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猫ちゃんの困った行動 人間に対する攻撃性part2

猫ちゃんの困った行動 人間に対する攻撃性part2

ペピイの読者の皆さん、こんにちは。
前回は主として子猫や若い猫に多く見られる遊びの攻撃性についてお話しました。遊びの攻撃の対象は普通飼い主で、ほとんど大きな怪我をすることはありません。今回は主として知らない人に向けられ、場合によってはひどい怪我をしてしまう可能性もある恐怖による攻撃行動と、飼い主がやさしく撫でている最中に突然咬まれてしまうという不可解な攻撃行動に関してお話しましょう。

恐怖によって引き起こされる攻撃性

猫はもともと社会性の乏しい動物で、特に慣れていない場所、よく知らない人を恐がり、追い詰められると自分を守ろうとして攻撃行動に出ることがあります。典型的なものが動物病院に行ったときで、診察をしようと獣医師が猫に触れただけで、「フーフー」「シャーシャー」と威嚇したり、保定する看護師を咬んだり、引っ掻いたりするような場合です。また自宅に訪ねて来た人に攻撃する場合もあります。
生まれつきの気質の影響もありますが、幼い頃から特定の場所で特定の人とだけ接触するというような環境で育った場合にはその傾向が強くなります。
またイヤな体験もこの行動を悪化させます。ご存じのように、一度動物病院で恐い思いをした猫は、次回の診察の時にはますますパニックに陥ってしまうのです。

対処法

恐怖を感じたとき、猫はまず隠れたり、じっとすることで難を逃れようとします。そして身の危険が迫るのを感じるとサッと逃げて行きます。それが出来ない場合、つまり恐いと感じている相手が、猫が我慢できる範囲を越えて近づいてきた時に、逃げる事ができなければ攻撃に転じる事があります。したがって追いつめることがなければ通常攻撃されることはあまりありません。ご存じのように、道ばたなどで人に慣れていない野良猫に近づくと一瞬動きが止まり、それ以上近づけば逃げてしまいますね。路地などに追い込んで無理に触ったり、捕まえようとすれば引っ掻かれたり、咬まれたりするでしょう。
したがって恐がっている猫を無理に触らなければよいわけです。
家に訪ねて来た人についても同様で、怖がりの猫ちゃんは来客があれば、攻撃するよりもどこかに隠れてしまってお客さんが帰るまで出てこないのが普通です。

しかし動物病院などではそういうわけにもいきません。我々の動物病院では、ひどく緊張している猫には、なるべく隠れているという安心感を持たせるために頭の部分をバスタオルなどで覆ってから、そっと熱を計ったりやさしく体を触ったりするようにしています。幸い多くの猫ちゃんは診察の間、緊張してもパニックになるよりむしろ固まって動かない場合(つまり猫をかぶった状態)が多いのです。
しかしながら一度暴れ出すと、打って変わって激しく攻撃してきます。我々動物病院のスタッフの怪我は、犬に咬まれるよりも猫に引っ掻かれて出来たものが大半です。病院などで興奮してしまうタイプの猫ちゃんは、逃げたり暴れたりしないように洗濯用のネットに入れてつれて来ていただければとても助かります。

それからこのような場合、パニックに陥っている猫ちゃんを見て、飼い主さんまでパニックに陥ってしまう事があります。
「キャー!タマちゃん!ダメ!やめなさーい!」などと飼い主さんが猫に向かって大声で叫んでしまいますと、猫には飼い主さんの行っている言葉の意味はわかりませんから、飼い主さんが慌てている様子を見てますます大変なことが起こったと感じてしまいます。ですからこのような場合は決して大きな声を出さないでください。
まず飼い主さんが落ち着いて、静かに猫ちゃんに声をかけて、ゆっくり撫でてあげてくださいね。

また予防として子猫の時期からいろいろな人や動物、さまざまな環境に慣らしておくことも大切です。既に大人になってしまった猫も、日常生活の中で少しずついろいろな人などに慣らすことも不可能ではありません。このようなトレーニングを行う場合は猫が怖がらない状況であせらず根気よく慣らすのがコツです。恐い経験を積み重ねていては逆効果になりますから注意しましょう。


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