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【獣医師監修】犬の歩き方がおかしい?その原因や症状別の対処法を解説

歩き方がおかしい

足を引きずって歩いたり、地面から浮かせたままだったり、不自然に腰を振って歩いていたり……。愛犬の歩き方がおかしいと感じたら、すぐ動物病院で調べてもらいましょう。足腰の病気は、足についたダニから遺伝性のものまで多岐に渡ります。外傷は比較的見つけやすいですが、関節や脊椎などのトラブルは外から見えないだけに、素人判断は禁物です。

犬の歩き方がおかしい主な原因として、以下が考えられます

□ 外傷:指の間の炎症やダニ、高所からの落下や交通事故による骨折などの可能性があります。
□ 関節炎:骨関節炎は、加齢とともに進行する病気です。発症すると足を引きずるしぐさが見られます。
□ 腫瘍:骨に腫瘍ができる骨肉腫や関節を侵す滑膜肉腫、脊髄腫瘍などがあります。
□ 靭帯断裂:事故、激しい運動による衝撃、老化、肥満、などで起こる前十字靭帯断裂があります。
□ ヘルニア:ミニチュア・ダックスフンドでは椎間板ヘルニアが多発します。
□ 遺伝性疾患:レトリーバー種では股関節形成不全、小型犬では膝蓋骨脱臼が多く見られます。

目次

お話を伺ったのは…

南大阪動物医療センター 病院長
獣医師 吉内 龍策先生

「人と動物の絆」をより良い形で守りたいと動物医療に邁進。膝蓋骨脱臼について研究をされているスペシャリスト。「両側膝蓋⾻脱⾅が進⾏して⾃信をなくしてしまった⼦が、⼿術をして⾛れるようになり、明るい顔で⽣き⽣きしているのを⾒ると本当にこの仕事をしていて良かったと思います。何より、愛⽝のことを⼼配して暗い顔をしておられたご家族の皆様に、笑顔が戻ることが何よりの励みになります」。

南大阪動物医療センター 病院長 獣医師 吉内 龍策先生

犬の前足や後ろ足がおかしい原因は?

ケース1.外傷

足を地面につけず浮かしているのは、痛みがある証拠。肉球に何か刺さっていないか、指の間が炎症を起こしていないか、ダニが食いついていないか、爪が折れていないかを確認してください。また、高所からの落下や交通事故で骨折している可能性もあります。

ケース2.関節炎

骨関節炎を発症すると、関節に痛みや変形、こわばりが生じるため、足を引きずるしぐさを見せます。肩や前足に関節炎があれば(肩や前足が罹患すると)、不自然に頭を上下させて歩くこともあります。進行性の病気のため、早期発見し、悪化を抑える適切なケアが必要です。

ケース3.腫瘍

骨肉腫の場合は、負重時に強い痛みがあり、進行すれば自然骨折を起こすことさえあります。転移の可能性がきわめて高く命にかかわります。また、激しい関節の腫れが、関節炎ではなく滑膜肉腫のこともあります。神経組織に発生する腫瘍では発生部位によってさまざまな症状が認められますが、特に脊髄腫瘍では四肢の麻痺が徐々に進行するため、病初には歩き方がおかしいと感じるだけですが、進行すると上手く歩けなくなり、命にかかわります。

ケース4.靭帯断裂

後ろ足で踏ん張るのを嫌がる、片足を上げたまま着地しないという場合は、前十字靭帯損傷の可能性があります。大型犬に多く発生し、最近では遺伝性疾患の疑いも持たれています。肥満傾向のある小型犬での発生も多く、肥満や加齢、クッシング病などがリスク因子と考えられています。

ケース5.ヘルニア

ダックスフンドでは椎間板ヘルニアの発生頻度が際立って高くなっています。症状は、抱き上げる時にキャンと痛がる、ヨタヨタ歩く、立っている時に足先が裏返って足の甲で着地している、など。重症の場合は速やかな減圧手術が必要です。

ケース6.遺伝性疾患

大型犬では股関節形成不全、小型犬では膝蓋骨脱臼が多く見られます。股関節形成不全の場合は腰を振るような歩き方や横座りなどの症状が見られ、膝蓋骨脱臼の場合は走っている時にスキップするように片足を着地しない程度の症状しか見られず、多くの場合これといった症状もなく進行し、徐々に不自然な歩き方が顕著になってきます。

