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介助犬 育成現場レポート

冷蔵庫からペットボトルを取る
立ち上がりの介助

「オープン冷蔵庫」でバンダナの付いた把手を引っ張って冷蔵庫を開け、「ブリング」で500mlペットボトルをくわえて持ってきます。この訓練は便利さのためにしているのではなく、障害の関係で人より多く水分を取る必要のあるユーザーが、身動きがとれなくなった場合に役立つ、命にかかわる介助動作なのです。

体高が60cmもある大きなジャスパーくんならではの介助は、つかまり立ちのお手伝い。ユーザーは車椅子やトイレ、ベッドから立ち上がるときに、「ブレイス」(動かずにふんばっていてという指示語)といいながら犬に負担のない部分に体重をかけて立ち上がります。体に触れられるので、体感度が少し鈍感な犬のほうがいいのだとか。





ふとんをかける
ベッドの脇でふとんの端をくわえ、「ブリング」の指示で胸元まで持ってくる訓練。握力や腹筋がなく、足が不自由なユーザーが、寝たまま指示を出すことを想定してトレーニングをしています。ベッドについている補助具の起き上がりひもが落ちたときにも使える動作です。
段差の介助
車椅子のユーザーが段差を乗り越えるとき、前輪は自力で乗り越え、後輪は車椅子についているバンダナを前から犬に引っ張ってもらって乗り越えます。ユーザーと息を合わせるタイミングが大切。短いスロープの場合も同様に引っ張ってもらいます。
スーパーでの買い物介助
大手スーパーに協力してもらって行う、買い物のトレーニング風景です。欲しい商品があれば、他の商品を傷つけないようにユーザーがはたいて落とし、それを犬に拾ってきてもらいます。公共の場所だから「介助犬」と書かれたケープを身に付けています。

介助犬育成のために、私たちができること

 

街で介助犬を連れたユーザーを見かけたときには、むやみに犬を触ったり、驚かさないようにして見守るのが基本マナーです。また、電車やバスなどの交通機関や、レストランなどに介助犬や盲導犬、聴導犬を同伴することは、身体障害者補助犬法で保障されていますので、温かく受け入れましょう。介助犬の育成には、1頭につき約250~300万円かかるといわれています。しかし、育成に対しては公的補助がないため、その費用は全て会費や寄付でまかなわれているのが現状です。賛助会員や募金、オリジナルグッズの購入などで、私たちにも協力できることがいくつかあります。

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