや低い位置についた生まれつきの短い尾。
被毛は体に貼りつくような短毛で、毛色にはフォーン、フォーン&ホワイト、ブリンドル、ブリンドル&ホワイト、パイド、ホワイトなどがあります。

フレンチ・ブルドッグの性格・気質

フレンチ・ブルドッグは遊び好きで活動的な一方、頑固な面もあると言われます。
おおむね子どもにもフレンドリーに接することができる犬種と言われますが、事故が起きないとは限らないので、決して子どもと犬だけにしませんように。

もっとも、犬種にはそれぞれ傾向的な気質や特性、行動というものはありますが、この犬種だからこういう性格をしていると断言できるものではありません。

最近、犬の行動特性は遺伝と関連するものの、犬種との関連はわずか9%にすぎないという研究結果が発表されました(※2)。
つまり、犬種から行動特性を予測するのは難しく、個々に違いがあるということ。

行動は気質・性格とも関係します。それを考えるならば、代々受け継がれたフレンチ・ブルドッグの良さを引き出してあげられるかは、飼い主さんの育て方、接し方や、環境、経験などが大きく関係するということでしょう。

3.フレンチ・ブルドッグを迎える方法

フレンチ・ブルドッグを迎える方法

フレンチ・ブルドッグを迎えるには、主にペットショップ、ブリーダー、動物保護団体・動物愛護センターなどのルートがありますが、その前に知っておきたいこともあります。
それを理解した上で、入手先を決めましょう。

  1. 1.「動物の愛護及び管理に関する法律」により、販売者は対象となる動物を直接見せ、飼育方法などについて購入者と対面した上で文書を用いて説明しなければなりません。これを怠る販売者は避けたほうがいいでしょう。

  2. 2.2022年6月1日より、販売される犬猫にはマイクロチップ装着が義務化されました。犬を購入後は、飼い主さんの連絡先などの情報を変更登録する必要があります。

詳しくはこちら⇒

環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室「令和4年6月1日から開始するマイクロチップ登録制度に関する飼い主の方向けQ&A」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/pickup/chip.html

フレンチ・ブルドッグの入手先

入手先1

ペットショップでフレンチ・ブルドッグを探す

ペットショップで販売される犬は、契約ブリーダー、自社(自家)繁殖の他、多くが生体市場経由で仕入れられた子犬です。
現在、動愛法の改正により、生後56日(8週齢)に満たない子犬子猫は販売できなくなっているので(特例として天然記念物指定を受けている日本犬の場合は生後49日)、子犬の生年月日は確認するようにしましょう。

子犬を選ぶ際には、できれば親犬を見ることができると理想的ですが、ペットショップでは稀と言わざるを得ません。

入手先2

ブリーダーからフレンチ・ブルドッグを購入する

ブリーダーは特定の犬種にこだわりをもって繁殖しており、その犬種についての知識も豊富です。
子犬の価格については、ブリーダー登録サイトは別として、ブリーダーのホームページ上では公開していないケースが多いため、直接問い合わせる必要があります。

予約をすれば見学も可。親犬を見られる率が高い点はプラスポイントです。
なお、場合によっては子犬が産まれるまで数ヶ月待たなければならないこともあります。

入手先3

フレンチ・ブルドッグの里親になる

行き場のない犬はまだまだ多くおり、そうした犬を迎えるのも一つの選択肢です。この場合、すでに成犬であることが多く、老犬である場合も珍しくありません。

入手先としては動物保護団体や各自治体の動物愛護センターなどがありますが、里親になるには一人暮らしや65歳以上の人は不可、その自治体在住者のみなどそれぞれ条件が設けられていることがあるのでよく確認してください。

犬は子犬から飼わなければならないということはありません。成犬でもしつけ直すことは可能です。何より、辛い思いをした分、人の愛情に飢えている犬も多いもの。時間をかけて気持ちが通じ合う一瞬が訪れた時の嬉しさは代えがたい宝となることでしょう。

フレンチ・ブルドッグと暮らしたいと思った時、保護犬の里親になる選択肢も考えてみてはいかがでしょうか。

フレンチ・ブルドッグを迎えるときの費用相場は?

