監修いただいた先生
人と動物の防災を考える市民ネットワーク
特定非営利活動法人ANICE(アナイス)理事長
東京都獣医師会 顧問
博士(応用生命科学)
平井 潤子 先生


たくさんの活断層に囲まれた日本に住んでいるなら、地震対策は必須です。
阪神淡路大震災や東日本大震災の被害を覚えていらっしゃるでしょうか。
能登半島地震で、地面が波打ち、建物が揺れる映像をご覧になった方もいらっしゃると思います。
今後30年以内に南海トラフ三連動地震が発生する確率は、これまでは「70%~80%」としていたものを、「80%程度」と引き上げられていて、政府は大規模地震への備えを進めるように注意喚起しています。
政府広報オンライン
南海トラフ地震に備えよう!南海トラフ地震臨時情報が発表されたら?
https://www.gov-online.go.jp/article/202501/entry-7050.html
また最近では地球温暖化の影響を受け、毎年のように降雨量、風速が過去の記録を上書きする台風や線状降水帯が発生していて、油断はしていられません。
環境省 調査報告資料 地球環境局総務課気候変動適応室
「気候変動による災害激甚化に関する影響評価結果について~地球温暖化が進行した将来の台風の姿~」(2023.07.21公表)
「勢力を増す台風 ~我々はどのようなリスクに直面しているのか~ 2023」
000147982.pdf (env.go.jp)
だからこそ、あなたと家族とペットを守るための対策を、この記事を読んだ今日から始めていただきたい。それが、ペピイからの提案です。

ペットの災害対策の考え方として、3つのR「事前の準備(Ready)」、「速やかな避難行動と避難生活(Refuge)」、「飼い主責任(Responsibility)」で備えます。
災害が発生してからあわてるのではなく、平時に対策しておくことが重要です。
ポイントは「①我が家オリジナルの災害対策」、「②ハードとソフトの備え」、「③優先順位」の3つです。
飼っている動物数やそれぞれの年齢、健康状態、家族構成や住居の形態、ライフスタイルや立地条件、災害が発生した時間帯によって、考えておくこと、飼い主が取るべき行動は変わります。
まずは家族や助け合える仲間と防災対策会議を開き、自分と家族とペットの問題点を洗い出せば、必要なことや物が見えてきます。
話し合って決めたことは「アクションカード」に記入していつも携帯しておく他、室内の見えやすい場所に貼っておき、とっさの場合にも慌てず行動できるように備えます。
※アクションカードとはいざという時に慌てず行動できるよう、あらかじめやることをまとめておくカードです。

ハード(物)の備えとして水や食料、飼育用品等の備蓄品を用意し、ソフト(こと)の備えとして、飼い主家族の集合場所や連絡方法、飼い主が出かけている時にはどうするのか、といった対策を話し合っておきます。
ペットを飼い始めたその時から、犬であればしつけや社会化、ハウストレーニング、犬猫共に健康管理や迷子対策等を行うこと、いざという時の預け先を確保しておくこともソフトの備えとして、飼い主にしかできないペットの防災対策になります。
更には、避難所から仮設住宅、復興住宅へと居場所のステータスが変わっていくことを前提として、複数の居場所を見つけておくことも大切です。
住まいが安全なら在宅避難、不安であれば分散避難を視野に、友人知人と預けたり預かったり、ショートステイの練習から始めていくのもソフトの備えの一つです。

持ち出し品には優先順位をつけ、薬や療法食、特殊なフード等、それがないと命や健康に関わる物は人用の持ち出し品と一緒にしておきます。保管場所にも工夫し、後から取り出せる場所に保管したり、マンション等高層住宅の場合は飼い主の会で共同の備蓄庫を用意するのも一案です。
速やかな避難(ペット同行避難)の心得を例にあげると、いつもペットと過ごすリビングに、予備のリードやキャリーバッグを用意しておき、猫であれば室内限定飼育とします。
避難生活での人と動物の共生のためには、避難所では、動物が苦手な人、アレルギー等で動物と一緒にいられない人たちに配慮し、居場所や動線を分離することで避難所での棲み分けを行います。
避難所内での事故を防ぐためには、ペットのそばにその動物の情報(飼い主氏名、避難所内の飼い主の居場所、動物に関する注意等)を掲示する等、動物が好きな人への対策も必要です。特に子どもは不用意に手を出して触ろうとしてしまうため、子どもに分かりやすくひらがなで記載し目に留まるようにイラストを書き添えます。
そして、被災し、家族を失い、財産を失い、ペットを失い、心に大きな傷を負った人たちがいることを理解してお互いに思いやりの気持ちを大切してください。
平時以上にマナーを守り、みんなで助け合って災害を乗り越えていくことが必要です。
飼い主は、ペットに対する「飼い主責任」だけでなく、社会に対する「飼い主責任」を果たすために、人とペットの災害対策について、考え、検討しておきます。
飼い主とはぐれた犬たちが群れて放浪したり、自宅から逃げ出した避妊去勢をしていない猫たちが、繁殖して増えてしまったり、飼い主が管理できない状況にいる動物たちが、地域や社会に迷惑をかけることも想定されます。
家族の一員であるペットを守るために、また、社会に対する責任を果たすためにも、飼い主はその責任において、備えておかねばなりません。


