健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

愛犬相談室 No.1「ムダ吠え」

ケース3、家族が食事中に吠える

Question

6歳のMダックスです。家族が食事をしていると、人間が食べているものを欲しがってしつこく吠えます。あまりにも欲しがるので、ときどきあげてしまうこともあります。

Answer

 これはひと言でいうと要求吠え。やさしいお父さんがこっそりと、おいしいおかずをあげたことがあるのかもしれませんね。室内飼いが一般的になって増えた悩みといえますが、ねだられたからといって、犬に人間の食べものを与えてはいけません。基本的にどんなに欲しがっても無視することです。このお宅のようにときどきあげる、つまり犬にとって「いいことがあったり、なかったりする」方が「いつもいいことがある」よりさらに犬の学習能力は強化されます。「今度こそ!」と思ってパチンコにはまる心理と同じです。だから相談者のケースでは、いっそう激しく犬が要求し続けるのでしょう。

 無視するといっても、そばでずっと吠えられたら食べていられないというなら、家族の食事が始まったら、別の場所でフードを与えてみましょう。中におやつを詰めたトリーツホルダーやコングを与えれば時間がかかり、それを噛んでいるだけで満足する場合があります。もし、必要ならリ-ドでつないだり、ケージやサークルを利用し、テーブルのそばに来られないようにしておくのもいいでしょう。

 ドッグフードは嫌で人間の食べているものを欲しがる場合、犬の要求に応えるふりをして、勘違いさせてみるのも一案です。家族の食事のとき、食卓にいつも食べさせているドッグフードをお皿に入れて用意しておき、吠え始めたらそのドッグフードを与えてみてください。何度か繰り返すうち、犬は「なんだ、同じものを食べているのか。それだったら吠えても仕方ない」と思って、要求をやめてしまうことがあります。

 この方法を応用して、吠えることでは要求は満たされない、ということを覚えさせることもできます。たとえば犬がフードを欲しがって吠えたら、すぐに「はい、わかったよ!」といってにっこり笑い、トイレをさせようとします。また、遊んで欲しくてボールを持ってきたら「よし、行こうか」と、リードをつけて外へ出てみたり、わざと違うことをしてみるのです。こうして自分の要求とはまるで違うことをあたかも当然のように数回されると、犬は「ここで吠えると外に出されるかもしれない、それなら吠えないでおこう」と考え、要求が減ってくることでしょう。



ケース4、電話中に限って吠える

Question

3歳のプードルを飼っています。私が電話しているときに限って吠えるので困っています。やきもちを焼いているんでしょうか。

Answer

 室内飼いをしていると、電話に関する問題行動もよく見受けられます。吠える理由は、電話がかかってきたときに吠えるのか、かけるときに吠えるのかで違っています。かかってきたときに吠えるのは、ケース1の玄関チャイムが鳴ったら吠えるのと同様、音に反応していると考えられ、電話をかけるときに吠えるのは「もっと注目して!」という意味だと考えられます。

 まず、電話がかかってきたときに吠えるケースでは、そのときの状況を思い起こしてみてください。電話が鳴ったらあなた自身が早く受話器をとろうとして、バタバタと慌てていませんか。そうした飼い主の様子を見て、犬は「大変なことが起こった!」と心配して吠えることがあります。呼び出し音を5つ数えてから出るくらいの余裕を持ちましょう。そして電話のところまで犬と一緒に行き、あらかじめ電話の横に置いておいたフードを与えてから、出るようにします。そうすると「電話がかかってきたらいいことがある」と犬に覚えさせることができます。
 次に、電話をかけるときに吠えるケースでは、吠え始めるのは、受話器を持ったとき、ダイヤルをプッシュしているとき、話し始めたとき、のいずれなのかに注目してみましょう。受話器を持ったときであれば、ふだんから飼い主が受話器を持ちながら犬に食事を与えたり、「オイデ」「オスワリ」「マテ」などをして、おやつをあげたりします。こうすることで「受話器を持っているときにはいいことがある」と犬に意識付けできるわけです。

 ダイヤルをプッシュしているときに吠え始めるのであれば、直前にフードをぱらっと床にまきます。こうすると犬は本能的にフードを探そうとするので、お皿に入れて与えるよりも時間を稼ぐことができます。話し始めたときに吠え出すようなら、おやつを入れたコングやトリーツホルダーを与え、それでひとり遊びをさせてみましょう。もちろん、上手に遊べていたらほめることもお忘れなく。
 このように吠え始めるタイミングに注目するといっても、いつもはっきりしているとは限りません。どの方法が効果的かは犬によっても違うので、これらの方法を組み合わせていろいろ試してみるといいでしょう。

 また、電話中に限らず、犬が人にかまって欲しくてこうした行動をとるのは、ふだんから犬にかまい過ぎていたり、四六時中べったり一緒にいるせいかもしれません。もし思い当たるなら、犬にひとりでいる時間を与えるようにしてみてください。一緒の布団で寝ているなら、少し離した場所に犬用の寝床をつくってそこに寝かせるようにしてみるのもいいでしょう。そしてひとり遊びをしているときに「えらいね、いい子だね」とほめてあげるようにましょう。