健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

猫ちゃんの困った行動 人間に対する攻撃性part3

「愛猫の攻撃に困ってます!」質問&回答

Qうちの猫のチョビ(3才、雌、雑種猫)の事でご相談いたします。一年前の事なのですが、私が部屋に置いてあった荷物にぶつかった時につい大きな声で叫んでしまったのです。その時にチョビはビックリしたらしく、私に噛み付き、暴れまわり、奇声をあげました。その時以来、大きな音を聞くとたまに、威嚇したりするようになったのです。かれこれ、3、4回はそういう事をしたでしょうか。
そして、昨日も同じ事をしたのです。今までは私が標的になっていたのですが、昨日は妻の方に襲いかかってきたのです。妻は手にケガを負いました。しかし妻は声をあげた訳でもなく、驚かした訳でもなく、不意に襲ってきたのです。こうなると専門家に相談するしかないのでしょうか。またかかりつけの獣医さんに精神安定剤などをもらう方法もあるかと思いますが、この場合猫の身体に影響を及ぼさないか心配です。

Aこんにちは。
この種の攻撃性は猫では時々見られます。まずチョビちゃんが何に対して反応しているのかをよく観察し、その状況を避ける必要があります。まず大きな音だとすればどのような種類の音、どの程度の大きさの音に反応するのかを確認してください。また奥さんの方へ攻撃した際には、これまでの状況と類似点がなかったかをよく検討する必要があるでしょう。猫ちゃんが何に反応しているかをしっかり確認し、それを避けるようにしてください。
攻撃の程度が重度である場合には、安全のためにケージや使っていない部屋などに隔離する事も考えた方が良いかもしれません。
私自身はこのようなケースでは薬物治療をお薦めする場合が多いのですが、一般的な投与量では大きな副作用は見られないのが普通です。ただしどのような薬物をどの程度の量与えれば一番良いかはまだよくわかっていません。一定期間の治療後に薬物を中止して、再発しないケースもあれば、薬用量を減らす段階で再発し、なかなか薬を切れないケースもあります。家族の危険を伴う問題ですから、ぜひ専門家に相談される事をお薦めします。

病気や体の痛みによる攻撃性

 飼い主が撫でると咬んだり引っ掻いたりする場合には、痛みによって誘発される攻撃性も頭に入れておく必要があります。単純に触られるのがイヤというのではなく、体のどこかに痛みがあって触られると痛いために、怒ったり咬みついたりする事もあります。
 また脳の異常や内分泌疾患の一つの症状として攻撃性が強くなるような場合もあります。特定の場所を触ると怒る場合、以前はそうでなかったのに、急に攻撃性が強くなった場合、普段と様子が違う場合などでは、行動上の問題と決めつけずに、必ず獣医師に相談してみてください。

原因不明の攻撃

 原因が判れば対処の方法があるのですが、原因が思い当たらない場合にはどうしたら良いのでしょう?まずもう一度原因を良く考える事が大切です。猫の攻撃性でその理由が分からない場合に最も考えられるのが、前述の転嫁攻撃です。またてんかんや脳腫瘍、甲状腺機能亢進症といった病気でも原因不明の攻撃性が見られる場合があるようです。ほとんどの場合は原因はあるけれどもわかりにくいだけなのです。攻撃のパターンをよく観察したり、体の異常を調べて、可能な限り原因を突き止めることが大切です。まずはかかりつけの獣医師に相談してみましょう。

原因が分からず対処の方法がない場合や原因が分かっていても攻撃性が重度の場合、行動学的なアプローチだけではうまくいかない場合には薬物療法を行う場合があります。このような場合は、大怪我に発展する危険性もありますので、すみやかにかかりつけの獣医師を通じて専門家に紹介を受けられる事をお勧めします。

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