わんにゃん調査倶楽部
V字回復の招き猫
『岡山・備中松山城』
~天空の城とさんじゅーろー~
ふらりと現れたノラ猫が城主に—。西日本豪雨で激減した観光地をV字回復に導いた猫がいると聞き、わんにゃん調査俱楽部は岡山県高梁市『備中松山城』に行ってきました。
天守までの高さは標高430メートル。現存天守が残る唯一の山城『備中松山城』に、ある日1匹の猫が現れました。
「2018年7月、豪雨災害の後でした。ガリガリに痩せている猫がひょっこりと登城道に現れ、あまりにかわいそうだと職員がお弁当のおかずや自分のおやつを与えていたそうです」とお話しくださったのは、高梁市観光協会の大樫文子さん。
そしてその猫は1週間後、なんと天守まで登ってきたそうです。
お話をうかがった高梁市観光協会の大樫(おおがし)さん
猫の登場に職員は複雑な思いを抱えていたそう。「お城は文化財ですから許可なしに動物を置いておくわけにもいかず……。猫の噂が広がればおとがめがある可能性も。そこで教育委員会に相談することにしました」。すると「おとなしい性格だし、顔立ちもかわいらしいし、良いようにできんかな」と優しい答えが返ってきた、と大樫さん。「この時は、まさか飼うことになるとは思っていませんでしたが、獣医師や観光協会内部で相談を重ねて、正式に猫城主としてお迎えすることにしました」。
鳴かず、怒らず、近くで子どもが走り回っても動じない、どっしりした性格のさんじゅーろー。SNSやメディアで拡散されて、国内はもちろん台湾、香港、アメリカといった海外からの観光客も来られて、スタッフの皆さんはとても驚いたそうです。「動物系のテレビ番組も取材に来てくださり、”しまいには書籍化されるかも”と冗談を言っていたら実現してしまって」と大樫さん。
そして、さんじゅーろーが元気にしたのはお城だけではありませんでした。
岡山県の特産品トマトを使った、インディアントマト焼きそば(上)や絶景の雲海をモチーフにした雲海パフェ(下左)や雲海オムライス(下右)(高梁市観光協会提供)
「さんじゅーろーが観光客を呼んでくれたことで、市民の関心も高まりました」と大樫さん。地元のお店の方たちも、以前に増して積極的に観光案内や地元グルメの紹介、そして新たなお土産開発やオリジナルメニューの開発に取り組まれるようになったそうです。「さんじゅーろーをデザインした小物やデザートなどのアイデアもたくさんいただきました。いまやさんじゅーろーは老若男女を問わず、市民共通の話題です」とうれしそうにお話しくださいました。
動物が苦手な方と、文化財への配慮からリードをしていますが、さんじゅーろー本人はいたって気にしていない様子。木陰でお昼寝をして、おもちゃで遊んでもらい、城内見回りという名のお散歩も欠かしません。事務所内には、清潔に掃除された三段ケージや手作りの休憩用キャリーが置かれていました。猫が登ってくることなどなかった山城に、突然現れた愛想の良い猫さんじゅーろー。美しい自然に囲まれた高梁市で、お城を危機から救うために現れたようなさんじゅーろーの奇跡のストーリーをお聞きできました。
~備中松山城はこんな場所!~
(高梁市観光協会提供)
トレッキングに最適!雲海に浮かぶ天空の城。
備中松山城は、現存する山城で唯一の存在であり、国の重要文化財。
登城すると、夏はみずみずしい新緑、秋は鮮やかな紅葉、冬に雪が降れば白銀の世界という四季折々の表情が楽しめます。さらに、向かいの雲海展望台からは、”たなびく雲海に浮かび上がる天守”という幻想的な光景の鑑賞が可能。日本三大「天空の城」としても有名であり、濃い朝霧が期待できる10月下旬から12月上旬までがベストシーズンです。
さんじゅーろーは事務所前の木陰がお気に入り。
わんにゃん調査俱楽部からおもちゃをプレゼント。
10:00と14:00に城内見回りに出かけます。
頂上からは備中高梁駅の周辺が見渡せます。
高梁市観光協会オリジナルポロシャツは市民も愛用。
『備中松山城』
岡山県高梁市内山下1
TEL:0866-22-1487
営業時間:<4月~9月>9:00~17:30
<10月~3月>9:00~16:30
休日:12月29日~1月3日
駐車場:城見橋公園(5合目)110台
ふいご峠(8合目)14台
料金:大人500円、小人200円、団体割引あり
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