健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

猫の「口の病気」について。猫の口腔内疾患

 アルファベットが並ぶとどうも敬遠したくなるというのが人情ですが、北米獣医大会(The NorthAmerican Veterinary Conference)というアメリカで最も多くの獣医さんが集まる学術大会で、4歳以上の飼い猫の約50%に一箇所以上のFORLが発見されているとの報告がありました。

 このFORLというのは、少し虫歯と似ているのですが、歯の付け根の歯茎と接触している部分に吸収病変ができる、つまり、歯が虫食いのように溶けてくるという病気なのです。

 ヒトの虫歯が細菌の作る酸によってエナメル質が腐食するのに対して、このFORLというのは、炎症を誘発するような伝達物資によって歯を壊す破歯細胞が引き寄せられ、ネコ自身の細胞が歯を溶かしてしまうのです。

虫歯と同じように激烈な痛みがあり、ものを噛むということに大きな苦痛をともなうようになります。

 しかし、解っていることはそこまでで、

  ●なぜそんなことが起こるのか?
  ●他の動物にはなぜ起こらないのか?
  ●年々増加傾向にあるのはなぜか?
  ●どうしたら予防できるのか?

 など、解らないことだらけというのが現実なのです。

  以前といってもつい最近まで、歯周病によって炎症を誘発するような伝達物資ができてくると考えられていましたが、現在では研究が進むにつれて、歯周病もFORLも高齢になるほど増加し、そして悪化するのですが、それぞれ互いの悪化要因にはなるものの、歯周病がFORLの原因ではないことが分かってきています。

 ヒトでもイヌでも口腔内の炎症の大半は、歯周病にともなって見られ、ほぼ歯肉に限定されています。

 ところが、ネコだえは残念なことに特別なのです。
ほっぺの内側、奥歯の後ろ、舌など、お口の中で炎症の起きない場所はありません。
そして、歯肉以外の口腔内炎症はとても重症なのです。

 ネコの口内炎は多くの複雑な原因がからみあってひとつの臨床的な症候群を形成し、しかも、期待した治療成果の上がらない、ネコ自身にとっても、飼い主にとっても、そして獣医師にとってもいらだたしい病態であるといえます。

 口腔内の炎症を引き起こし、増悪させる因子には以下のようなものがあります。

  ①歯周病
  ②FORL
  ③FeLV
  (猫白血病ウイルス感染症)および
  FIV
  (猫エイズ)
  ④主要臓器の疾患
  ⑤免疫系の機能障害

 特別な理由がなければ、デンタルダイエットを日常の食事として与え、歯周病の予防に心がけるようにしましょう。

 すでに自分のネコに口臭がある場合は、お口の中をよく観察してみましょう。

 「歯石の付着がある」「歯茎のふちが赤い」というような場合には、歯周病が疑われます。

もし、「歯茎以外にも赤くなっているところがある」「奥の方にカリフラワーのような盛り上がりがある」「ドライフードのようなものを噛むときにギャッと痛がる」というような症状があれば、口内炎が慢性に進行している可能性があります。

 いずれにしても、動物病院での処置が必要と考えてください。