健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

リタイア犬について

●盲導犬の引退

盲導犬は様々な理由から、その役目を終えることになります。盲導犬自身の病気、あるいはユーザー自身の病気などによる場合もありますが、多くの場合は老齢によるものです。

盲導犬は約10年現役で活躍します。犬は人間の4倍の速さで歳をとると言われていますので、人の年齢で言えば、56~65歳くらいまで現役で活動していることになります。

盲導犬は24時間視覚障害者の方の“目”となって働き、常に神経を研ぎ澄まし、いつでも的確な動きができるよう努めなければならないため、一般の犬に比べ寿命が短いと思っていませんか?でも、これはまったく誤った理解です。

盲導犬を引退した犬は「リタイア犬」と呼ばれます。一般的にリタイア犬は、老犬委託飼育家庭(一般のボランティア)に引き取られるか、子犬時代を過ごしたパピーウォーカーのもとに再び戻るケースが多いですが、北海道盲導犬協会では、リタイア犬たちに「おつかれさま」という感謝の気持ちを込めて、「老犬ホーム」を作りました。

●老犬ホーム

「老犬ホーム」は、リタイア犬がのんびり過ごすための専用の施設として協会内に設けられました。こういった施設を協会の中に設けているのは、全国では北海道盲導犬協会だけと言えるでしょう。老犬ホームでは、リタイア犬が快適に生活するための設備が完備されています。例えば、寝たきりの老犬用ジャグジーや屋上には老犬サンルームが設置されています。また、寝たきり状態などで介護を要するリタイア犬には、24時間体制でスタッフの方がケアに当たっています。自力で動けなくなった老犬の床ずれ防止のため、床に当たる方向を定期的に変えてあげたり、自力での排尿が困難になった子にはお腹を押して排尿の手助けをしてあげるなど、愛情あふれるケアには驚かされました。

盲導犬は、視覚障害者の方が自立した生活を送るための大きな支えとなっています。現在、全国で948頭の盲導犬が活躍していますが、それに対し盲導犬を必要としている人の数はその4~5倍と言われており、圧倒的に盲導犬が不足しているのが現状です。

私たちは、社会が盲導犬とそのユーザーがより活動しやすいものになるように、盲導犬に対しての正しい知識と理解をもつよう努めたいものです。

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