【獣医師監修】理想的な犬のダイエット方法
肥満の基準や成功ポイントについて解説
「うちのワンちゃんは太り気味?」そんな心配を一度でもしたことはありませんか。
ダイエットをしようにも、どうすれば良いのかわからない。適正体重はどのくらい?そもそもどうして太っちゃいけないの?
そんな犬の肥満にまつわる疑問を解消しながら、理想的なダイエット方法をご紹介します。
「うちのワンちゃんは太り気味?」そんな心配を一度でもしたことはありませんか。
ダイエットをしようにも、どうすれば良いのかわからない。適正体重はどのくらい?そもそもどうして太っちゃいけないの?
そんな犬の肥満にまつわる疑問を解消しながら、理想的なダイエット方法をご紹介します。
目次
ボディ・コンディション・スコア(BCS)
マッスルコンディションスコア(MCS)
食事面で気を付けること
運動面で気を付けること
愛犬にとってダイエットが必要かどうか、飼い主さんでもなかなか判断は難しいでしょう。
犬の体型における主な考え方を2つご紹介します。
評価方法としてもっともポピュラーなのが、9段階の結果に分けられる「ボディ・コンディション・スコア」(以下、BCS)です。
このBCSによって、ダイエットの必要性やふさわしいタイミング、ダイエット方法などを獣医師とともにプランニングしていくのがベスト。
実際にどのように測られ、どのような診断基準なのかを見ていきましょう。
① 体を横から見て、ウエスト部分にどのくらいくびれがあるかをチェックします。
② 体を上から見て、ウエスト部分にどのくらいくびれがあるかをチェックします。
③ 肋骨をなでて、どのくらい骨が浮き出ているかをチェックします。
④ ウエストの部分を触り、どのくらいくびれがあるかをチェックします。
⑤ 腰の骨を触り、どのくらい浮き出ているかチェックします。
ダイエットのプランニングには、「マッスルコンディションスコア」(以下、MCS)を取り入れることもあります。これは犬の筋肉量を確認するためのもので、目視検査と頭部、肩甲骨、背骨、腰椎などの触診によって評価されます。
かかりつけの獣医師によって評価してもらえるようであれば、愛犬の体型を知る一つの材料としてMCSを取り入れてみるのもおすすめです。
正常な筋肉量 | 頭部の咀嚼筋はやや失われている。肩甲骨、背骨、大腿骨、肋骨がうっすらと浮き出ている。 |
---|---|
軽度の 筋肉量低下 |
頭部の咀嚼筋は緩やかな丸みを帯びている。肩甲骨、背骨、大腿骨、肋骨は適度な筋肉に覆われていて、浮き出ていない。 |
中程度の 筋肉量低下 |
頭部の咀嚼筋はかなり失われ、側頭部にわずかなへこみが見える。肩甲骨、背骨、大腿骨、肋骨は明らかに浮き出ている。 |
重度の 筋肉量低下 |
頭部の咀嚼筋はほとんど失われ、側頭部にはっきりとしたへこみができる。肩甲骨、背骨、大腿骨、肋骨に筋肉はほとんどなく、骨と皮ばかりの体である。 |
犬が太ってしまう原因は、日常の様々なところに潜んでいます。
思い当たることはありませんか?ここであらためて、愛犬との毎日を振り返ってみましょう。
原因1
一般的な飼育犬の運動量は、本来犬が必要としている運動量と比べるとあきらかに不足しています。みなさんが日頃されているお散歩では、しっかりと“運動”ができているでしょうか。
遊ぶことが目的のカジュアルな“散歩’’と、健康維持が目的の“運動”は別物であることを認識することが大切です。
原因2
市販のドッグフードには犬種や体重別に参考給餌量が表示されていますが、それはあくまでも参考量。本来ドッグトフードの給餌量は犬種や体重に加え、そのときの健康状態や運動量、理想的な体重との解離具合も含めて決めるのが正しい方法です。
この正しい食事量が守られないとカロリー過多になってしまうことがあり、それはやがて肥満へとつながるのです。
原因3
室内での飼育が主流になった現代、犬と飼い主との距離は非常に近くなりました。そのため、犬の要求が飼い主に通りやすく、本来の食事以外のものを口にする機会も多くなっています。
おやつのおかわりをおねだりされて、ついつい応じてしまったことはありませんか?
それこそが太る原因なのです。
犬が太ってしまう原因は、前述のとおり運動不足や過食・ドッグフード以外のものを口にすることによるカロリーオーバーです。
つまり、愛犬が太るか太らないかは飼い主さんの意識と飼育環境によるもの。
犬種にかかわることなく、どの犬にも適切な体重管理を心がけることが大切です。
肥満が犬の健康を脅かすのは確かなことですが、正しい知識のない乱暴な減量も非常に危険です。食事・運動それぞれのダイエットにおける大切なポイントを見ていきましょう。
ポイント1
まずは愛犬の現状を正しく知りましょう。そのうえで獣医師とともに適正体重を算出し、一日に摂取するべきカロリーをしっかりと把握します。
ポイント2
それまでのドッグフードを見直し、ダイエットフードをスタートさせます。ただし、突然全ての食事を変えるのではなく、緩やかな移行期間を設けることが大切。
まずは食事全体の4分の1量を1〜2日間ダイエットフードに。さらに2日間は2分の1量に増やし、最後の2〜3日間は4分の3程度に。このように一週間ほどゆっくりと時間をかけてダイエットフードへ切り替えていきましょう。
最新の栄養学をもとに作られたダイエットフード。ビタミンB群と亜鉛を豊富に含む良質なラム肉を使用。
満腹感を得ながら減量できる、低脂肪設計の超小型犬用フード。適切な量のタンパク質が筋肉量を維持します。
高品質なチキンを主原料に、フルーツや野菜などの天然素材で仕上げたダイエットフード。
栄養バランスを損なうことなく、おいしい食事を。
サーモンをタンパク源とした、シニアや肥満犬をターゲットにしたライトレシピのフード。小粒タイプで食べやすい!
