ペットと共に生きること

第23回 三位一体というチャレンジ

関西を潤す巨大な水瓶、そして多くの人を昔から癒し続けているびわ湖。
その南東部に広がるのどかな田園風景のなかに、
ドッグカフェや菓子工房、トリミングもできる施設があります。
「びわこみみの里」です。
ここは、社会福祉法人滋賀県聴覚障害者福祉協会が運営する
聴覚障害者のための自立・就労支援のための施設。
その施設を舞台に、数年前からある試みがスタートしています。

自分への自信のため、
いつかは誰かのために

とある平日。
施設にドッグトレーナーと犬が到着。障害者と共にトレーニングが始まります。
ここで毎週1回行われているのは、聴覚障害者自身による、聴導犬のトレーニングなのです。
“待て”や“伏せ”、“音が鳴っていることを知らせる”など、トレーナーと共に訓練が行われています。

2007年に開設された「びわこみみの里」では、先に書いたように
ドッグラン併設のドッグカフェ運営やトリマー育成のためのトリミングを、障害者の自立・就労支援として活用。
犬との関係は開設当初からありました。
そんななか、聴覚障害者の側から
聴導犬の育成をやってみたいという声が出て、
このプログラムはスタートしたそうです。
今は「JAPAN聴導犬育成事業」という調査研究事業ですが、
「聴導犬育成団体」として認められることが今後の目標。
聴覚障害者は、「音」という問題から社会と少し距離を置いてきました。
親族や周囲の人の言われることだけを実行して
これまでを過ごしてきた人もいるでしょう。
そんな彼らが社会へと出て行くために必要なのは“自信”です。
障害を持つ自分たちで聴導犬を育成する。
自分たちのトレーニングを小学校などで披露する。
これらの活動に参加することが、彼らの自信につながっていると
所長の中村さんは言います。
目標を達成すること=自信を付けるための一つの手段
とするならば、
犬になにかを教えていくことは、
一つ覚えさせるたびに小さな自信につながりますね。
育成過程でのこの達成感の積み重ねが障害者の自信を生み、
やがては“社会に出る”気持ちが強くなって行くのかも知れません。
聴導犬育成団体として認められ、
自分たちが育成した犬が世に出ると、
なおのこと障害者の自信につながっていくと思えませんか?

育てているのは
犬だけじゃない

「びわこみみの里」で行われている聴導犬育成トレーニングでは、
これまでも多くの犬と共にトレーニングを行い、
現在も5頭がトレーニングに参加しています。
これらの犬たちは、少しずつ、聴導犬としての
スキルを修得していくのです。
もちろんトレーニングの過程では、障害者自身も少しずつ育つ。
参加者の中には「ドッグトレーナーになりたい!」と夢を語る人もいるそうです。
さらに。
トレーニングに来るドッグトレーナーは障害者ではありません。
しかし聴覚障害者に指導するため、
手話を覚えました。
参加者の中には視聴覚障害者もいます。
そのために、触手話を覚えたドッグトレーナーもいるそう。
つまりここで行われている
「聴導犬を育成する」という活動とは、
犬だけでなく障害者も、そしてドッグトレーナーも、
みんなで少しずつ育っていく三位一体のトレーニングなのです。
聴導犬の育成という活動を通して、関わる人も成長していく。
ステキな考え方だと思います。

社会ではまだ、聴導犬の絶対数の不足が
問題となっています。
そのなかにいつか、ここから巣立った聴導犬が加わり、
たくさんの聴覚障害者と共に暮らしていける日、
早く来るといいですね。

■びわこみみの里
滋賀県守山市水保165-1
TEL:077-514-9078
ホームページ:http://www.33nosato.jp
JAPAN聴導犬育成事業:http://33dog.jp