健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

老齢犬・老齢猫と暮らす

運動・遊びは適度に!

 年をとったから、眠ってばかりいるから運動はしないほうが良い、というわけではありません。適度な運動は肥満や、筋肉が衰えるのを防ぎますし、胃腸運動が活発になって、食欲が増し排便も順調となることがあります。

 高齢犬は若い時の7~8割程度の距離をゆっくりと散歩させ、季節の風や匂い、お散歩仲間と出会う楽しみを作ってあげましょう。足腰が弱っている場合は、可能であれば補助をしてあげて、短時間でも散歩を楽しませてあげましょう。病院に入院していた起立困難な犬でも腰を支えての散歩に連れて行ってあげると、とても楽しんでいたものです。

 簡易プールがあり、かつ愛犬が水を怖がらなければ、水泳は関節への負担が最も少ない運動ともなります。
※呼吸状態、舌の色、歩き方をチェックしながら運動量を決めましょう。何らかの病気になっているときには主治医と相談しましょう。

 また、高齢になっても簡単なトレーニングを毎日短時間だけ続け、アイコンタクトを忘れないようにしましょう。そして、基本的な号令に従うことができたら、すかさず褒めてあげることを忘れないようにしましょう。犬にとっては飼い主の号令に従い、そして褒められることは幾つになっても生きがいなのですから。

 猫であれば、おもちゃや遊び方に工夫をし、飽きないように短時間ずつ、日に何回か遊んであげるようにしましょう。

 高齢に伴って昼夜が逆転してしまい、夜鳴きをしてしまう犬や猫がたまにいます。こんな場合には昼間静かに眠ってくれているからとそのまま放っておくのではなく、明るい時にお散歩をし、遊んであげることで夜はぐっすりと眠ってくれるようになることがあります。一度試してみてください。

スキンシップをより多く!

 高齢になれば体をあまり動かすこともしないため、血行も悪くなり、筋肉のコリが触ると感じられるようになります。そんな愛犬・愛猫のためのマッサージ方法を書いた本も、今は数冊が出版されています。そんな本を片手に、短時間でも良いので愛情をこめて全身を優しくマッサージして、コリをほぐしてあげませんか?

 高齢疾患の最たるものの一つに腫瘍があげられますが、マッサージを日々していると、全身を触るため、体表の腫瘍は早期に発見することが可能になります。

定期的に健康診断を!~かかりつけの獣医師を持とう~

 ペットと暮らすことは同時にペットの健康管理を行うことでもあります。食欲や毛の艶、排泄状態などを毎日チェックして、異常があれば動物病院で診察を受けさせることが病気の早期発見・治療の近道です。しかし、なかなか症状がはっきりと現れない体の内部の異常をチェックするためには、定期的な健康診断が必要となってきます。

 人間に比べれば1年間に4倍のスピードで年をとっていく愛犬・愛猫たち。元気なように見えても臓器の機能が徐々に低下してしまっていることがあり、症状がでたときにはすでに手遅れということもあります。そんなことのないよう、若齢の間は年に1回、中年齢~高年齢になれば少なくとも年に2回の健康診断を受けるようにしましょう。

 また、老犬・老猫ではしょっちゅう体の不調を訴えることがありますから、日常的な健康管理や看護で困ったこと、不安なことを相談できるかかりつけの動物病院を持っておくことをお勧めします。重い病気や難しい病気の時には大学病院のように設備や検査機器が整っている病院が必要になることもありますが、そんな時にも普段から愛犬・愛猫の状態を把握してくれている主治医がいれば、必要に応じてそのような医療施設を紹介することも可能になります。

 我々人間よりも早くに年をとってしまう愛犬・愛猫たち、共に暮らした長い時間と同じだけ、この先も一緒に、そして楽しく過ごして欲しいものです。思いやりと工夫で、彼らのシニアライフをもっともっと快適にしてあげましょう。

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