犬の歩き方がおかしい時のチェックポイント

犬は多少の痛みがあっても、大好きな散歩に行けるのなら、平気な顔をして大喜びで出かけます。飼い主さんもご自身の膝や肩・腰が痛いと感じた時、言葉にしなければ周りの人に気づいてもらえなかったという経験をお持ちではないでしょうか。言葉を話せない愛犬の痛みや不調に、いち早く気づいてあげることで、さまざまな対策を立て、改善につなげていくことができます。愛犬のSOSのサインを見逃さないように、日ごろから立ち上がる姿や歩いたり走ったりする様子をよく観察し、「何か変!」と思ったら、動物病院にご相談ください。

□ 足を引きずっている
□ 地面から足を浮かせている。また片足を着地させず走っている
□ 歩くとふらつくことがある、立ち上がりがつらそうに見える
□ 走ったり、飛び跳ねたりしない
□ 不自然に腰を振って歩いている
□ 膝を崩して座るなど横座りをしている
□ 歩くのを嫌がる(散歩に行きたがらない)
□ 尾を下げていることが多くなった
□ 階段やちょっとした段差を昇るのを嫌がる。また動作がゆっくりになる
□ 飼い主さんや他の犬と、またはおもちゃで遊ぼうとしなくなった
□ 家の中や外であまり動かなくなった
□ ソファ、イス、ベッドなどの高いところの昇り降りをしなくなった

犬の歩き方がおかしい場合、考えられる病気

犬の足に関する病気といっても症状はさまざまです。代表的な7つの病気をくわしく見ていきましょう。

1つ目.股関節形成不全

1つ目は、ゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバーなどの大型犬に多く発症している遺伝性疾患「股関節形成不全」。腰を左右に振って歩く<モンローウォーク>や横座りが典型的な症状で、両後ろ足で同時に地面を蹴るウサギ跳びのような走り方をすることもあります。症状が軽ければ、消炎鎮痛剤の投与や食事管理で経過観察しますが、重症の場合は外科手術が必要に。

2つ目.肩関節不安定症

2つ目は、トイ・プードルに多く発症している「肩関節不安定症」。中型犬に多く見られますが、小型犬でも発症します。立っている時に前足を少し浮かせる、頭を上下させながら歩くのが主な症状。生まれつき肩関節の形成が悪い場合や、過度の運動で肩関節を慢性的に痛めた場合、肩関節がゆるくなって起こります。休むと痛みは軽減しますが、動くと再発を繰り返します。とくにトイ・プードルでは、肩関節不安定症から肩関節の脱臼に至る症例が多く見られます。軽症の場合は鎮痛剤と運動制限で治療しますが、悪化した場合は手術で固定します。

3つ目.膝蓋骨脱臼

3つ目は、「膝蓋骨脱臼」。膝蓋骨とは膝のお皿のことで、正しい位置から外れてしまった状態を膝蓋骨脱臼といいます。遺伝性のものと、打撲や落下などで起こる後天性のものがあり、遺伝性のものはトイ・プードルやチワワ、ヨークシャー・テリア、豆柴などの小型犬で発生頻度が高くなっています。主な症状は、横になっていて立ち上がった最初の1-2歩で片足を床につけない、走っている時スキップするように片足を着地しない、など。骨格の発育期に脱臼が始まった場合は急速に進み、成犬になってから始まった場合はゆっくり進みますが、肥満や運動の環境によって進行には大きな差が見られます。進行してしまうと手術が必要になりますので、早いうちに膝蓋骨脱臼に気づき、体重管理や床材の変更によって進行を抑えることが重要です。

4つ目.骨関節炎

4つ目は、高齢犬に多く見られる「骨関節炎」。肥満と加齢が主な原因で、一度発症すると完治することができない進行性の関節疾患です。体重の負荷や関節の不安定から関節面の軟骨が摩耗し、骨同士が互いに接触することで発生。関節に痛み、変形、こわばりが生じるため、足を引きずる、きちんとお座りができず足を崩す、などの症状が見られます。基本的に体重管理と運動療法で治療しますが、痛みが強い場合には非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)や関節軟骨の修復を助ける注射薬を使用する場合もあります。グルコサミンやコンドロイチン、抗炎症脂質などのサプリメントが症状緩和に有効な場合もあります。

