健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

Q&A

多頭飼育について

2歳になる♀のMダックスの飼っております。先週、生後2ヵ月の♀のMダックスを飼いました。飼い始めて一週間経ちますが、先住犬との折り合いが良くありません。最初は、尾尻を振って仲良くじゃれ合っていますが、エスカレートすると手のつけられないくらい威嚇し合っています。知人からは、遊びながら力関係や仲間意識が芽生えてくるはず。とアドバイスをもらい、様子を見ていますがこのままで良いのでしょうか?先住犬が上だと教えるにはどのようにしたら良いですか?ちなみに、呼ぶときやご飯等は先住犬を優先にしていますが、その他に何か良いアドバイスがあれば教えてください。宜しくお願い致します。

 新しい家族を向かえ、また、家族が新たにできて1週間であれば、人間と違って心構えができていない愛犬たちはまだ途惑うことが多いことでしょう。
 多頭飼いの時の一般的な原則として年齢が離れていること、性別が異なることがあげられます。年齢が離れていれば、体格の差もあり、優劣がつきやすいものです。性別が異なっていれば、自然と雌が雄をリーダーとして扱う傾向があるために、やはり優劣がつけやすくなります。

1.飼い主がしっかりとリーダーシップを

 ご質問の愛犬たちは雌同士、年齢的には十分離れているので仲良くなれる可能性はありますが、そのためには飼い主がしっかりとリーダーシップを取っていかなければならないでしょう。
 犬は群れ社会を形成する動物です。群れはリーダーの資質如何によって、争いごとが絶えないこともあれば、秩序が保たれることもあります。人間に飼われている犬にとっては飼い主がリーダーとなるべきで、飼い主はリーダーとして、常に絶対的に優位な立場に立ち、命令をしていかなければいけません。可愛がり、手入れや健康管理をしっかりとおこなうことは大切なことですが、甘やかすこと、犬のわがままを聞くようなことはないようにしなければいけません。

 リーダーは優位に立つために群れの安全を守り、食事を確保し、また秩序を保つために矛盾のない行動を取っていかなければいけません。常に先住犬を優先するのであれば、それを矛盾なく、おこなっていかなければいけません。二匹が威嚇しあっている時に、止めようとして子犬を抱き上げたりしないようにしましょう。これは犬たちにとって、子犬のほうが守られている、優先されていると感じられる恐れがあります。また、止める時には、ついつい命令に従う先住犬に静止の言葉をかけがちですが、先に先住犬を静止するのではなく、同時かあるいは子犬を先に静止するようにしましょう。

2.犬同士のコミュニケーションを見守ってみましょう

 最初は尻尾を振って仲良くじゃれあっているというのであれば、今のところ相性はそれ程悪くないと考えられます。エスカレートすると威嚇しあうというのであっても、怪我をしない程度であれば、順序争いに必要なものであることがあります。あるいは、子犬が力加減を知らずにいるために、先住犬が叱っているのかもしれません。
どうして威嚇しあっているのか、何が原因でそうなっているのかをよく観察し対策を考えていくことは必要ですが、威嚇しあっているからといって、飼い主が手をだすのは極力控えましょう。手を出すにしても、先住犬の味方として行動することを念頭に置いておくことが大切です。
 

3.互いに不可侵条約を結ぶか、あるいは仲良くなるまでは監視下で遊ばせましょう

 威嚇しあうだけ、あるいは軽く噛むというだけで、流血騒ぎにはならないように監視し、また、威嚇しあった後などは二匹の体をしっかりとチェックしましょう。力加減ができていないような場合には、どこかに怪我をしているという可能性があります。怪我は早期に発見し、治療をしてあげることが何よりです。しっかり見守っていてあげましょう。

 ひどい怪我をするくらいに、互いに傷つけあうことがあるのであれば、次回から楽しく遊んでいる間で威嚇にエスカレートする前に、時々飼い主が別の遊び方を示してあげたり(ボールを2個投げたりなど)、おやつをあげるようにするのも良いでしょう。「二匹で楽しく遊んでいれば、ご褒美がもらえる」、「相手がいれば、良いことがある」と思わせるのも一つの方法です。

4.二匹それぞれのくつろぐスペースを用意しておきましょう

 遊びたい盛りの子犬と、すでに大人になっている先住犬ではじゃれあう時のパワーが違います。先住犬が子犬から離れて、一息つけるようなスペースを用意してあげることも大切です。また、子犬の余力は少なく、目いっぱい遊んでは、ぐっすり眠る場所、そして眠れる時間が必要です。それぞれのスペースを確保してあげましょう。
 ただし、飼い主はリーダーであるので、どのスペースも飼い主のものです。このため、もしもそのスペースに愛犬たちが座りたいといっても、先に飼い主の方が座っているのであれば、ダメと伝えておきましょう。譲ってしまうと、飼い主はリーダーとしては認識されにくくなってしまいますので・・・・。

 同居し始めてから1週間では、まだまだ今後が未知数の愛犬たちですが、飼い主がしっかりとリーダーシップを取り、でんと構えていれば愛犬たちは落ち着いてくることが多いものです。心にゆとりをもって、愛犬たちに接してあげましょう。