健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

猫ちゃんの困った行動 不適切な場所での排泄

獣医師、専門家に相談する

最初のステップでお話したように、トイレ以外の場所で猫が排泄し始める時には医学的な問題が関係していることが多いのです。まず自分でいろいろ試す前に、かかりつけの獣医師に相談して健康上の問題でないことをきちんと確認しておいてください。その後にここに書いた方法を試してみて、うまくいかない時には再び、獣医師に相談してみてください。

去勢避妊手術以外にもフェロモンや薬物を使う方法もありますし、獣医師を通じて行動学の専門家を紹介してもらうという方法もあるでしょう。 

自分なりにやってみてうまく行かず、猫との関係が険悪になったり、あきらめてしまったりしている人を見かけますが、どんな問題も努力すれば必ず解決の糸口は見つかるものですから、あきらめずに積極的に取り組み、猫と快適な生活を送ってくださいね。

最後に

去年の3月3日に我が家の最年長の猫のプリアが18歳で亡くなりました。慢性腎不全のために最後の何ヶ月間かはトイレ以外の場所でオシッコをするようになりました。寒い時期でしたから私のお布団に入ってきて一緒に寝ていましたが、毎晩点滴をしていましたので、私のパジャマは毎日オシッコで濡れるようになりました。

しかしこの時、プリアは少しも困惑した様子はなく、それは私にとっては喜ばしいことでした。なぜならその頃診ていたある高齢のワンちゃんが病気のためにほとんど歩けなくなった後も、布団から這い出してトイレで排泄しようとして、夜中に寒いところで倒れていたり、つらそうに鳴いて夜も眠れないというのを飼い主さんから聞いていたからです。

このワンちゃんは幼い頃、トイレ以外の場所で排泄したら厳しく叱られ、体罰を与えられていたそうです。この時はおむつをしていたので、もうどこで排泄しても良かったのですが、とうとう最後までトイレの場所に行こうとしたそうです。「ここでしてもいいよ。」と何度言ってもダメだったそうです。

言葉のわからない動物に気持ちを伝えるのは本当に難しいことです。そして動物を叱ったり罰を与える時には、そのことがのちのちまで動物の心に影響を与えることも覚えておかねばなりません。


村田 香織 先生
プロフィール
麻布大学獣医学部獣医学科卒業。
もみの木動物病院(神戸市)で獣医師として働く傍ら、同病院のしつけ教室でパピークラス、問題行動を持つ犬猫のカウンセリングを担当。
日本臨床細胞学会認定細胞検査士。国際細胞学会認定C.T.(IAC)。
日本動物病院福祉協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。
アメリカ、デルタ協会認定エバリュエーター。
日本動物病院福祉協会CAPP認定動物認定員。

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