現在、子犬の価格は以前に比べて大幅に高騰しています。したがって、決して安い買い物ではなく、ましてや一つの命を預かるわけですから、熟考の後、犬をお迎えください。

その結果、フレンチ・ブルドッグを迎えると決めた場合、おおむね以下の初期費用がかかります(商品に関しては一般的なものから少々リッチなものものまで含みます)。

フレンチ・ブルドッグを迎える場合の費用の目安

項目 費用の目安
フレンチ・ブルドッグの子犬の価格 26万円~
狂犬病予防注射 3,000円~5,000円程度
注射済票 500円程度
犬の登録料 3,000円
混合ワクチン(5種~10種) 5,000円~1万円程度(※3)
犬用ベッド 5,000円~2万円程度
サークル・ケージ 1万円~5万円程度
食器・水飲み・フード(ドライフード1袋)類 4,000円~1万2,000円程度
トイレ・トイレシート類 6,000円~1万3,000円程度
ブラシ・コーム・爪切り類 5,000円~8,000円程度
首輪・リード類 4,000円~1万円程度
おもちゃ類 1,000円~3,000円程度
合計 約5万円弱~13万円程度+
子犬の価格

※価格はあくまでも目安であり、販売者や子犬の状況、動物病院、商品などの条件によって変動します。
※狂犬病予防法により、犬を迎えてから、もしくは生後91日以上たってから30日以内に狂犬病予防注射を受けることが義務付けられています。ただし、病気や高齢など事情があって接種できない場合は、届け出をすることで免除が可能となります。接種場所は自治体による集合注射と動物病院とがあり、費用に若干の違いがあります。
※2022年6月より環境省管轄の下に新たに始まった「犬と猫のマイクロチップ情報登録」。
狂犬病予防法の「特例(ワンストップサービス)」に参加している市区町村の場合は、この新登録制度にマイクロチップ情報を登録すると、同時に市区町村にも情報が通知され、これをもって狂犬病予防法における登録も済み、マイクロチップが鑑札と見なされます(ただし、別途登録料は必要)。
⇒環境省「動物の愛護及び管理に関する法律に基づく 犬と猫のマイクロチップ情報登録」https://reg.mc.env.go.jp/owner/microchip_registration_system

4.フレンチ・ブルドッグの飼育のポイント

フレンチ・ブルドッグの飼育のポイント

フレンチ・ブルドッグに限らず、子犬にとって大事なことの一つが社会化です。
生後3週齢~12週齢にかけての「社会化期」にある子犬は好奇心が旺盛で、いろいろな物事を吸収しながら犬として生きていく上での基礎を築いていきます。

特にこの時期には子犬にとってトラウマにならない範囲で、人や物、音、環境などいろいろなものに慣らすようにしましょう。

また、フレンチ・ブルドッグは見かけよりパワーもあるため、幼い子どもや高齢者、高齢犬、怪我をしている犬など、不用意に飛びついたり、突進したりしないようしつけることも大事でしょう。

5.フレンチ・ブルドッグのかかりやすい病気・ケガ

フレンチ・ブルドッグは他犬種に比べて懸念される病気がやや多い傾向にあり、病気になりやすい犬種だと言う獣医師さんもいます。

短吻種であるため、特に呼吸器系には注意が必要であり、また、皮膚トラブルが多いことも知られています。その他、眼のトラブルや肥満などにも気をつけましょう。

若齢~成犬

子犬~若い犬では、特に以下のような病気・ケガには気をつけましょう。

  • ・ 短頭種気道症候群

    短頭種気道症候群には軟口蓋過長症や気管虚脱、気管低形成、狭窄性外鼻孔などが含まれる。これらは気道の構造に異常があるため、過度のパンティングやいびき、喘鳴音などの症状が見られ、重度の場合は呼吸困難や失神に陥ることもある。

  • ・ アトピー性皮膚炎

    アレルゲンに対して免疫が過剰に反応してしまうアレルギー性の皮膚炎で、環境要因(ハウスダスト、花粉、カビなど)や遺伝的要因により慢性的な痒みや炎症が生じる。

  • ・ 熱中症

    フレンチ・ブルドッグのような短吻種は呼吸器系の構造が不利で、体温調節がよりしづらく、熱中症になりやすい。暑い時間帯の散歩、車中に残す、閉め切ったエアコンのない部屋などはNG。

成犬〜高齢犬

そして、成犬~高齢犬では、以下のような病気に注意が必要です。

  • ・ 脂漏性皮膚炎/脂漏症

    この皮膚炎には遺伝が関係するものと、内分泌疾患や免疫介在性疾患、感染、炎症、栄養障害などに関連する続発性のものとがある。
    また、皮膚症状にもフケが多く、皮膚がベタベタした脂性のタイプと、皮膚がかさかさに乾燥したタイプとがある。フレンチ・ブルドッグはもともと皮膚が脂漏性であることから、この皮膚炎になりやすいと言われる。

  • ・ マラセチア性皮膚炎

    マラセチアとはカビの一種。皮膚に常在しており、通常は何もしないが、高温多湿、脂漏性の皮膚、アレルギー、他の病気など何らかの条件が揃うと異常繁殖し、ベタベタとした皮膚炎や外耳炎を引き起こす。

