ユウヒ&モモ育児日記

Vol.1 猫たちが来た日

 猫飼いたい、猫ほしい、猫さわりたい、猫、ねこ、ネコネコネコネコ…。

思い高じて、車でたった数分先のペット飼育可マンションに引っ越した。そのために一生懸命働いたもんねワタシ。海の見えるベランダ、リフォームしたての真っ白な壁、傷ひとつないツヤツヤのフローリング…。あとはここに猫の遊んだり、寝たりする姿がプラスされればカンペキ!理想の住まい像である。

「あーいやだいやだ、新居が散らかるうえに、君は掃除がキライ。」同居人である”片づけ魔”のダンナは、口をとがらせる。「ちゃんとするもん」「はいはい、いつも口だけ、口だけ」そんな母親と小学生のような会話をしつつ、なかなかきっかけがなく月日が過ぎるだけだったのだが…見つけてしまった。猫の里親募集のホームページがあるなんて。ぼんやりネットサーフィンをしていて、画像付きで丁寧に紹介されている猫達を食い入るように見ていくと、生後3ヶ月の白茶のキジ猫に心奪われてしまった。「…この子にしよう!なにがなんでもこの子!」かつて実家で飼っていた猫にそっくり。大きな目がくりくりしていて、かわいい女の子。


それが大阪で野良猫の保護活動をしているAさんのホームページだった。早速メールを送ると、翌日返事が来た。理想のウキウキ猫ライフが、実現に向かって歩き始めたのだ。低姿勢にダンナにそのことを報告すると、敵は意外なことを言ってきた。「子猫ひとりじゃ、さみしいかもよ」「…え?それって2匹飼えってコト???」「そしたら猫どうしで遊ぶから、楽だ。」うーん、楽かどうかはわからないが、Aさんに相談するとたいへん喜んでくれた。「子猫の遊び相手?ちょう どいいのがいますよ」と、ずっと里親が見つかってない1歳半のオス猫をすすめてくれた。送ってもらった画像にはちょっと…悩んだ。白黒のタキシード猫で個性的な顔。マンガでよくあるドクロマークのようで、なんだか視線が恨んでる。Aさんは「顔は怖いけど子猫の面倒見はいいんですよ!それに顔をキュッとひっぱるとハンサムですよー」…って、そんなハンサムあり?しかし、子猫といっしょに寝ている写真を見るとたしかに憎めない。…結局、断れなかった。「あと、よく鳴くし、布団におしっこ癖もあるんで、気をつけてくださいね」…それでも断れなかった。

 12月の晴れた日、Aさんは2匹を連れて我が家にやってきた。まずキャリーからおそるおそる出てきたのはドクロ顔のタキシード猫だった。約4キロのいい体格。「ナー」とかわゆく鳴くが「恨む」ような視線で私を見る。「問題児なんでどうしても無理だったら引き取りますんで」と言いつつAサンは「いいお部屋があってよかった」とキャットタワーについた小さな部屋にドクロ顔を入れた。まわりが見えず落ち着くせいか大人しくしているので、どうやら気に入ったらしい。さらに我がマンションは外壁の大規模修繕中で、ベランダの植木やパネルがすべてリビングに入れてあり、猫心をくすぐりそうなジャングル状態でもある。「さあ、もう一匹」Aさんはキャリーからはがすように小さなキジ猫を引っ張り出した…が、顔を拝む間もなく猛ダッシュでジャングル奥に消えてしまった。「元気な女の子でしょ。ま、そのうち出てきますよ」…2時間待っても出てこなかった。Aさんは猫たちが気に入っていたおもちゃや、先週まで風邪気味だった子猫の薬などを丁寧に引継ぎして「よろしく。何かあったら遠慮なく言ってくださいね」と、ちょっぴり寂しげに帰っていった。


 夕方、名前を考える。子猫はAさんがつけていた「モモ」のままでイメージぴったり。ドクロ顔の方はダンナが「ユウヒ」と命名した。修繕中のベランダで沈む太陽を見ながら考えたらしい。しかし、晩ご飯時になってもユウヒは部屋の中、モモはジャングル奥のままで鳴きもしない。「本当に猫がいるのかなあ」と2人で笑う。

この日は暖房も効かないぐらい寒かったので、時折「クシュッ」とくしゃみをする病み上がりのモモをそのままにしておけず、植木鉢や収納庫の山を崩してやっとの思いでつかまえた。手の中で小さな体がちぎれんばかりに暴れるので、慌ててユウヒのいるタワーの部屋に放すと、ユウヒはモモをペロペロとなめ始めた。本当にいいヤツらしい。しばらくしてそっとのぞいてみると、二匹で丸まって寝ていてかわいらしい。でもちょっとさみしいなぁ…なーんて感じたのはこの日だけだったのだ…。