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動物医療グリーフケアから学ぶ犬とのハッピーライフのヒント

第7回

オンリーワンのペットと生きた時間は
人生を支える永遠のお守り

動物医療グリーフケアアドバイザー 獣医師 阿部 美奈子先生

お話し

動物医療グリーフケアアドバイザー
獣医師 阿部 美奈子先生

ペットや飼い主さんの「心」を 元気にする獣医師として「動物医療グリーフケア」を実践しています。現在はマレーシアに滞在しながら毎月、日本と往復し全国の動物病院での診療及び各種セミナー活動に力を注いでいます。

動物医療グリーフケアって?

ペットとは「人と出会い一緒に暮らし、親愛なる存在となっている動物」を意味します。
多くの場合ペットは、人と出会う前に「産みの母親や兄妹」「母親や兄妹と一緒に過ごした場所」から離れる「最初のグリーフ」を体験しています。飼い主となった皆様と奇跡的に出会えたことが「最初のグリーフケア」だと言えるでしょう。ペットは出会った人と共に暮らすお家が安全なホームとなり、ハッピーライフを送ります。
そしていつの日か最期の時を迎えます。しかし、生きてるときも亡くなってからも「生活の質=QOL(Quality of life)」を守りたい。これこそが「動物医療グリーフケア」の目指すものです。

1.ペットロスは自然な心の反応

皆様、こんにちは。マレーシア在住、獣医師の阿部美奈子です。
第7回と第8回では、オンリーワンのペットと出会えた幸運について改めて共有しながら、ハッピーライフだからこそ生まれるのがグリーフであること、悲しく辛いのは愛しているからこそ生まれる「愛の証」であることをお伝えしていきたいと思います。

ここまでのコラムを通して「動物医療グリーフケアってなに?」と感じていらしたみなさんも、わが子と自分のハッピーライフを守るためには何よりも大切な視点だと気付かれたでしょう。わが子と自分の距離が近づき、わが子の気持ちが以前よりもっとわかるようになったのではないでしょうか。
「ペットロス」という言葉は30年くらい前に欧米より入ってきて、現在では身近な言葉です。でもどういうことかを学ぶ機会が少ないために、心の病気のようなイメージを持っている人も少なくありません。だからこそ「ペットロス」になったらどうしよう…「ペットロス」にならないためにはどうしたらよいのだろう…と不安が高まっていきます。

でもこれほどまでに自分にとって重要な存在となったペットの死後にグリーフが生まれるのは、決して病気ではなく自然な心の反応だと、読者のみなさまにはお分かりいただけるでしょう。

ペットロスに関するアンケート

ペットとの暮らしにいつかは訪れるお別れの時。ペピイ会員の約80%が「ペットロス」を経験していました。そしてさらに深い悲しみから「ペットロス症候群」になった方は45.5%。誰もが不安に感じるお別れについてアンケート結果をもとに、支えとなったことや準備していることをご紹介します。

・「ペットロス」:愛犬・愛猫を亡くしたことで生じる悲しみ。誰にでも起こりえる当たり前の心の反応
・「ペットロス症候群」:ペットロスが重症化し、身体的・精神的に様々な症状が現れること
(2022/8/16実施 ペピイメルマガ会員・回答数 2527人)

1.ペットロスを経験しましたか?
ペットロスを経験しましたか?

ペットロスは誰にでも起こる自然なことであり、多くの方が経験をしています。

2.ペットロス症候群を経験しましたか?
ペットロス症候群を経験しましたか?
3.悲しみを打ち明ける人はいましたか?
悲しみを打ち明ける人はいましたか?

多くの方が、家族やパートナーといった身近な人と悲しみを共有していました。そして、ペットを亡くしたことのある友人・知人が支えとなったという意見も。ペットを愛する同じ気持ちを理解してくれる経験者の言葉は大きな癒しを与えてくれたことがアンケートからもわかります。

4.ペットロス症候群になるかもしれない不安はありますか?
ペットロス症候群になるかもしれない不安はありますか?