  • ・ 椎間板ヘルニア

    脊椎同士の間にある椎間板が変性を起こし、背中の痛みや後肢のふらつきなどの症状が出る。ハンセン1型とハンセン2型があり、重度では後肢の麻痺や排泄困難に陥り、手術が必要になることもある。

  • ・ 腫瘍・癌

    高齢になるほど腫瘍・癌のリスクが高まる。

  • ・ 認知症

    認知症に関連する行動が一つ以上見られたのは、12歳の犬で53%、13歳で70%、15歳では86%という調査報告もある(※4)。食事やサプリメントで認知症予防を心がけるとともに、シニア期に入ったなら愛犬の行動にも注意を。

⇒【獣医師監修】犬の熱中症は危険!応急処置と危険な状況別の対処法

https://www.peppynet.com/library/archive/detail/645

⇒【獣医師監修】犬の認知症の症状とは?予防のコツや介護方法も解説

https://www.peppynet.com/library/archive/detail/891

6.フレンチ・ブルドッグの平均的な寿命は?

フレンチ・ブルドッグの平均的な寿命は?

フレンチ・ブルドッグの平均寿命は10歳~12歳程度と言われます。

参考までに、東京大学の研究チームがペット霊園のデータを使用して行った日本の犬の平均寿命に関する調査(2018年発表)では、フレンチ・ブルドッグでの平均寿命は10.2歳、死亡時の最高齢は15.9歳でした(※5)。

また、同様に一般社団法人 東京都獣医師会霊園協会がペット霊園のデータ(2012年~2015年、1万3,516頭)を基にした調査では、フレンチ・ブルドッグの平均寿命は10.2歳と東京大学の調査結果と同じで、対象55犬種中、最後から3番目に短い寿命でした(※6)。

7.まとめ

フレンチ・ブルドッグはビジュアル、キャラクターともにユニークな犬種です。

彼らを見ていると、「こんな自分でもいいよね」と自分肯定ができそうなほどに心を緩やかにしてくれるところがあり、それが魅力の一つなのかもしれません。

しかし、悲しいかな、同じサイズくらいの他の犬種と比較して寿命が短い傾向にあり、大型犬並みに老化スピードが速いとも言われます。

それだけに、健康管理を十分に行い、より健康的で楽しいフレブルライフをお送りください。

(文:犬もの文筆家&ドッグライター 大塚 良重)

※犬は生き物であるため、寿命や性格・気質、行動、健康度などには個体差があります。

【参照元】
(※1) CENTRALE CANINE「Bouledogue Francais」 https://www.centrale-canine.fr/le-chien-de-race/bouledogue-francais
(※2) ELINOR K. KARLSSON et al. Ancestry-inclusive dog genomics challenges popular breed stereotypes. SCIENCE•29 Apr 2022•Vol 376, Issuehttps://www.science.org/doi/10.1126/science.abk0639#tab-citations
(※3) 公益社団法人 日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査及び飼育者意識調査調査結果(平成27年)」http://nichiju.lin.gr.jp/small/ryokin_pdf/h27.pdf
(※4) 水越美奈、松本千穂、脇坂真美「高齢犬の行動の変化に対するアンケート調査」(動物臨床医学26[3] 119-125, 2017) https://www.jstage.jst.go.jp/article/dobutsurinshoigaku/26/3/26_119/_pdf/-char/ja
(※5) Inoue M, Kwan NCL, Sugiura K. Estimating the life expectancy of companion dogs in Japan using pet cemetery data. J Vet Med Sci. 2018 Jul 18;80(7):1153-1158. doi: 10.1292/jvms.17-0384. Epub 2018 May 24. PMID: 29798968; PMCID: PMC6068313.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29798968/
(※6) 一般社団法人 東京都獣医師会霊園協会「犬の寿命調査/家のワンちゃんどのくらい長生きするの? どのワンちゃんが長生きなの?」https://petreien-a.tokyo/dog/

監修いただいたのは…

2018年 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業
成城こばやし動物病院 勤務医
獣医師 高柳 かれん先生

数年前の「ペットブーム」を経て、現在ペットはブームではなく「大切な家族」として私たちに安らぎを与える存在となっています。また新型コロナウィルスにより在宅する人が増えた今、新しくペットを迎え入れている家庭も多いように思います。
その一方で臨床の場に立っていると、ペットの扱い方や育て方、病気への知識不足が目立つように思います。言葉を話せないペットたちにとって1番近くにいる「家族の問診」はとても大切で、そこから病気を防ぐことや、早期発見できることも多くあるのです。
このような動物に関する基礎知識を、できるだけ多くの方にお届けするのが私の使命だと考え、様々な活動を通じてわかりやすく実践しやすい情報をお伝えしていけたらと思っています。

成城こばやし動物病院 獣医師 高柳 かれん先生

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