あるもので工夫できる飼い主さんを目指そう!
2004年に発生した「新潟中越大震災」の避難所では、避難した猫のために、手作りのトイレを用意している飼い主様がいらっしゃいました。
写真の場所は、当初ペット飼育不可でしたが、飼い主がきれいに管理していたことから、OKに転じた好事例です。

2011年に発生した「東日本大震災」では、少しでも餌が食べやすいように、と余分な首輪にフードを盛り、豆腐の空パックを拾ってきて水を与えている飼い主がいらっしゃいました。

考えて行動できる飼い主さんを目指そう!
2013年に発生した「平成25年台風第26号」により大規模な土砂災害が発生した伊豆大島では、その10日後に同規模の台風到来が予想されました。あるご家族は、天気予報を見て、台風が来る前に小型犬2頭を伊豆大島から調布空港にコミューター機で搬送し、親戚に引き取りに行ってもらい、台風が去るまでの間預かってもらっていました。台風が去った後には、親子で犬たちを迎えに来られていました。
なぜ、犬たちを親戚に預けたのかお尋ねしたところ、「台風が襲来する中、小さい子供二人と犬二頭、同時に守ることは難しいと考え、あらかじめ犬を預ける判断をした」というお答えでした。
天気予報を見て判断し、親戚に依頼し、飛行機を手配する。
自分で考えて判断し行動する、飼い主力の高い飼い主さんだと感じた好事例です。
自立した飼い主さんを目指そう!
2011年に発生した「東日本大震災」の被害を受けた福島県では、第一原子力発電所の損壊により大勢の避難者が県外に避難し、避難生活は長期化してしまいました。
発災から1か月が経過し、『そろそろ愛犬にフィラリア予防薬を飲ませなければ…』と考えた飼い主は、避難所に近いスーパーマーケットでパートタイムの仕事を得て、お薬代を捻出されていました。
実際には、被災動物への獣医療支援活動も行われていましたが、「自分のペットは自分の力で守る!」という強い意思が感じられたこのケースも、飼い主力の高さを示す好事例でした。
人と動物の防災を考える市民ネットワーク
特定非営利活動法人ANICE(アナイス)理事長
東京都獣医師会 顧問
博士(応用生命科学)
平井 潤子 先生

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様々な事情で家庭で飼えなくなった犬や猫の引き取りや、迷子犬を保護して収容します。また狂犬病予防法に基づき野犬の捕獲収容などをしています。

人と動物が仲良く暮らすための情報提供やアドバイス、イベント、啓発などを行っています。
その他、引き取った犬や猫に新しい飼い主さんを探す譲渡活動を行っています。

引き取った犬・猫や捕獲した野犬等の中で譲渡できない犬・猫の殺処分を行っているところもあります。
動物が適正飼養・飼育されているか(虐待などがないか、給餌は適正にされているか、飼育環境に問題はないか、など)を確認し、問題があれば指導を行います。
また動物を飼養・飼育している施設の管理状況の指導も行います。

各都道府県の動物愛護センターは災害時には動物救援本部として被災したペットの保護等、救援センターの役割も果たします。

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給餌やトイレの世話だけではなく、これ以上繁殖をしないようTNR(保護して、不妊手術をして、また元の場所に戻す)を行います。
猫の保護や手術のための動物病院までの運搬は、主に地域のボランティアさんが行います。手術をした猫はその印として耳の先をカット。(オスは右耳、メスは左耳)
手術のあとはボランティアさんが猫を病院から運搬して元いた場所に戻します。その後は、給餌やトイレの掃除などを行い、地域の猫として一代限りの命を見守る取り組みです。

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生まれたばかりの赤ちゃんねこは、一日数回にわけてミルクを与えなくてはならず、知識も必要で、日中家にいることや、留守がないことなどの条件があるため、やりたいと思っても誰もができるボランティアさんではありません。
子ねこは、授乳期が終われば、次の預かりボランティアさんにバトンタッチしたり、保護された動物愛護センターに戻して、譲渡先を見つけます。
現在、全国の動物愛護センターで殺処分される猫の多くが子ねこであるため、子ねこが救われれば、殺処分数も激減することになります。

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英語ではアニマルホーディング(Animal Hoarding)といい、過剰多頭飼育者のことをアニマルホーダー(Animal Hoarder)という 。

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