健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

犬・猫の不妊・去勢手術のメリットとデメリット

不妊・去勢手術は、全身麻酔を必要とする手術です。手術を行うことは、動物に負担がかかりますし、手術後にはいくつかの後遺症や副作用などが起こるという問題点もあります。このような問題点があるという理由の他にも、健康な動物にメスを入れるのは抵抗があるといった考えなどから、不妊・去勢手術を拒む飼い主さんもいるかもしれません。
  しかし、それ以上に不妊・去勢手術を行うことによって、生殖器に関連する病気の予防、問題行動の抑制、寿命の延長および生活の質(QOL)の向上などの多くの利点(メリット)が得られることが知られています。
  そこで今回は、手術を行った方がいいかどうか迷っている方へのアドバイスになることを目的として、犬および猫の不妊・去勢手術に関するメリット・デメリットについて解説したいと思います。

不妊・去勢手術の目的

不妊・去勢手術は、もともと望まれない妊娠による不幸な動物を増やさないために行われていた手術です。雄では精巣を摘出(去勢手術)、雌では卵巣(および子宮)を摘出(不妊手術)します。これらの手術を行うと、永久的に妊娠する(させる)ことができなくなります。

ただ、望まれない子犬や子猫を産ませたくないのであれば、雌動物が発情している時期、すなわち交配によって妊娠する可能性がある特定の時期だけ隔離しておけばその目的を達することができるため、健康な犬・猫にメスを入れるような手術をする必要はありません。

しかし最近では、不妊・去勢手術は、従来の「望まれない妊娠を避けること」よりも、以下に説明するような将来的に起こる可能性のある性ホルモンに関連した疾病を防止すること、また性ホルモンによって誘発される発情徴候、スプレー行動、攻撃性およびマウンティングなどの性行動などの問題行動を防止することに重点が置かれ、行われています(表1)。

表1.
不妊・去勢手術のメリット(目的)
およびデメリット(問題点)