ペットと共に生きること

第28回 企業が動いて地域に変化を

日本全国、水産業が盛んな地域では、多くの猫を見かけます。
かつて鯖で栄えた福井県西部・小浜市もそう。
その小浜市を中心とする若狭地域では野良猫も多く、
殺処分される猫の数は年間で約200匹と、福井県内でも最多だそうです。
これではいけないと、
この数年全国的な盛り上がりをみせる地域猫活動が
若狭地域で始まりました。
しかし、避妊・去勢の費用を募金や寄付でまかなうのは、
容易なことではありません。
そこに今、大きな変化が生まれようとしています。
企業が支援に加わることで、活動の認知拡大、支援の拡大を目指す―
今日は、そんなお話です。

地元だからこそ、行動に

奈良の東大寺へ水を送っていた歴史もあるほど、
若狭地域は良質な水に恵まれた地域。
「わかさ冨士」は、そんな地域で今も日本酒を造り続けている 小さな酒蔵です。
その会社から今年の4月に登場したのが
「さばとらにゃんこ酒」。
小浜市のキャラクター「さばトラななちゃん」が
なんともユニークなラベルになっています。
このお酒は、売上の一部が「若狭地域猫の会」に寄付され、 地域猫の避妊・去勢費用に使われる。
ラベルからしても分かるように、
そのために企画し、販売している日本酒なのです。
720ml入りで1300円、酒米の五百万石を原料に55%まで磨き、
冷酒や常温、ぬる燗で呑むのがオススメだそう。
ちなみに「さばトラななちゃん」、 実は小浜市に実在する地域猫がモデルになっているとか。

このお酒を企画したのは同社の専務・逸見彰則さん。
自身も野良猫を引き取って暮らしており、
地域猫や動物愛護に以前から関心があったそう。
会社として地域に役立てることはないか、と考えていた時、
地元の団体「若狭地域猫の会」と巡り会い、
ほどなく企画が立ち上がり、
2013年4月の発売にたどり着きました。

若狭地域は地域猫や動物愛護への関心が、決して高いとはいえなかった土地。
それをビジネスの手法でなんとかできないか、
という逸見さんの気持ちが、商品開発の始まりだったそうです。
「地方の小さな蔵だけど、
企業としての情報発信力は持っている。
だからアピールできる商品をつくれば、
支援金だけでなく地域猫への理解を拡げることもできる、
という貢献ができるはず」
そんな思いだったと言います。

商品が発売されれば、「小浜でこんな活動がある」
と他地域の人たちの目にふれ、話題になる。
そうすると若狭地域の地域猫活動に関心が集まり、
やがては地元の行政も動くのではないか。
つまり、企業活動をきっかけに地域や行政が動くようになれば・・・、
そう考えてのことだったのです。

拡散が、次への一歩

「さばとらにゃんこ酒」は、
発売開始から1か月で220本を販売。
地方の蔵では1か月で100本も売れることが稀な日本酒業界にあって、
この数字は、商品への関心の高さを裏付けています。
しかも、購入してくれている人の多くが福井県外。
外から注目されるようになると、
地元の人たちも気にせずにはいられません。
商品が売れれば売れるほど、若狭地域の地域猫活動が
たくさんの人に知ってもらえることになりますね。
そして、避妊・去勢の費用がちゃんと拠出できるようになります。

もちろん、しっかりとした思いから生まれた商品ですから、
ただ販売しているわけではありません。
ボトルの裏には地域猫活動を知ってもらうためのもう一つのラベル、
ボトルの箱の中には、地域猫活動を深く理解してもらうための
リーフレットも入っています。

しかも、堅苦しいだけではだめだからと、
小浜の地域猫の写真をポストカードにして同封するという サービスぶり!
なんだか和む写真が入っていると、
買った側はちょぴりうれしくもなりますね。

このお酒は、地域の小さな蔵だからこそできた細やかな配慮も詰まった、ステキな商品なのです。

これから先、第二弾、第三弾は企画されるのでしょうか?
その問いかけに
「この企画を知った地元の他の企業から、
新たな企画が生まれることが、続くことに繋がるのではないでしょうか」
と逸見さん。
すでに一社から、次なる声が上がっているそうです。

北陸の一地方から生まれた新しい試み、
これがいろんな地域に拡散していくと、
全国の地域猫活動は、もっと活発になっていく気がします。
それに、支援できる商品があれば、
私たちだっていつでも、どこから参加できますよね。

株式会社わかさ冨士
福井県小浜市木崎13-7
創業:1862(文久2)年
ホームページ
http://www3.ocn.ne.jp/~hemmi/