ペットと共に生きること

「人と動物が一緒に暮らしていく」うえで、考えて欲しいことを、さまざまな取材を通して紹介します。ちょっぴり硬い話題が多いけれど、ほんの少し、一緒に考えてみませんか?

ふれあいを通して更正の支援

 動物を連れての学校訪問にも慣れた2006年のこと、想像もしていなかった場所からの依頼が来ます。それは奈良市にある奈良少年院。保護司の経験もある三本さんの所へ、訪問活動を知った警察署からの紹介でした。
「最初はこちらも身構えました」
訪問してみると、そこにはガチガチに固まった少年たち。彼らは更正プログラムの中で規律正しく過ごしていたため、目の前に動物が現れても、どう接していいのか分からなかったのです。動物を抱かせてみても、体はカチカチ。

学校動物飼育委員会の中心人物、三本先生。愛猫の「ネコ」も学校訪問に同行しています

そこで三本さん、今日はリラックスしていい、と少年たちに声をかけます。
やがて少年たちも緊張がとけ、次第に子どもらしい笑顔が戻りました。三本さんに自分のことをいろいろ話してくれた少年もいたそう。
「こちらが優しい気持ちで接すると動物も体をあずけてくれる、そのことを体で理解してくれたのでしょうね」
2007年からは、大阪府交野市にある交野女子学院にも年に1度訪問することになりました。
少年たちと違い、少女たちは動物を見ただけで表情がほぐれたと言います。
「中には涙を流す子もいました。わけを聞いてみると、自分が優しい気持ちになれた、すると“なんで自分はここにいるんだろう”と思えてきたんだそうです。そうしたら自然に涙が流れてきた、と」
このような施設にいる少年少女の多くは、大人から厳しい目で見られてきた子どもたち。ふれあいを体験した感想文に、「動物の目も獣医さんの目も、とても優しかった」と多くの少年少女が書いていたそうです。

子どもたちは、優しさを求めているのです。それは施設の少年少女だけでなく、普通に生活している子どもたちも同じこと。
大人が思う以上に、子どもたちは日常生活の中でたくさんの緊張に囲まれているのかも知れません。その糸をほぐし、心をとかしてあげるのは、大人の役目。

大人と子どもは、体つきも考えていることも、目線も違う。だからこそコミュニケーション手段のひとつとして、動物を介してみると、互いの距離が近くなるのではないでしょうか。

 訪問した少年院で、草花の害虫除去作業が行われた時のこと。ある少年が「青虫にも命があるので、僕には駆除できません」と言ったそうです。その少年は、殺人の罪によって少年院での生活を送っていたのでした。

「動物とふれあった時の体験が、いつまでも子どもたちの心に残っていけばいいなと思います。その時感じた温かさは、ずっと忘れないでいてほしいものです」
そう三本さんは言いました。

学校動物飼育委員会への問い合わせは
社団法人奈良県獣医師会
電話:0742-27-5653