介助犬の育成と普及にご協力ください

取材記 介助犬育成の現場から

介助犬とは、手足が不自由な方が日常生活で自力ではできない作業を補助するために特別なトレーニングを積んだ犬のことをいいます。

日本に初めて介助犬がやってきたのは1992年のこと。18年経った今、ようやく49頭の介助犬が活躍するまでになりました。(2010年現在)

介助犬育成の現場について、日本介助犬協会でお話をうかがいました。

介助犬に求められる基本的な性質は、性格が穏やか、落ち着きがあり肢体不自由者の方にも扱いやすい、そして何よりも作業が大好き、この3つが重要となります。

介助犬に採用されている主な犬種は、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバーの2種。しかし、本来レトリーバー種はとても活動的な犬種のため、落ち着きをもった性質の犬を見きわめるのがとても難しいそう。

介助犬の候補となる子犬は、全国の盲導犬協会やブリーダーの元からやってきますが、最近の新しい取り組みとして、日本介助犬協会では自家繁殖も始めました。

自家繁殖の難しいところは、どれだけ素晴らしい性質をもった犬同士を掛け合わせても、自分たちが求める性質を持った子犬が生まれるとは限らないところです。介助犬に適した子を生み出すため試行錯誤を続けています。

協会にやってきた子犬は、候補犬としてまずはパピーホームの家で1年間過ごし、さまざまな社会経験を積んで協会へ戻ってきます。
その後、数回にわたって介助犬としての適正評価を受け、それをクリアし介助犬になるのはわずか2割程度。
1頭の介助犬を送り出すまでの道のりがいかに大変であるかがうかがえます。

介助犬の特徴は、1頭ずつで求められる能力が異なる点です。
肢体不自由者はその障害の度合いがさまざまで、助けが必要な作業も人によって異なります。そのため介助犬は、ユーザー一人ひとりのニーズに応じた能力を持てるよう訓練されなければならず、また教えられたことだけをこなすだけでなく、ユーザーのタイミングに合わせて「自分で考えて動く」能力が重要になります。


画像提供:社会福祉法人 日本介助犬協会

ここで介助犬の仕事の一部をご紹介します。
現在訓練中のイアン&いろは姉弟が実演してくれました。


「テイク、鍵!」の号令にすぐさま反応。落とした物もすばやく拾って渡してくれます。

スライド式の扉は鼻で押し開けます。
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(日本介助犬協会サイトへ)
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冷蔵庫を開けて指示されたものを取ってくる練習。扉タイプ、引き出しタイプ、どちらでも上手に開け閉めできます。

足を噛まないようにしながら上手に脱がせます。脱がしにくいハイカットタイプのスニーカーでも成功!
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(日本介助犬協会サイトへ)
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ある日の訓練風景
この日は週に一度の「パピーレッスン」。パピーホームさん(※1)と暮らしている候補犬たちが、週に一度協会に来てトレーニングを受ける日です。
この日のテーマは、周囲の誘惑に惑わされないで、集中して横について歩くこと。
先生の指導のもと、研修生(※2)とパピーがペアになって真剣に、でもとても楽しそうにトレーニングしていました。

※1 パピーホーム・・・介助犬の候補となる子犬を一般家庭で育てるボランティアのことです。生後1年間は犬にとって、性格形成のためのとても重要な時期です。さまざまな社会経験をさせながら愛情いっぱいに育ててくれるボランティアさんを募集しています。

※2 研修生・・・日本介助犬協会では、介助犬トレーナーを育成するための「研修生制度」を2006年から導入しました。介助犬のことはもちろん、福祉や障害、リハビリテーションについて、犬の行動学や健康管理、しつけについてなどを1年かけて学びます。

介助犬についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください