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猫ちゃんの困った行動 人間に対する攻撃性part3

猫ちゃんの困った行動 人間に対する攻撃性part3

ぺピイの読者の皆さん、こんにちは。今回で人間に対する攻撃性の話は最後になります。普通猫の人間に対する攻撃性は、犬と比べると問題になるケースは少ないのですが、その対象が飼主に向けられる場合には大きな問題となります。
特に今回お話する転嫁攻撃は、時として一緒に生活することが苦痛になってしまう程、激しい攻撃性が長期にわたって続く場合があり、人間に対する攻撃性の中では最も深刻な問題です。

転嫁攻撃---いわゆる八つ当たり---

 これらは何らかの原因で興奮し、攻撃的な気分になった猫が、もともとの原因とは無関係な相手に攻撃をしかけることです。たとえば飼い主が猫同士の喧嘩に仲裁にはいって攻撃されたり、犬などを見て興奮している猫をなだめようとして、攻撃されたりするような場合です。また大きな物音や窓の外を歩いている猫を見て興奮した猫が、そばにいた猫や人間に襲いかかることもあります。このような場合、時にはその原因となった出来事が何であるかが分からず、理由のない攻撃性に見えることさえあります。
 このような猫の行動は我々人間には理解しがたいように思われますが、実際には我々のように理性のある人間でさえ、カーッとなってドアを蹴ったり、イライラして関係のない人に八つ当たりしてしまう事があります。周囲の者にとっては迷惑な話ですが、本人にとっては、興奮した気持ちを鎮めるための有効な手段とも言えるのかもしれません。

対処法

 この場合、猫は本気で攻撃をしかけてくるため、怪我をする可能性が高くとても危険です。とにかく猫が落ち着くまでは近づかないことです。どうしても仲裁に入って落ち着かせなければならない場合には、大きめのタオルや毛布を上からかぶせて捕まえるようにしましょう。

 ほとんどの場合この種の攻撃性はその場限りでおさまりますが、時にはそれが長く尾を引くこともあります。またまれに、何らかの原因で興奮して、攻撃的になった後に、その時の状況と似た状況に直面した時、原因そのものがなくても同じように興奮して攻撃的になる場合があります。
 たとえばバタンと居間のドアが開いた後、犬が入って来てたとしましょう。入ってきた犬に驚いた猫が興奮して、そばにいた飼い主に攻撃をしたとします。この時、バタンと居間のドアが開くことと犬が入ってくる事が、猫の頭の中で結びついてしまうと、バタンと居間のドアが開く度に、猫が飼い主に攻撃的になってしまうというような場合があります。原因そのもの(この場合は犬)がなくても、同じような状況(この場合はバタンと居間のドアが開く)に反応してしまうわけです。

 私も昔、飼っていた雄猫がこの問題を起こした事があります。成猫になってから保護したものでしたが、何かのきっかけで急に興奮すると目つきが変わって手がつけられなくなり、側に立って入る私の体を垂直に駆け上がってきて引っ掻くのです。今考えると転嫁攻撃だったのだと思いますが、その頃は猫のこの種の攻撃性に関する知識はなく、猫好きの私でもさすがに恐ろしくなり、困り果てました。幸いこの猫は、生活環境を完全に変えてしまう事でその後全くこの種の問題を起こすことはなくなりました。恐らくその時に住んでいた環境中の何かに反応していたのでしょう。

 このような特殊な攻撃性に関しては、まず猫が反応しているもの(攻撃の対象となる人、人の動き、服そう、音、匂い、場所、状況など)を見つけ、それに接触しない状況を作り、落着いてきてからその状況に少しづづ慣らしていく必要がありますが、攻撃性が重度な場合には、安全のために猫を隔離する必要があるかもしれません。また精神安定剤などの薬物を併用した方が良いでしょう。


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