5つ目.前十字靭帯断裂

5つ目は、「前十字靭帯断裂」。大型犬に多く発生しますが、肥満傾向のある小型犬の発生も増加している病気です。犬は起立時でも膝が一定の角度に屈曲しており、常に後ろ足にある前十字靭帯に負荷がかかっている状態。肥満や加齢によって強度が落ち、前十字靭帯に外力が加わることで発症します。前十字靭帯の傷害は代表的な関節疾患の1つ。大型犬の場合は外科手術が必要になるケースが多くあります。

6つ目.肉球、指の間、爪などの傷や炎症

6つ目は、「肉球、指の間、爪などの傷や炎症」。犬が足を地面につけず浮かしているのは痛みがある証拠ですので、足裏をチェックしてください。肉球に何かが刺さっていたり、指の間が炎症を起こしていたり、ダニが食いついていたり、爪が折れていたり、とさまざまなケースがあります。

7つ目.椎間板ヘルニア

7つ目は、ミニチュア・ダックスフンドでとくに多い「椎間板ヘルニア」。初期段階では、抱っこや背中を触られることを嫌がります。患部が腰椎の場合は、歩くと足がふらつく、引きずる、足先が裏返って足の甲を地面につけている、などの症状が見られます。軽度のうちは鎮痛剤や抗炎症剤の投与と運動制限で症状緩和を図りますが、改善が見られなければ外科手術を行います。

8つ目.その他

上記7つのほか、落下や交通事項による骨折、免疫異常による免疫介在性関節炎、コーギーに多い変性性脊髄症、骨肉腫や脊髄腫瘍をはじめとする腫瘍、加齢が原因で起こる突発性前庭障害、水頭症や認知機能低下といった脳の病気が起因しているケースもあります。
遺伝的な素因に基づく関節疾患は多く、⽝種ごとにどのような疾患にかかりやすいか予備知識を持っていることが⼤切です。問題が⾒つかれば、それに応じた滑らない床対策、段差対策、運動制限、体重管理、サプリメント等の給与を⾏いますが、まずはふだんから写真や動画で撮影したり、スキンシップを大切にしたりして、言葉にできない「痛い」をくみ取ってあげてください。そして少しでも「おかしいな」と感じたら放置せず、すぐ動物病院に連れていきましょう。早期発見が愛犬の痛みを取り除き、病気の改善あるいは進行を遅らせる近道になります。

犬の足腰を守る6つの予防法

滑らない床を作ることや肥満を避けることはすべての足腰疾患に対し、予防的で有効です。また、健全な骨格や筋肉の発達に運動は不可欠ですので、適度な運動を心掛けましょう。

予防法1.滑らない床を作る

滑りにくく、クッション性があるマットで滑らない床を作りましょう。防水加工を施してあるマットやタイルマットを選ぶと、掃除がしやすく、フロアを清潔に保つことができます。

予防法2.ステップやスロープで段差を埋める

ステップや滑り止め加工を施したスロープで段差を埋めると、飛び上がる必要がなくなり、膝や腰への負担を軽減できます。

予防法3.サプリメントで足腰強化

ペット用サプリメントで関節を強化してあげましょう。なお、サプリメントは栄養補助食品ですが、心配な場合は使用前に獣医師にご相談ください。

予防法4.動画や画像で日々記録する

毎日チェックするのは大変。そんな時は週1回でもいいので散歩中や自宅で遊んでいる時、食事中など愛犬の様子やしぐさを撮影して記録しておきましょう。獣医師さんに説明する時にも役立ちます。

予防法5.スキンシップを大切にする

愛犬との触れ合いやマッサージなどを習慣づければ異変にも気づきやすくなります。まずは、優しくなでてあげるだけでも大丈夫。気になる箇所がないかチェックしてあげましょう。

予防法6.体重管理をする

肥満は足腰に負担がかかります。月に1度は体重を測定し、定期的にフードやおやつの内容を見直しましょう。

まとめ

「運動器」の問題は、遺伝的な素因、加齢性の問題、体重管理の問題、運動環境の問題に集約されます。⽝種ごとにどのような疾患にかかりやすいか、年齢のせいとあきらめていないか、肥満にしていないか、安⼼して運動できる環境が⽤意できているかなど、日常生活の在り方を今⼀度⾒つめ直してみることが⼤切です。愛⽝とともに過ごす活動的で楽しい毎⽇は、かけがえのない⽇々になるに違いありません。

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