健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

愛犬相談室 No.2「甘噛み」

QアンドA ケース別にお答えします。愛犬相談室、指導、ドッグトレーニングインストラクター、中塚圭子
No.2、甘噛み

ケース1、遊んでいて手を噛む

Question

5カ月になるコーギーです。このごろいっしょに遊んでいると、甘噛みがひどくて困っています。 どうすればやめさせられるでしょうか。

Answer

 子犬と遊んでいると、しばしばじゃれて手を噛んでくることがあります。犬は楽しいことをしているつもりでも、人間にとっては痛いだけ。成長するにつれさらに力が強くなり、痛いだけではすまなくなるので子犬のうちに対処することが肝心です。

 まず、人間は繊細な動物で、噛むと傷付けてしまうということを犬に教えます。そのためには、もし噛んだら「痛い!」とハッキリ言い、遊びを即座に中断。するとその声で犬は我に帰り、ハッとして口元を緩める瞬間があるはずです。そこで、落ち着いて犬の口から手を離し、後ろ手に引っ込めてしまいます。このとき、あわてて引っ込めると、犬の歯が引っかかり深い傷を負うことがあるので注意しましょう。
 しつけのポイントは、犬が噛んだら「痛い!」と言うタイミングを徐々に早めていくことです。はじめは噛んでから言いますが、次の段階では、少しでも歯を当てそうになったら「痛い!」と言います。さらにじゃれて噛みそうになったところで「痛い!」。こうして段階を踏むことで噛むと相手にしてくれなくなることを学び、次第にやめていきます。

 しつけの面からいって一番してはいけないことは、「わぁ、噛まれたッ!」「コラ、やめろ!」と騒ぎたてることです。それこそ、犬を喜ばせ、いっそう興奮させてしまう原因になります。飼い主に求められる対応は無視。ここでしばらく無視をしていれば、犬は噛むともう遊んでくれなくなることを覚えます。いったん遊びをやめたあと、落ち着いたらまた再開してもいいでしよう。
 ときどき「無視しても効果がない」という人がいます。そんなときには、本当に無視しているのか、再確認してみましょう。無視とは、体を固くして顔をよそに向け、無視のポーズをとりながらガマンし続けることではありません。遊びをやめてその場を立ち去ったり、さりげなく他のことをし始めたりすることです。無視するという行為を誤解している人が案外多いようです。
 また、ロープの引っ張りっこなど、特定の遊びをしたときに限って噛み、それをなかなかやめさせられない場合があります。くせになってはいけないので、興奮しやすい遊びは、しばらくやめておいたほうがいいでしょう。


甘噛みとは?

 甘噛みとは、犬がじゃれて噛む行為のことで、成犬になるまでの子犬によく見られます。特に歯が生え変わる4~6カ月ごろには、歯がむずがゆいため、何かを噛みたい要求が強くなりがち。生え変わりが終わるころまでに直しておくと、加減を覚えて本噛みをしなくなります。

 甘噛みの矯正で大切なことは、はじめから噛むことを全面的に禁止するのではなく、加減を教え、強く噛まないように抑制させることです。どんなにおとなしい犬でも、何かのきっかけで歯を当てることがあります。そんなとき、噛みつきの度合いを知っていれば、相手にケガをさせないところでやめられます。

 しかし、成犬でもその度合いを知らずに噛むクセが残っている場合は要注意。噛む程度がわからずに大ケガをさせてしまう恐れがあります。ふだんはフレンドリーな犬なのに、フードを手で与えたときなどにガブッと噛みつかれるケースや、いったんおさまったように見えても、11歳くらいになって再度噛みクセが出ることも。

 ボケ症状を伴った場合、意外なほど力が強く、指が喰いちぎられそうなこともあるくらいです。甘噛みの矯正はなるべく早くから取りかかり、6カ月までに矯正するのが理想です。難しい場合は早めに専門家に相談しましょう。


ケース2、ズボンの裾や袖口などを噛む

Question

うちの8カ月のミックス犬は、手を噛むことはなくなりましたが、ズボンやスカートの裾や、袖口を噛んで引っ張ります。服がボロボロになるのでやめさせたいのですが…。

Answer

 これは「もっとかまってよ!」という犬のメッセージです。ズボンやスカートの裾、上着の袖口など、噛む場所はさまざま。ストレス発散の動きですから犬の力は強く、ときには布に穴が開く場合もあります。行為自体は服を噛んでいるために人は痛みを感じず、それほど大ごとのように思えません。それでついつい放っておいたために、服を噛むのが習慣化してしまったと考えられます。

 しかし、これが直接人間の皮膚だったらと置き換えて考えると、大変危険な行為です。服を噛みちぎってしまうような勢いですから、皮膚に歯型が付く程度で済むとは限りません。服の場合も見過ごさず、きちんとやめさせることが必要なのです。
 もし、服を噛んだときには、ケース1より痛くなくても大げさに痛そうに「痛い!」と言います。回数は1回、くり返さなくてもいいくらい、インパクトを強く。仁王立ちして腕を組み、威厳をもって、嫌だという感情をはっきり犬に伝えるのです。あとはケース1と同様に、しばらくは無視をして相手にしません。「なんだ、人間って繊細な動物なんだな。噛んだらつまんない」と思わせれば、徐々に犬も噛んでこなくなります。

 無視の方法としては、部屋から出ていきドアを閉めてしまう方法もあります。大好きな人が消えてしまうことを気付かせるのです。1~2分したら戻って、また何ごともなかったように遊んでかまいません。
 それでもまだやめない場合は、「痛い!」と言ったあと、犬が噛んだ箇所に苦味スプレーを吹き付けます。このときにも、キャーキャー騒いだりせず、無言でさっさと行いましょう。
 服をツンツン噛んでいること自体が、単に遊びの場合もあります。しかし、それが習慣化するのはよくありません。その場合でも痛いことをはっきりと示し、やめるようにしつけていきましょう。

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