約85%の方がお別れの際に自分が深い悲しみを経験するかもしれない不安を抱えています。
その「お別れ」に際して、準備していることを聞いてみました。
・いつかお別れが来ると意識している
・毎日を大切にしている
・たくさん写真を撮ったり思い出をつくっている
・後悔のないように、自分にできることをやる
・ペットロスに関する書籍・ブログなどを読んで心構えをしている

絶対に避けられないからこそ、その時までを幸せにそして感謝の気持ちでお別れできるように今を大切にしている飼い主さんの温かい気持ちが伝わってきました。
今回ご紹介する「動物医療グリーフケア」にもまさに、うちの子と最後まで、そしてお別れしてからも笑顔で一緒に過ごしていくヒントがたくさんつまっています。ぜひ、ご家族とご覧ください。

グリーフ(ペットロス)の心理過程
グリーフ(ペットロス)の心理過程

ペットが生きている間に起こるグリーフの際は「衝撃期から回復期」、死別の際は「衝撃期から再生期」へと進みます。衝撃期・悲痛期は、大変心が痛み苦しい時間ですが、回復期を迎える頃には亡くなったペットが自分にとってどれほど大事だったのか、ペットと自分の心の絆の存在に気付くのです。

2.悲しむことは愛すること

動物たちの命は、人間よりも短いことは頭ではわかっていても心が受け入れるのはとても難しいことです。それほどわが子との別れは信じたくない、信じがたい現実だからです。
もし他の人から「寿命なのだから別れが来ることをわかっていたでしょう」というような気持ちで受け入れを急かされてしまうと、心が壊れそうになってしまうかもしれません。

励ましや慰めの言葉を周囲に求めるより、グリーフを理解し共有できる人を見つけておくことがとても大切です。ペットは私たちにとって生きる上でとても重要な存在です。そのため、愛情の大きさだけグリーフは大きくて当然と受け入れ、グリーフを否定をしないようにしましょう。
自分の心を守りながら回復させていくのがグリーフの心理プロセス。大好きだったペットは離れていくことはなく、生前と同じようにあなたのそばにいるから安心してありのままの気持ちを伝えましょう。

グリーフの理解
グリーフの理解

ゆっくりとお別れをして「いっぱい愛していたこと」を伝えましょう。

3.ペットの尊厳を守るエンジェルケア

うちの子に似合う花の色、好きな食べ物、おもちゃを家族でたくさん話しながら飾ったり、気持ちを手紙にしたり、手形・鼻スタンプ。その子が好きだった場所に行く、大好きだった人に会う。亡くなってからもうちの子との時間は流れています。
人はいろいろな場面でグリーフに直面しますが、どんなときもそばで弱った心を癒してくれたペット。亡くなってからも彼らはグリーフを可愛い寝顔で癒してくれるのです。

十分にお別れの時間を
  • 「かわいいね」「いい子だよ」と褒めてあげましょう。
  • 涼しいお部屋で保冷剤を利用したり、凍らせたペットボトルを抱き枕にしても良いでしょう。
  • 「大好きだよ」「ありがとう」「会いたいよ」率直な気持ちを伝えましょう。
  • 頭や体を撫でてあげましょう。
オガちゃん
自分のグリーフを話せる誰かを見つけておく

自分とわが子の心の絆をわかってくれる人はグリーフを決して否定せず、耳を傾け、共感してくれるでしょう。ペットが人の心を支えてくれるエネルギー源だとすると、ペットの死で生まれる大きな喪失感は避けられないからです。

ペットロスは病気ではないと認識する

ペットロスは自然な心の動きであり、誰もが体験するグリーフ。でもその強さや深さなど表現は個々に違い、ペットロスもオンリーワンなのです。

次回は、生前のペットロスのケアについてと、阿部先生のハッピーライフストーリーをご紹介します。

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