ペットと共に生きること

「人と動物が一緒に暮らしていく」うえで、考えて欲しいことを、さまざまな取材を通して紹介します。ちょっぴり硬い話題が多いけれど、ほんの少し、一緒に考えてみませんか?

第10回:みんなで猫の世話をする

最近、ノラネコが多いという話を聞きますが、僕が小さかった頃もノラネコはよく見かけました。
町なかはもちろん、5軒続きの社宅だった僕の家でも、「だいすけ」「はな」「こすけ」「ぎん」「こぎん」など、たくさんのネコがいました。
彼らはみ~んなノラ、僕の家でご飯を食べ、眠りに就くかと思えば、隣の家では違う名前で呼ばれ、かわいがられ、そこでもご飯を食べ…。
なぜか寝るのは我が家でしたが。避妊・去勢まではできていなかったものの、住みついちゃったネコをみんなで世話していたんです。
数年後、世話をしていたネコたちは、天寿を全う、もしくは他所へ移り、いなくなりました。

昔と今、ノラネコを取り巻く環境の違いのひとつは、「常に世話をする不特定多数の人」がいるかどうかではないでしょうか。

そう思っていろいろ調べているうちに“地域猫”という活動を知りました。

始まりは、人間関係の改善から

 地域猫という言葉が生まれたのは、1990年代半ばのようです。1997年には神奈川県の磯子で、周辺に住み着いたノラネコを自分たちで世話し、数が増えないようにしようという、ネコ好きの住民たちによる運動が始まりました。これをきっかけに地域猫活動は全国に知られるようになります。
主な活動内容は、餌を与える場所や時間を決め、むやみやたらにエサを与えることをやめる、公共の場所などに放置された糞の掃除、そうやって世話を始めたネコたちの健康管理を行い、避妊・去勢手術を行う、といったところでしょうか。

 地域によっては自治体が主導し、一定の活動をしている団体に補助を出したりしています。
地域にはネコ好きとそうでいない人もいるわけで、つまりは互いにより快適な暮らしを目指そう、ということなんです。この場合の互いとは、ネコ好きとそうでいない人のこと。
ネコが好きな人は、ノラネコをかわいがり、世話をする。しかしネコ好きではない人たちは、ネコそのものが嫌だし、世話をする人を疎ましくも思う。
その結果、地域の人間関係はギクシャクしてきます。

助成をきっかけに、活動開始

 神戸市灘区城の下通三丁目。摩耶山麓に位置するこの地区では、「城の下通三丁目地域猫の会」による地域猫活動が行われています。神戸市の助成を受けて2005年に活動がスタートし、助成が2008年に終了しても、活動は継続中。
発足当時自治会長を務めていた加藤さんは、町内巡回でノラネコの多さに気付き、自治会としてこの問題をどうにかせねば、と区役所へ相談に。そこで神戸市が地域猫対策事業のモデル地区を募集していることを知り、会を立ち上げたそう。
地域に暮らす200世帯にアンケートを採り、ノラネコの存在をどう思うか、何が問題か、など実状を探った。 そうして総会などを経て、「去勢手術で自然に減らすことが、遠いようで最も効果的な問題解決法」という結論に達し、活動は密になっていきました。

続きを読む