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介助犬 育成現場レポート

介助犬 育成現場レポート

地道な努力を積み重ねトレーナーと二人三脚 目差せ介助犬!!

 電話をとったり、ドアを開けたり、床に落ちたものを拾ったり…肢体不自由者の日常生活の動作をサポートする介助犬。日本ではまだ30頭ほどしかいない介助犬は、どのようにして育成されているのでしょうか。今回、介助犬の育成団体のひとつ、NPO法人介助犬協会を訪ね、訓練の様子を拝見しました。

 どの候補犬も、 はじめは基本的な訓練を幅広く身に付けることからスタートします。トレーニングを行うのは主に1~2歳の犬で、期間は犬の性格や仕事の内容によって一概に言えませんが、約6ヵ月~1年が目安となります。トレーニングは力で押さえ込むのではなく、仕事ができたときにタイミングよく誉め、信頼関係を築きながら行うことがポイントです。それにより、介助犬は人といっしょに行動して仕事をすることで喜びを感じられるようになります。

 訓練が行われるのは一般の戸建て住宅を利用したトレーニングハウス。ユーザー(介助犬使用者)の日常生活に近い状態を想定して訓練できます。また、トレーナーとともにいろいろな場所へ行き、どのような状況下でも興奮することなく、集中できるようトレーニングをしていきます。犬が知らない事をひとつひとつトレーナーが伝えていくことで、犬も徐々に慣れていき、ある程度訓練が進むと、個々の犬の特徴を活かしながら、医療従事者と連携をとり、介助犬希望者の中から適している方を選び、そのユーザーのニーズに対応した訓練に入ります。そして1~2ヵ月の合同訓練を経ていよいよ介助犬の誕生です。現在、日本には介助犬を育てる育成団体が数ヵ所あり、ここNPO法人介助犬協会からは今までに5頭が巣立ち、ユーザーのもとで活躍しています。


介助犬ってどんな犬?

 

介助犬とは、肢体不自由者の日常生活の動作をサポートするように訓練された犬のことです。介助犬に適した犬は、大人しくて人が大好きで、落ち着いている犬が向いています。適性さえあれば犬種はこだわりませんが、実際にはラブラドールやゴールデンが多くなっています。
ユーザーの障害は個々によって異なるので、適正も幅広くユーザーのニーズに合わせ、体高の高い犬や、逆に同じラブラドールでも小柄な犬が求められることもあります。介助犬の候補犬になるのは、盲導犬になれなかった犬や保護された犬のなかで、介助犬の適正がありそうな犬などです。
もともとユーザーが飼っていた犬をトレーニングする場合もあります。候補犬は入所して1ヵ月で適正評価し、そのあと3ヶ月、半年とチェックを重ねます。そして厚生労働省から指定された認定機関から認定を受けると正式に介助犬となります。介助犬として働くのはおおよそ10歳くらいまでです。まだ日本での介助犬の歴史は浅く、リタイア後の過ごし方は確定していませんが、将来的には盲導犬のようにボランティアさんのお宅で余生を過ごせるようなシステムが考えられています。

着替えの介助
靴下を脱がせる動作です。最初は優しくくわえ、脱がせるときには一気に引っ張るので、力の入れ具合が案外むずかしいそう。ユーザーの姿勢に合わせたり、必要があれば靴を脱がせる訓練もします。
物を拾う
床に落ちた物を拾って持ってきてもらいます。対象はコイン、フロッピー、カード、ペン、携帯電話などさまざま。犬にとっては初歩の訓練ですが、ユーザーには日常的に欠かせない大事な動作で、くわえやすい布などから始め、強く噛んだときは犬が嫌いな音を出して、噛みすぎないように教えていきます。
ドアの開閉
1.立ち上がって補助具に前足をかけてノブを回し、ドアを押し開けます。
2.閉めるときはノブにつないだバンダナを口にくわえて引っ張ります。
3.引き戸の場合も同様に、開閉用の補助具とひもを取り付け、開ける場合はひもを引っ張ります。
4.また、閉める場合は前足を補助具にかけて前進します。
電話を持ってくる
新聞を持ってくる
電話の受話器を持ってくる訓練です。「テイク電話」の指示で受話器をくわえ、ユーザーのところまで持ってきます。電話はあくまで緊急時の連絡手段として持ってくることを訓練するので、受話器を元に戻したり、音を教えることはしていません。
「テイク新聞」のかけ声で新聞をくわえて持ってくるココアちゃん。ユーザーがすぐに受け取れない場合は渡さずに持ち続け、「ギブ」の合図でひざの上に落とします。
トレーニングは何語?
介助犬への指示は、動詞は英語、名詞は日本語で行われます。日本語の動詞にはたくさんの言い回しがあるため、英語の方がわかりやすいからです。トレーニング終了までに、約60の動詞と、30の名詞を覚えます。
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