ペットと共に生きること

「人と動物が一緒に暮らしていく」うえで、考えて欲しいことを、さまざまな取材を通して紹介します。ちょっぴり硬い話題が多いけれど、ほんの少し、一緒に考えてみませんか?

第1回:“風来坊”アーサーのこと。

こんにちは。このコラムを担当する橋本です。
第1回目は、私事ですが、僕の経験をちょっとご紹介させてもらおうと思います。 熊本に暮らす僕の両親と、そこにやってきた「アーサー」との、1年9か月ほどの記憶です。

出会いは、2003年の冬でした。当時我が家では、ロックというラブラドールレトリーバーのオスを飼っていて、父は毎朝、近くにある川沿いへ散歩に出かけるのを日課としていました。ロックは、父が体調を崩した際に僕の友人が父のリハビリのためにと譲ってくれた犬。毛ヅヤがよく、かなりがっしりとした体格をしています。

とりあえずロックの犬舎の横にブルーシートで急場しのぎの屋根を作り、そこで寝てもらうことに

そんな冬の、2月11日の朝。いつものように散歩をしていると、草むらから突然、一頭の白いゴールデンレトリーバーが現れました。見れば首にはヒモがぐるぐる巻かれ、排泄物でお尻まわりもかなりの汚れ。父を見て、嬉しそうに尻尾を振り、寄ってきたそうです。
「ひどいことをするもんだ」。
父は犬の首に巻かれたヒモをほどき、しばらくあやした後、「おうちに帰りなさいよ」と声をかけ、ロックと歩き始めます。
しかし。
その犬は、父たちのあとをずっとついて歩き、とうとう家まで来てしまいました。
さて、どうしたものか・・・。

しばらく母と一緒に悩んだ末、その犬をとりあえずロックの犬舎の前につなぐことにし、「迷い犬」の札も付けました。「きっと飼い主が心配しているだろうから、すぐに引き取りに来てくれるだろう」そんな思いだったのでしょう。が、数日経っても誰も引き取りに来ません。やがて、父は町内でゴールデンを飼っている家庭を回り、母も新聞に迷い犬の告知を出し、自分たちで飼い主を捜し始めました。しかし飼い主は見つかりません。一度だけ、新聞を見た人から電話をもらったのですが、犬の特徴がまるで違い、ぬか喜びに終わったそうです。その後は、誰も。


我が家に来た頃。毛には艶もなく、かなり高齢の様子。ぼーっと遠くを見たり、ただ伏せているだけのことも多く、なんだか寂しそうです
我が家に来て1か月経った頃。まだ笑顔がぎこちない気がします。

その間、母は犬をきれいに洗い、ロックを診てもらっている獣医さんのところへ連れて行きました。診断では、すでに10歳を過ぎているとのこと。
それから1か月、僕の両親はその犬が高齢であることも考え、我が家で飼うことを決心します。初めて会った2月11日を誕生日に、朝の出会いだったから、名前は「アーサー」。これで届けを出し、晴れて我が家の一員となったのでした。

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