健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

Q&A

心臓が弱っているのですが…

今年で6年になります。
この前、獣医さんに見せてもらったら心臓が少し弱っているとの事、ショックでした。
シーズ犬ですが、フードでも同じ物だと飽きてしまい時々変えたりしていますが、食べない日もあります。ささみだけは大好物で、1日2~3回はあげています。
まだ、老犬ではないのにどうして弱くなったのでしようか?とにかく、長生きをして欲しいと思っていますが、食べ物にも気をつけなければいけないでしょうか?教えて下さい

 高齢になると、心臓疾患が多くなるとよく言われています。10歳前後、小型犬であれば7~8歳前後でも心臓病の症状がでて、動物病院に受診される患者さんが多いものです。
 心臓は毎日毎日、休むことなく全身に血液を送り出し、体の隅々まで酸素や栄養分を供給し、また二酸化炭素や老廃物を回収する重要な役割を担っている臓器です。このため、心臓が少し弱っても心拍数を速めたり、心臓を形作る筋肉を発達させたり、あるいは内部を広げたりして、なんとか全身に必要な血液を送り出そうする能力をもっています。これを代償能力といいますが、この能力が働いている間、心臓病の症状(呼吸が荒くなったり、興奮した時に咳をしたり、運動をしたがらなくなったり、など)はほとんど見られません。が、実は徐々に徐々に心臓の状態は悪化して行っています。ただ、目でわかる症状が見られないために、飼い主の方には気づかれていないだけということが多いのです。このため、5歳を過ぎる頃から健康診断を少なくとも年に1回は受けることが勧められています。

 ご質問の愛犬は症状がでるまえに、聴診などによって早期の心臓疾患が発見されたということでしょう。
 心臓疾患と一口にいっても、実際には多くの種類があるために、どこがどのようになっているのかをしっかりと検査し、それにあった食事療法や薬物療法などを決めていかなければいけません。
このため、愛犬の心臓の状態をレントゲン検査や心電図検査あるいは超音波検査などを行い、主治医の先生と今後について良くご相談されておかれると良いでしょう。

 心臓が弱っている時の食事は、何よりも塩分制限となります。もともと犬には汗腺が少なく、塩分を汗で消費することはありません。このため、犬は人間に比べて塩分をさほど必要とはせず、例え犬が欲しがったとしても、人間の食事のように塩分が高いものはあげるべきではありません。心臓が弱っているのであれば、なおさらとなります。塩分を摂取すると、喉が渇き、水の飲む量が増え、体内にとどまる水分量も増えていきます。そうなれば、血液量が増えることになり、心臓の負担が大きくなってくることになります。

 また、太りすぎにも注意をしていく必要があります。体に脂肪がつけば、その脂肪のための血液が必要となり、やはり心臓への負担となってしまいます。これだけでなく、太った体を動かすために余分な酸素が必要となり、やはり心臓への負担が大きくなってしまいます。太りすぎは心臓病の大敵なので、体重をベストな状態に保つような食生活を心がけましょう。

 心臓病は年齢を経るに従って、多くの犬がなってしまう病気のため、症状に応じた適切な食事(処方食)が開発されています。今後の愛犬の症状によっては処方食への切り替えが必要となるかもしれませんが、主治医の先生から特に指示がなければ、極端な塩分制限などは必要ではありませんので、市販の良質なシニア用の低塩分、低脂肪の食事を与えるようにすると良いでしょう。

 ささみはおやつとして、体に見合った量を与えるようされる事をお勧めいたします。おやつとしての量は一日に必要なカロリーの1割程度です。これを越えてしまうと、栄養過剰、あるいは栄養不足の原因となることもあるために、注意しましょう。犬は味覚がそれほど発達していず、嗅覚で味わうとも言われています。が、人間用のフードを与えることで、濃い味を求めるようにもなってしまいますので、気をつけましょう。 

 ドックフードを食べないような時に次々と品を変えると、それに甘えて少しでも飽きたら食べなくなってしまいます。時には心を鬼にしてお皿にフードを入れ、30分たったら食べても食べなくてもお皿は下げ、次の食事時間まで与えないようにしてみるのも一つの方法です。あるいは、フードに肉汁(味付けなし)をかけ、人肌程度に暖め、匂いがたつようにして食欲を誘ってみるのも良いかもしれませんね。