合成保存料や着色料、人工添加物は不使用。
低脂肪・低タンパク・低カロリーで、体重を健康的にコントロールしたい避妊・去勢犬向けのフードです。
ポイント3
こまめに体重を測定しながら、丁寧に経過観察をしていきます。
ダイエットフードを始めてから90日以内に望ましい体重減少が見られない場合は、一日の摂取量やフードのタンパク質の配合などを見直す必要があるでしょう。
ポイント4
人間の食事を与えることが習慣化してはいませんか?
例えば30g程度のチーズひとかけらでも、犬にとっては人間がハンバーガー1.5個分を食べるのと同じくらいのカロリーに相当すると言われています。
「ダイエット中だけどたまにはいいか…」。そんな油断は決してせずに、それまでの悪しき習慣を断つ強い意志を持ちましょう。
ポイント1
ここでいうウォーキングは、遊びを目的とした“散歩”ではなく、健康維持を目的とした“運動”です。このウォーキングは、おそらくみなさんが日常的に行っている散歩とは、歩くペースが大きく違うでしょう。
米国の「ペット肥満予防協会(Association for Pet Obesity Prevention)」が推奨しているウォーキングのスピードは、1マイルあたり約15分。つまり、約1.6kmの距離を15分間で歩く程のスピードです。ペットの年齢や健康状態にもよって変わりますが、まずはこの認識がポイントとなるでしょう。
ポイント2
外でウォーキングをしたり走り回ったりすることだけが運動ではありません。水泳やボール遊びも立派な運動であり、それは犬種や年齢、性別、身体能力、知的関心によって適したものが変わります。
トレッドミルのようなマシンも、外で運動ができない事情のある犬にとっては非常に効果的なアイテム。愛犬にとって最適な運動方法を見つける工夫をしてみてください。
アジリティがはじめての犬でも、挑戦しやすいように作られています。飼い主さんも一緒に楽しめちゃう!
予測不能な動きに興味津々!転がるストーンを追いかけながら、しっかりと体を動かすことができます。
ポイント3
一般的に、一日の運動時間として30分設けることが推奨されています。愛犬にとって適した運動方法が決まったら、ぜひこの時間も目標に置いてチャレンジしてみてください。
ダイエットを成功させるポイントとしては、愛犬の現状を正しく把握すること。そして、自己流は避け、定期的に獣医師との連携を図ることです。
日々の食事量やその内容、愛犬の様子などとともに、目標体重に向けた体重の推移を記録するなどこまめに経過観察をしましょう。
たとえしっかりと経過観察をしていても、飼い主だけがそれを見ながら自己流ダイエットを進めていてはあまり意味がありません。専門家である獣医師にも経過を共有し、愛犬の健康を守る“伴走者”になってもらいましょう。そうすることによって、適切なダイエットプランの継続や見直しを図ることができます。
ダイエットをする際に絶対に注意しなければいけないのが、過度な食事の減量にならないようにすること。「早く結果を出したい!」そんな焦りからつい、急に食事量を減らしたり、減らす量を極端に多くしたりしてしまいがちですが、これは非常に危険です。このようなクラッシュダイエットによって、肝不全などの深刻な病気を引き起こしてしまう可能性があります。
犬にとって体重を減らすということは、それほど簡単なことではありません。3~6か月間ほどを目標達成期間として、獣医師と相談しながら、段階的で安全なダイエットになるよう心がけましょう。
ここまで犬のダイエットについてお話をしてきましたが、そもそもなぜ犬を太らせてはいけないのでしょうか?
それは、肥満は“万病のもと”、つまり愛犬の寿命にも大きく影響する非常に危険なものだからです。
肥満状態にある体の中を覗いてみると、内臓にはたっぷりの脂肪が。そして、その蓄積された内臓脂肪からは炎症性の物質が放出され続け、実は体内では、症状に出ないレベルの軽度な炎症状態が続いています。さらにその炎症が長く続くことによって、やがてさまざまな病気を引き起こすのです。
場合によってはインスリン注射や血圧薬の投与など、長期にわたって大変な治療を続けていかなければいけないものです。しかしどの病気も、適切な栄養と運動による体重の維持によって予防できることが多いといわれています。
肥満状態のペットにはよく見られるもので、犬の腰、膝、肩、ひじに重度の関節炎を引き起こします。犬にとってその痛みはとてもつらいもの。関節炎が原因となり、衰弱に苦しむケースもあります。
近年ペットの高齢化とともにがんは死因の上位を占めていますが、肥満がもたらす慢性炎症とがんの発生の因果関係が近年注目されるようになってきました。
犬の肥満は、命をも脅かすとても恐ろしいもの。
しかし、飼い主さんが肥満に対するリスクを理解し、食事や運動などにおける飼育環境を正しく整えることによって、愛犬の健康寿命を長くすることができるのです。
大切なのは、まずは“太らせない”こと。
そしてもしも太ってしまったら、自己流ダイエットは避け、獣医師と一緒に計画的にダイエットを進めていきしょう。
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監修いただいたのは…
獣医師
小林 元郎先生
成城こばやし動物病院
(https://feegoo-seijo.com)代表
(公社)東京都獣医師会副会長
東京城南地域獣医療推進協会理事
1986年 北里大学獣医畜産学部獣医学科卒業
1990年~1991年 New York州Animal Medical Centerにて研修
1993年 成城こばやし動物病院 開業