ふと読みたくなる、猫の本

猫語の教科書

Vol.4 これが本当なら大変なことですよ。

猫語の教科書
ポール・ギャリコ 灰島かり訳
ちくま文庫
定価580円

猫は賢い。賢いからこそ自由気ままに生きているように人間には見える。
だから(かどうかは定かじゃありませんが)、
猫は人間の言葉を理解しているとよく言いますね。
さてその猫が、実は人間の習性~しかも男女や年齢別にみた~を
こと細かに分析したうえで、
人間と一緒に暮らしているとしたら、どうします?
人間が喜ぶツボを理解しているからこそ膝の上でゴロゴロと甘え、
時にイタズラをし、思わせぶりな態度を取る。
だとすると、ちょっとぞっとしませんか?

無類の猫好きとして知られるアメリカの作家、
ポール・ギャリコのもとに飛び込んできた“変な相談”は、
まさしくそんな疑問を投げかけてきます。
彼が知り合いの編集者から頼まれ、解読したのはなんと、
世界初?! 猫がタイプライターで打ち込んで綴っていった原稿でした。
野良猫が人の家で飼ってもらえるようになるためにすべきこととか、
人間とはそもそもどんな生き物なのかなど、その内容は
「猫が人間を支配し、支配されていると人間に感じさせずに生きる術」。
原稿をタイプした猫は、これから世に出て行く多くの子猫のために、
この“処世術”をしたためたのでした。

なかには
『猫が人間を支配下におくためには
“猫というものは独立心が強く、人間の思いどおりにはならない”という評判が
とても訳に立ちます。このことはゆめゆめ忘れてはいけません』
なんて、人間社会での評判さえもうまく利用するようにと書かれているから驚きです。

もちろん猫としての正しいマナー、
やってはいけないことについても触れられており、
まさしく猫族のバイブルと言っても過言ではありません。
もっとも、多くの猫が文字を読めたら、の話ですが。

ちなみに本作がフィクションなのか、ノンフィクションなのか、
その判断は読者におまかせ。
ポール・ギャリコが本作のために写真家から提供を受けた猫の写真が
あまりに文章とリンクしているので・・・。

加えてこの本は、ぜひ自分の猫を近くに見られる状況でお読みください。
もしかすると、書かれている内容そっくりそのまま、目の前の愛猫が
やっているかも知れませんよ。