健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

愛犬相談室 No.6「落ち着かない」

Q&A ケース別にお答えします 愛犬相談室 指導:ドッグトレーニングインストラクター 中塚圭子 No.6【落ち着かない】
ふだんはのんびりしているのに、肝心なときに限ってじっとしていなくて困ったという経験はありませんか。飼い主自身がそわそわしていたり慣れないことをするときには、緊張が愛犬にも伝わるものです。肝心なときに落ち着かせる工夫をお届けします。
Case 1 来客のときにじっとしていない
Q 2歳のコーギーです。ふだんはおとなしいのですが、家にお客さんが来たときに限って興奮して落ち着きがなくなります。なかなか吠え止まず、ゆっくり話もできないのが悩みのタネです。
 犬には集団生活をしていたときの名残りで、新たに入ってきてたものを確認したり警戒する本能があります。来客時に限って落ち着かないということなら、それができないことがストレスになって吠えているのではないかと考えられます。よかれと思ってお客さんに会わせないまま隔離してしまうと、かえって吠えや興奮がエスカレートすることもあります。犬がお客さんを友好的に出迎え、かつ心地よく過ごせるようにすることが大切です。

 そこでまず、出迎え方を工夫して犬の警戒心を解くようにしてみましょう。玄関チャイムが鳴ったら犬にリードを着け、いっしょに外まで出て、お客さんを迎えます。このときバタバタ慌てると飼い主の興奮が犬に伝わってしまいますから、落ち着いて行動すること。時間が分かっているなら、前もって犬といっしょに表で持っておくとなおいいでしょう。外で挨拶を済ませたら、犬の目の前でお客さんから先に家の中へ入ってもらいます。こうすることで犬は自分よりもお客さんの方が優位なのだと感じ、おとなしくなる傾向があります。

 部屋の中では犬の行動範囲を制限することが肝心です。クレートトレーニングができている犬の場合は、ケージに入れておくといいでしょう。退屈しのぎには、お気に入りのおもちゃおやつをつめたトリーツホルダーを与えておきます。また、リードを着けて制御するのも一案です、飼い主の足元で「フセ」をさせ、リードの付根から10~20cmのところを足で踏んでおくと、自然に伏せの姿勢を保つことができます。

 その場の対処以外に、前もってできることもあります。前日や来客前にいつもよりたくさん時間をかけてたっぷり散歩をしておくと、来客時にはおとなしくしていることが多いもの。単純なことですが、来客の準備に気を取られてかえって散歩がおろそかになっていることもあるはずです。また、日ごろから犬好きの人に家に来てもらう機会を作り、来客に慣れさせておくことも役立ちます。
Case 2 動物病院で静かに待てない
Q 先日動物病院へ行ったとき、よその犬にちょっかいを出そうとして困りました。ほかの人に迷惑をかけずに静かに待つにはどうすればいいでしょうか。
 犬を飼い始めると動物病院とのおつき合いは切っても切れません。待合室に行けばふだん接することのない動物がいたり、独特の雰囲気に呑まれて動揺してしまうケースがあるようです。興奮してほかの飼い主さんや動物に迷惑をかけてしまうのは避けたいものです。

 連れて行く際に肝心なことは、犬が動ける範囲を必要以上に広くしないこと。長いリードだと無駄にウロウロさせてしまうので、なるべく短いリードを着けて行きます。診察室に入るまで決してリードを放さないようにしましょう。

 待合室では犬をできるだけ自分に引き寄せておきます。足元で「フセ」をさせ、Q1と同様にリードを短く踏んで動きを制御。大型犬の場合は「オスワリ」をさせ、首輪に親指を通して抱き寄せるようにして固定させます。小型犬なら膝に抱き上げてもいいでしょう。

 ほかの動物と顔を突き合わせるのはトラブルの原因にもなるので、なるべく離れて座りましょう。混み合っているときには飼い主が間に入り、視線を遮るなどの工夫をお忘れなく。相手が重病の場合もありますので、お互いに無理して挨拶をする必要はありません。病気の感染を防ぐ意味でも、過度の関わりは避けたほうがいいでしょう。

 緊張してなかなか落ち着かない様子のときには、背中や胸などをやさしくマッサージしてみましょう。背中に軽く手を当て、犬の呼吸に合わせてゆっくり上から下へ撫で下ろします。胸は中心のコリコリした部分に手を当て、円を描くようにマッサージします。

 診察が終わったら頑張ったごほうびにフードを与えると「動物病院に来るといいことがある」と犬が学習し、次回からの緊張が弱まる可能性があります。先生や看護師さんからもらう方がより効果的なので、できればフードを持参してお願いしてみましょう。

 また、人に触られることを頑固に嫌がっていては診察が受けられません。ふだんから服の脱ぎ着やマッサージ、歯磨きなどのスキンシップを行い、人に慣れさせておくことも大切です。
Case 3 車に乗ると落ち着かない
Q ドライブに出かけるとき犬は後部座席に乗せますが、車が苦手なせいか落ち着いて座っていられません。運転中は危険だから静かに座っていてほしいのですが…。
 後部座席では犬用のシートベルトを装着していますか。はじめから車を嫌がらない犬もいますが、一般的に犬は車の振動に敏感なもの。体が揺れて不安がるケースは少なくありません。そのため、まず体をシートベルトで固定することをおすすめします。ケージに慣れているなら、ケージを後部座席か荷台に置くのもいいでしょう。こうするだけで落ち着くこともあります。

 次に車酔い防止のための工夫をしてあげたいものです。窓の上部を2~3cmほど開けて風通しをよくし、ミント系のアロマスプレーなどを利用して爽やかに。もし、犬がよだれや鼻水を出し始めたら車酔いの徴候ですから、早めに休憩をとります。少なくとも1時間半~2時間ごとに1回は休憩し、トイレや散歩をさせましょう。

 春の日差しが強くなってきたら、暑さ対策も重要。窓ガラスにUVカットシートやシェードを付けて直射日光が当たらないように注意しましょう。水を凍らせたペットボトルや濡れタオルなども用意しておくと安心です。乗車前にはフードは控えめにし、トイレを済ませておくのもお忘れなく。

おおらか・気遣い・メリハリ あなたはどのタイプ?
 ワンちゃん同伴のパーティーなどで気づくことですが、飼い主さんには3つのタイプがあるようです。1つ目はどんな場所にでも犬を連れて来て、犬が何をしようが少々人に迷惑をかけていても気にしないおおらかな人。2つ目は逆に気を遣いすぎてめったに犬を連れて来ないか、連れて来ても犬をケージに入れっ放しの人。3つ目はケージやリードをうまく利用し、周りのタイミングを見計らいながらみんなの中に交わったり、制御したりをほどよくくり返している人。もちろん一番いいのは3つ目のタイプです。

 放ったらかしでは得てしてわがままになり落ち着いていられません。慎重過ぎて経験が少ない犬は怖がりになり、いつまでも大勢の輪の中に入れません。その場の状況を考慮しながら経験を積んでいってこそ、飼い主と犬が共に心地いい時間を過ごせるようになると言えるでしょう。