ペットと共に生きること

第24回 災害救助犬という存在

2011年3月11日、東日本大震災が発生しました。
被災された地域では今も復興ままならぬ状況が続き、
行方不明となられている方も少なくありません。

地震発生直後。
現地には多くの救助隊が駆けつけました。
まだ余震もある中、
多くの犬たちの姿もありました。
災害救助犬です。
瓦礫の山で緊急車両すら通れない状況下、
懸命に生存者を探していました。
今日はその、災害救助犬に関係する話です。

特別な訓練を受けた犬たちの活躍

東日本大震災では、国内はもちろん世界各国から
災害救助犬とハンドラー(訓練士)が現地で活動しました。
アメリカ12頭、スイス9頭、メキシコ・マレーシア各6頭、
シンガポール5頭、ドイツに韓国、イギリス、フランス…etc.

彼らは皆、
災害救助のために特別な訓練を受けた犬たちです。
生後3か月ほどから訓練前段階のしつけを始め、
3年ほどをかけて、少しずつ「生存者を探す」ための
プロフェッショナルとして育っていくのです。
人間の1000倍といわれる嗅覚を使い、
人の目の届かない瓦礫や建物の下、
土の中にいるかも知れない生存者を探す。
災害が発生した場所では、
犬たちが生存者を発見した場合、
そこに印を付け、あとから救援部隊が救出活動を行います。
一刻一秒を争う時ですから、
人間がやみくもに探すよりも、
犬たちの嗅覚を頼りにピンポイントに捜索する方が
効率は間違いなくいい。
彼らの反応を見て、人間が動くのです。

今回の災害では、多くの災害救助犬の中に、
日本レスキュー協会から加わった3頭の姿もありました。
震災翌日に岩手・陸前高田に入り、
翌日から捜索活動を開始。
現地に到着し、その状況を見たハンドラーの岡さんは、
まず恐怖を覚えたと言います。
救助はしなければならない、しかし余震が続く中、
瓦礫の山に分け入る自分たちの身を守れるかも分からない。
共に捜索へ向かった犬たちも、おそらく同じ気持ちだったでしょう。
災害対策本部と連絡を取り合いながら各地を捜索。
……生存者の発見にはいたらなかったそうです。
悔しい思いと悲しみを抱いたまま、
岡さんたちのチームは帰還することになります。
被災地の近くにもっと多くの災害救助犬がいて、
より早く、より的確に捜索できていたら…。
そんな思いもあったかも知れません。

人間を救ってくれる犬を支援する必要性

日本で災害救助犬の存在が重要視され始めたのは、
1995年の阪神・淡路大震災がきっかけだと言われています。
瓦礫の下で声も音も出せないでいる生存者を、
かすかなにおいを頼りに犬が探し、生存者を見つけることができました。
その後、警視庁や都道府県の警察、そして民間団体で
災害救助犬の育成が始まり、いまでは全国的に育成の輪が広まっているよう。
現在活躍できる災害救助犬は、正確な数は分からないものの、
500頭近くはいると言われています。

そんな中で発生した東日本大震災。
今回のことで、新たな課題が見つかった気がします。
それは「統括するものがない」ということ。
全国にいる災害救助犬は、その資質もバラバラ。
訓練方法だって、一概に同じとは言えないのかも知れません。
被災地に入って活動する際には、指示が錯綜する。
有事の際ですから、想定通りに行かないことは当然です。
しかし捜索を担当するチームが、
どこに指示を仰いでいいのか分からない、数か所からそれぞれ違う指示が来る
という状況に陥ってしまっては、いけないのです。
先にも述べたように、災害救助犬が被災地で活動するのは
一刻一秒を争う、人の命を救うため。
そのためにも今、
世界基準のガイドラインを日本でも作成すべき時に
来ているのだと言えるでしょう。

では、私たちはどうするべきか。

災害救助犬が活動するためには、
日々の訓練が欠かせません。
今回話を聞いた日本レスキュー協会でも、
本部横に瓦礫などを積んだ訓練場を設け、
日々救助犬の訓練を行っています。
災害時にすぐ出動できるように準備しておくのです。
彼らが十分な準備をしておくために、
寄付はもちろん、啓蒙活動などへの理解・協力…。
犬を飼っていない、災害救助犬にふれたことがない、
そんな人でもできることはいろいろあります。

すべては、
いつ災害が発生し、私たちが要救助になるか分からない、
その時のため。
人を助ける犬たちを応援することが、
いつか自分たち人間を助けることに繋がるのです。

認定NPO法人 日本レスキュー協会
http://www.japan-rescue.com/