健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

人獣共通感染症 Zoonosis  Part2
狂犬病の話 狂犬病の予防注射はなぜ必要なのでしょう?

あいかわらず元気じゃな。いくつになったかな?

おじいちゃん、こんにちは。えーと、今年で3歳だよ。

ほぅ~、早いもんじゃな、コテツ君も、もう3歳か。やんちゃ坊主もやっとおとなしくなったかな?で、相談てなんじゃな?

実はね、ボクの家の近くにムサシって名前の柴犬の友達がいるんだけど、そのムサシ君にキョウケンビョウのチュウシャ、一緒に行こうよって誘ったんだ。でも、「もうキョウケンビョウなんて無くなってんだぜ。だからボク、行かないよ」っていわれちゃったんだ。ムサシ君のいうように、チュウシャもうしなくてもいいの?

そうじゃな…。確かに長い間、狂犬病が起きたって話しは聞いたことはないんじゃが。先生、どうなんじゃろう、私らにも教えてもらえるかな?

狂犬病の名前はすでにほとんどの方がご存知と思いますが、狂犬病がどんな病気なのか、また、日本では長い間発生していないのになぜ毎年予防注射が必要なのかを、今日はお話しましょう。

狂犬病ってどんな病気なの?

狂犬病は名前からは犬だけの病気と思われがちですが、犬や猫、アライグマ、スカンク、コウモリなどをはじめとするすべての哺乳類に感染する可能性がある病気で、人間も狂犬病ウイルスを保有する動物に咬まれたり、引っ掻かれたりして感染する人獣共通感染症です。

 この病気が恐ろしいのは、いったん発病してしまうと、現在の医学では治療方法がなく、致死率が100%の病気であることです。

 

1957年以降、日本国内では狂犬病の発生はありませんが、世界でも狂犬病が根絶されているのはオーストラリア、イギリス、台湾、ハワイ等一部の国や地域に限られています。逆にアジア(中国や韓国も含め)、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカなど多くの地域や国では現在も狂犬病が発生しています。これらの地域では犬や家畜だけでなく多くの野生動物にも狂犬病の感染がみられ、世界保健機関(WHO)によると感染動物に咬まれた人のうち、およそ年間3万~5万人もの人が命を落としていると報告されています。

もし、狂犬病になったらどうなるの?

犬の場合、狂犬病のウイルスに感染してしまってから発病するまでの潜伏期間は、個体差はありますが、一般的に20日から60日程度で、平均30日前後です。

犬が狂犬病にかかってしまうと、一般的には狂躁時と麻痺時とに分けられ、狂躁時は、神経過敏、狂暴性を示してみさかいなくかみつくようになります。このため、口の中にケガをすることもあり、血の混った泡や唾液を出すようになります。

 麻痺時は、狂躁時ほど激しい症状が見られず、診断がつきにくいことがありますが、頭や頚の筋肉が麻痺します。この両方の症状が経過の中で現れます。

 

人間が感染すると、前駆期(2~10日間)にはカゼに似た症状のほか、かまれた場所に掻痒感、熱感などの異常感覚がみられ、次の急性期には不安感、恐水症状、興奮性、麻痺、精神錯乱などの神経症状が現れ、2~7日後に昏睡期に至り、呼吸障害により死亡してしまいます。

そんなに多くの人が今でも狂犬病 で亡くなっているとは知らなんだ。

世界の狂犬病発生状況

狂犬病って恐い病気なんだね。
これからもボクたち大丈夫なのかな?

日本で40年以上狂犬病の発生を防ぐことができているのは、狂犬病が発生していた昭和30年代初期以前からの官民一体となった予防注射の実施と、日本が島国であったこと、そして検疫制度の導入によって外部からの侵入を未然に防ぐことができたと考えられています。でもコテツ君、決して安心はできないんだよ。

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